30歳で名前を変えた女のセカンドライフ
30歳。名前を変えて、人生第2ラウンド。
小さい頃から、どうしても、自分の名前を愛すことができませんでした。
キラキラネームというワードが生まれるよりももう少し前の世代だったので、
クッションワードもなく、単に「変な名前」としてからかわれていました。
大人になって、自己防衛にも慣れて、
周りのひとも優しい方が多いので、
悪意を持ってからかわれるということは
ほとんどなくなったものの。
初めまして、から続く、自己紹介が苦痛でした。
病院などで呼ばれる名前が苦痛でした。
(ふりがなが振ってあるのにスムーズに読まれず、悪目立ちすることもしょっちゅう。)
優しい方が言ってくれる、「かわいい名前ですね」を、
素直には受け取れませんでした。
ネタにしたり、アピールポイントにすり替えてみたり、
自分の中で折り合いをつけて、愛してみようと、いろいろ試してみたけれど。
めんどくせえな。
一生これ抱えて悩んで生きていくの、シンプルに嫌だわ。そう思いました。
親がつけてくれた大切な名前なのに、という気持ちは、残念ながらありません。
生まれた時から自分ではどうしようもないレッテルが貼られているとしか思えませんでした。
30歳になった年、諸々のしがらみで出られなかった実家をついに出て、
半年ほど経って諸々の都合でそのときの仕事を辞めることになって、
あ、切り替えるなら今だな、と思いました。
スマホの機種変更くらいの気軽さと若干の面倒くささ。
と、思おうとしている自分をなんとなく、これを書いている今も俯瞰しているつもりでいる。
名前を変えることについて以前にも、何度も調べたことがあって、
名前の漢字を変えようとするととても手続きが難しいけれど、
ふりがなだけならかなりハードルが低いことを知っていました。
自分の名前の漢字は、割と好きでした。
昔から、本名が必須でないシチュエーションのときに(美容室の予約とか)で使っていた、
今の感じのままでも読める、とてもありふれている名前に決めました。
最寄りの市役所で書いた、紙切れ一枚。証明書も特にありませんでした。
踊りだすような喜びでもなく、涙が溢れるような感動でもなく。
すこし髪切ったんだけど誰かに気付かれるかな、くらいの、とても些末な変化でした。
名前を変えて、そろそろ1年が経ちます。
うっかり、会話の中で以前の名前をぽろっと出しそうになったことが何度かありました。
転職した新しい会社では初めから今の名前で通しているので、
今まで不可避だった煩わしさを一度も感じることがありませんでした。
唯一、家族にはこのことを伝えていない罪悪感を、胸の隅に抱えながら。
手に入れた安息のほろ苦さを味わっています。
私の人生、第2ラウンド。
今までできなかったことをたくさん楽しんで、生きていきます。