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【怖い話】邪教の胎児
(当作品は、にじさんじ所属VTuber ましろ爻さんの、『視聴者から寄せられた怖い話を読むだけの配信』に投稿したもので、以前の作品『呪物』をベースに執筆しました。)
初めに、下記の内容は全てフィクションとします。
私は、普段サラリーマンをしながら、民俗学や考古学の類に興味を持ち、遊びのようなものですが独自に研究や調査をしております。
或る年の正月だったでしょうか、妻の親戚一同が会する場にて、建築業を営む妻の叔母の旦那さんから、理性では抑えられないほどに私の食指が動いてしまった、非常に不気味な話を聞いたので、こちらに吐露させていただきます。
※以下は、聞いた話の体裁を整えたものです。記憶の曖昧なところや実際の不明瞭な部分は補完してあります。
1980年代初頭に、奈良県某市にてある一家の新築工事が中断されました。
表向きには出土品が発見されたことによる県からの発掘調査実施指示とされているのですが、真相は異なりました。
実際には、とある木箱が掘り起こされた事が起因していたのです。
残された記録によると、その木箱とは、縦およそ40cm、幅およそ20cm、高さおよそ12cm、内容物を含みおよそ2kgの小ぢんまりとしたものだったそうです。
そして、放射性炭素年代測定から木箱は昭和初期のものであると特定されました。
また、天面には所々が掠れて読めないながらも
「◯逆天杀◯◯咒反魂◯婴」
と書かれてありました。
では、その箱の中身とは一体何だったのか。
それは、一つの書簡と嬰児の即身仏でした。
以下に書簡の内容をしたためます。
内容については文語体で書かれていたので、口語訳をしてあります。
「
1. 勾
ここに大いなる意思を引き継ぐ御本尊を封ずる。然るべき時が来れば、その紛うことなき神通力を以って、叛逆者を呪殺し、須田一族並びに日女命会を必ずや助力してくださるであろう。
2.詞
我々は巷に蔓延る杜撰な新興宗教の類などではなく、大日本帝国が真の王国とならん為に粉骨砕身する、真正なる使命を背負った一派である。
南朝の祖である大倭姫、ひいては邪馬台国の血を受け継ぐ須田〇〇様一族の血統こそが真の天皇となるべき現人神であり、現存する皇族は全てまやかしに過ぎない。
必ずや偽りの皇籍を持つ一族を打ち破り、須田一族に覇権を取り戻さんことを、ここに日女命会十二代目当主 大江田 菊次郎が宣言する。
3.婁
初めに魂の位が高い一組の夫婦に子を成してもらう。そして夫に日女命会の会員から18名、妻には24名を殺害するように命じた。
更に子を産んだ後、夫に妻を殺害させ、夫は自害させた。
そうして産まれながらに夥しい穢れを背負った子を、百七十日間土中入定させ、即身仏を作る。
そして生前に夫婦から採取した精液と愛液を、即身仏と化した子に四十九日間塗りたくることで完成とし、これを御本尊として崇め奉る。
4.命
上記御本尊の因縁を知ったものは、禁秘を破ったものとし、呪殺の対象となる。但し日女命会に命を捧げる意思を表す者は、その限りではない。
」
悪戯とは思えない悍ましさを孕んだ内容の書と共に封じられていた、見るもおぞましいその嬰児の即身仏は、昭和初期のものとは思えない肌艶をしており、また国家転覆を目論むテロリストのような思想に当時の業者たちは関わることを恐れ、皆逃げるようにその現場と会社を後にしたと言います。
そして、私が最も恐れ忌んだのは、呪殺の効果の真偽でも即身仏の生き人形のような肌艶でも、また書簡に綴られた言葉が血で記されていた事でもなく。
口角がこれでもかと吊り上がった、下卑た笑いのような嬰児の表情と、小さな手足の爪がしっかりと伸びていたことでした。
現在、御本尊の所在は不明となってしまいました。
しかしながら、日女命会は今も何処かで新興宗教の皮を被り、来たるべき時を待っています。
真天皇陛下万歳
真天皇陛下万歳
真天皇陛下万歳