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【4】視覚障害者はタイムラインの上で生活している その2

いうまでもなく、われわれはX、Y、Z軸と時間軸で定義される4時限空間で生活しています。

しかしながら視覚障害者は、白杖のリーチより先にある物体は直接的には知覚することができません。必然的に、時間軸のもつ重みが相対的に大きくなります。

この事実は、経験してみないとなかなか理解しづらいと思います。たとえば、同行者と駅のホームを(緊張しながら)歩いているときに「松本息のあずさががらがらだ」ということばはおおいに迷惑なのです。時間軸の浪費です。

私のナビも望月さんのナビレクも、自分でコメントを付与するしくみです。同氏も「コメントはできるだけ簡潔にせよ」と忠告しています。「おなじ内容を伝えるなら極限文字数を減らすわけです。

我々は「飛ばし聴き」ができないので「いらない情報はスキップすればいいじゃん」という理屈が成立しないのです。

「お散歩の友」にはミュート機能があり、画面の上半分をどこでもダブルタップすれば瞬時に無音になります。これは、道を渡るときや前方から知人が来たときなどにつかいます。

はじめ 「音声案内を中止します」と発話していました。だが、それでは、その文言辞退がうるさいのです。長すぎます。なので「音声オフ」に変更しました。

さほど、音声ナビにおいて、時間軸は貴重なのです。

さて、あるナビを使ってみて「開発者は使ってみていないな」と感じた事例を書きます。

ナビをスタートするとき、目的地までの経路説明と、免責についてのリマインドがながながと流れます。

ところで、食事を終えて帰宅するとき、この文言をどこで聞けばよいのでしょう? 

忘れてならないのは視覚障害者は、この音声が流れている間、一歩も動けないということです。進むべき方向がわからないし、ボタンも操作しなくてはなりません。そんな状態でレジの前でつったっておれますか?

この問題は、カーナビではおきません。上記の音声が流れている間も、発射前の確認をしたり、駐車場から出る動きにとりかかれます。まわりが見えているからこそです。

つまり、さほどに晴眼者用のナビの動作をそのまま援用したのでは使えない、ということになります。

くどいですが、開発者自身が10キロも歩いてみればすぐに気づくことです。トヨタの開発エンジニアは、自分の開発した車で運転してみることが何よりのわくわくであるはずです。

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