【小説】光を求めて #2
昨日閉め忘れていたのだろう。開きっぱなしのカーテンから朝日が差し込んでいる。
今が冬ならばっちり二度寝をかますところだが、気温もほどほどに高い春の朝なので、とりあえず体を起こした。
壁一面に貼られた写真たちも朝日を浴びてきらきらと輝いている。
さて、今日はどんな写真を撮ろうか。
邂逅
その日は春というには、いささか穏やかでなく、とにかく風が強かった。
「気分転換のつもりで出てきたのに…」
強風のせいで白衣の裾があおられうまく進めない。
仕方ないので、右手で左右を掴み、風の抵抗を最小限にする。
そんな彼女の目の前には、吹きすさぶ風に成すすべなく花びらを散らす桜。
もう桜吹雪というか、なんというか…桜のシャワーだ。
断続的でもなく、風情があるという感じでもなく
蛇口を捻ると出てくる水と同じ。
ただただ ”無機質” で ”連続的” だ。
昨日まではあんなに満開だったのに、その花弁を全て 削ぎ落とされようとしている。
自然とは、世界とは、人間とはなんと残酷なのだろう。
桜が咲いている間だけはあなたに会える、そんな気がするというのに…