挑戦記 南仏・アンティーブの市街を白杖と音声ナビで歩く
【あらまし】
南フランス、地中海に面する古い町アンティーブに行ってきた。前回の訪問から10年は経っている。その間に視力がおおきく低下して一人では歩けなくなった。以下、今回の体験を記します。
【アンティーブは古い港町】
街の歴史は古く、いろんな敵が海から攻めてきた。
そのため、要塞や城塞がきづかれ、半島の根元付近の丘にはグリマルディ城がそびえる。今はピカソ美術館になっている。(表題写真)
グリマルディ城のすぐ下の狭いエリアが旧市街で、古い建物が密集しており、レストラン、土産物店、市場などもここに集まっている。
必然的に道路は路地裏状態で視覚障害者にはとても歩きづらいです。
私がここを最初に訪れたのはすでに30年前。基本的に変わりないが、一部の道路から車を閉め出したり、歩道が整備されたり、広場がきれいに鋪装されたり、それなりに歩きやすく改善されておりました
【旧市街を歩く】
すでに別の記事に書いていますが、目的地に歩いてたどりつくためには
① 迷子にならない
② 障害物を避け、正しい歩道を歩く
の2つの要件が充たされなければならない。
既製品の歩行地図を使ったナビでは、②が不足します。
AI を使った画像認識は急速に進化していますが、いまだ、路地のどちら側を歩くべきかおしえてくれるところまではいっていません。
つまり、現在入手可能なほとんどの視覚障害者用の音声歩行ナビでは役不足なのです。
【今回のチャレンジ】
ホテルから1キロほどの経路を Google Map に提案させ、それを「お散歩の友」のルートフォーマットに変換。さらに若干のコメントを付加して準備しました。これには、衛星写真や StreetView も併用しました。13もの曲がり角があるややこしい経路です。いろんな人たちの助けをかりました。
ですが、事前予想のとおり、単独で歩くところまではいきませんでした。
どこで道路を渡るか、左右どちら側を歩くべきか、ちょっとしたステップがあるか、、これらの重要な情報は現場で確認するほかないのです。
【あらためて確認できたソリューション】
今回の経験もふまえ、歩行のためのルートデータは、下記の手順で作るのがいちばん現実的かつ合理的と考える。
ステップ1
実際に歩きたい経路で現場を歩いて位置を取得し、同時にその場所にふさわしいコメントを記録する。
ステップ2
上で得たナマデータを、既製品の地図にもとづいた歩行経路と参照しながらソフト的に補正する。
これにより、GPSの生出たのゆらぎなどはとりのぞくことができ、あわせて適切な予告案内なども付加できる。
ただ、GPSの誤差なのか、意図的に曲がって歩いたのかの判別はかなり微妙であり、よく出来た AI の助けが必用になる。
これは、「いいとこ取り」の方法であるが、これができればスカスカ歩ける、というほどたやすくはない。何にもましておなじ道を何度も歩いて覚えることが大切である。
【実際に歩いたときの動画】
ここでは静止画で紹介していますが、おって動画として公開するつもりです。首から提げたデジカメで撮っているので、臨場感があります。晴眼の方は、観光気分で楽しめるかもしれません。
【結論的に言うなら】
今回試した1キロ弱は、歩けば15分もかかりません。その道を単独歩行するためにどれだけの準備時間をかけるべきか。おおいに疑問です。
通勤、通学、散歩など、繰り返し歩くことがわかっている経路などは周到なナビルートを準備するのもよいでしょう。だが、そうでない場合、この街のようなごちゃごちゃした街区を単独で歩行するチャレンジは合理的ではないといえます。
ちなみに、同行した妻によると、おなじ広場で2日連続しておなじ白杖の女性を目撃したとか、手ぶらだったので、散歩していたのかもしれません。習熟すれば、単独での歩行も可能だという証拠です。
(11月16日追記)
実際にその町を歩いてきました。その動画です。