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若者の高い死亡率はアスピリン薬害のせい? 史上最悪のインフルエンザ編④ 

「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」(アルフレッド・W・クロスビー著、西村秀一訳 みすず書房2004年発行)で描かれたスペイン風邪のディストピアから“温故知新”し、来るべきプランデミックに備えます。
 
今回は本書に書かれなかったことに絞って取り上げます。
 

スペイン風邪は若者の死亡率が突出


米国では、1918年の前年1917年のインフルエンザの死亡者の年代分布が乳幼児と高齢者で高いU字型、1917年の肺炎の死亡者も同様にU字型を示しています。しかし、翌1918年のケンタッキー州ルイヴィル市(市保健委員会保存の死亡証明書ファイルより)におけるインフルエンザと肺炎の死亡者の年代分布は、乳幼児、高齢者よりも高い山が20~29歳のところにあり、W字型を示しています。高齢者においては1917年のインフルエンザ死、肺炎死よりも小さな山であり、乳幼児も前年の山とあまり変わりません。
<そのようなことは、それまでの医学や常識ではおよそあってはならないことだった。…
アメリカの他の主要都市の死亡証明書のファイルを解析してみても、共通して年齢軸の中ほどの21歳から29歳までのところに同じように突出が認められる。>
スペイン風邪を深刻なものにしているのは普段との大きな違い、若者の高い死亡率ですが、逆に共通点もあります。
<戦争と同じく、わざわざ若い青年たちを好んで餌食にした。>
 

スペイン風邪ウイルス完全解明、毒性はたいしたことない


本書の原書は1976年ですが、その後謎の解明に大きな進展がありました。
ワクチンに関連する多数の著書がある近藤誠医師は「新型コロナとワクチンのひみつ」(2021年ビジネス社)が解説しています。
 
20世紀の末、米軍の病理学研究所に保存されていたスペイン風邪による死者の組織からウイルス粒子を分離。アラスカの凍土から発掘した遺体からウイルスを分析もし、スペイン風邪ウイルスの塩基配列が解読されました。
さらに様々な動物実験で合成ウイルスの毒性を調べましたが、米国を代表する医師ウイリアム・ヘンリー・ウェルチが「肺ペスト?」と疑った激烈な肺の所見はないというのです。
 
<感染症の専門家たちは、スペイン風邪が猛威をふるった原因を、なんとかしてウイルス(の毒性の強さ)に結びつけようとしている>と近藤医師は指摘しています。
まさに卓見で、エイズを起こす単一の原因がHIVであるという説に対する極めて優秀な科学者からの異論をまったく受け付けなかった米国の保健衛生当局や、「栄養状態、衛生状態の改善こそが感染症の蔓延を防ぐ」という常識を完全に無視し、「ワクチンだけが解決する」という支援しかしない世界保健機関WHOを思い起こさせます。
 
ウイルス研究が頭打ちとなりましたが、新説が登場しました。
 

鎮痛剤アスピリン薬害説


<「アスピリン」が原因ではないか、との指摘です。…
アスピリン原因説を発表したのは、アメリカのカレン・スタルコ医師です。…
アスピリンが「毒性」と「肺の浮腫」をもたらし、それが早期に「急性呼吸窮迫症候群」で見られるような肺の変化を起こし、それによって死亡する者がいた。>
 
スタルコ説を同書からまとめますと、
▽多くは急性期を生き延びるが、引き続き「細菌感染」が生じ、「細菌性肺炎」によって死亡した。
▽当時のアスピリンは今日の1日最大4グラムではなく8~31グラム処方されていた。これは中毒量で健康人でも33%に「過呼吸」、3%に「肺浮腫」が生じる。
▽スペイン風邪の第二派がアメリカに上陸した時期に陸軍や海軍で大量のアスピリンを処方するよう「医学的指令」。兵士の大量死と時期が一致。
▽スペイン風邪でアスピリンを処方しなかった医師は「ほとんど死者が出なかった」と主張
▽1918年11月の医学誌ランセットに「強い症状にはアスピリンその他の解熱剤は厳格に排除されるべき」と書いている。
 
「「壮健な若者を多数死なせたスペイン風邪を忘れるな」
史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」は、来るべきパンデミックの警戒を怠らないよう書かれたものだと思います。
 
しかし、薬害による大量死なら話は全然違ってきます。まさに政府規制当局、ウイルス学者にとっては現代にまでつながる不都合な真実です。細菌やウイルスの強弱だけで語れなくなるからです。
 
新型コロナパンデミックにおいても薬害の側面はないのでしょうか。
近藤先生はコロナ渦中に突然死されました。
日本のスタルコ医師の登場を望まずにはおれません。
 

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