Llama2のライセンス条件について解説する
Llama2は、Metaが開発したtransformerベースのLLMです。パラメータ数が70億・130億・700億という3つのモデルがあり、また、事前学習済みバージョンとチャット用のファインチューニングされたものの2タイプがあります。
Llama2はオープンソースであり、誰でも無料で利用できるとされています。そのためLlama2を使いたいと思うAI開発者も多いと思います。
もっとも、Llama2についてはオープンソースではないという意見もあります。
では、実際のところはどうなのでしょうか。本記事では、Llama2のライセンス条件について解説します。Llama2のライセンス条件は、下記のURLに掲載されています。
ライセンス条件において主に確認すべき点としては、知的財産権の取扱いと禁止事項ですので、以下では、それらを中心に解説します。
知的財産権の取扱い
Metaの知的財産権やその他の権利について、ユーザには、Llama2の使用、複製、配布、複写、二次的著作物の作成、改変を行うための非独占的、世界的、譲渡不可能かつライセンス料が無償の限定的ライセンスが付与されます(ライセンス条件1.a)。
もっとも、Llama2がリリースされた2023年6月18日時点において、ライセンシーまたはライセンシーの関連会社が提供する製品またはサービスの前暦月の月間アクティブユーザー数が7億人を超える場合、ユーザはMetaと別途ライセンス契約を締結する必要がある(ライセンス条件2)。
ユーザがLlama2または派生物を第三者に再配布する場合、ユーザは第三者にLlama2ライセンス条件のコピーを提供しなければなりません(ライセンス条件1.b(i))。また、「NOTICE」テキストファイル内に「Llama2 is licensed under the LLAMA2 Community License, Copyright (c) Meta Platforms, Inc. All Rights Reserved.」の記載をしなければなりませ(Llama2ライセンス条件1.b(iii))。
ユーザは、Llama2やその出力を、Llama2または派生物を除き、他のLLMを開発・改善するために利用することが禁止されています(Llama2ライセンス条件1.b(v))。本規定では、Llama2または派生物の開発・改善することが除外されていることから、Llama2に追加学習させることは本規定に違反しません。
改変部分の知的財産権等の帰属
Metaとの間では、ユーザによって作成されたLlama2の派生物および修正物については、ユーザがオーナーになります(ライセンス条件5.b)。ただし、Llama2とMetaによりまたはMetaのために作成された派生物についてはMetaがオーナーとなることが前提条件となります。
ライセンス条件には、商用利用を禁止する規定はありません。したがって、Llama2を、商用目的で無償で使用、複製、配布、複写、二次的著作物の作成、改変で利用することが認められています。
もっともプロダクトの月間アクティブユーザー数が2023年6月18日時点で7億人を超える場合、Metaとの間で別途ライセンス契約を締結する必要があるので、この点がLlama2はOSSではないと指摘される要因となっています。
禁止事項
Llama2へのアクセスや利用にあたっては、適用される法律および規制や「Acceptable Use Policy」に従って利用する必要があります。Acceptable Use Policyには禁止事項が列挙されています。
長いので、詳細は日本語訳を後に記載しておきますが、項目を挙げると以下のとおりです。
法律または他人の権利を侵害すること
個人に対して死亡または身体的危害を与える危険性のある活動に関与、推進、扇動、促進、または計画や開発に協力すること
意図的に他者を欺いたり誤解させたりすること
AIシステムの既知の危険性をエンドユーザーに適切に開示しないこと
常識的な内容ですが、上記の禁止事項に該当しないように注意する必要があります。
準拠法・裁判管轄
裁判管轄は、カルフォルニア州裁判所の専属的管轄とされ、準拠法は、カルフォルニア州法とされています(ライセンス条件7)。
準拠法や裁判管轄の規定がされている(しかもmetaの本拠地のカルフォルニア州)というのもOSSでは珍しいといえます。
まとめ
Llama2は、無償で商用利用可能という点でOSS的な要素を有していますが、プロダクトの月間アクティブユーザ数が2023年6月18日時点で7億人を超える場合にはMetaとのライセンス契約が必要となるため完全なOSSとはいえない要素があるといえます。
もっとも、Llama2は高性能なLLMをOSS的に無償に使えるという点で画期的なプロダクトではあるので、今後の活躍が期待されますね。
マニアックな話ですが、 EUのAI規則案ではOSSが適用除外となっていますが、Llama2がこれにあたることになるのかも注目されます。
なお、キャッチ画像は、下記のウェブサイトの掲載のadobe firefly作成の画像を利用させていただきました。Lalmaは、やっぱり動物のラマのイメージなんですね。
拙著の「生成 AIの法的リスクと対策」の最後の方にOSSの取扱について記載していますので興味のある方はご覧ください。
禁止事項の日本語訳
法律または他人の権利を侵害すること:
a.以下のような違法または不法な活動やコンテンツに関与、促進、生成、貢献、奨励、計画、扇動、または助長すること:
i. 暴力またはテロリズム
ii.児童を搾取するコンテンツの勧誘、作成、入手、流布、または児童性的虐待資料の報告の不履行など、児童に対する搾取または危害。
b. 人身売買、搾取、性的暴力
iii.わいせつ物を含む未成年者への違法な情報または資料の配布、またはそのような情報または資料に関連して法的に義務付けられている年齢制限の不履行。
iv.性的勧誘
vi.その他の犯罪行為
c. 個人または集団に対する嫌がらせ、虐待、脅迫、いじめに関与、促進、扇動、または助長すること。
d. 雇用、雇用手当、信用、住宅、その他の経済的利益、またはその他必要不可欠な商品やサービスの提供において、差別やその他の違法または有害な行為に関与、促進、扇動、または助長すること。
e. 金融、法律、医療/健康、または関連する専門職を含むが、これらに限定されない、無許可または無資格の専門職の業務に従事すること。
f. 適用法で義務付けられている権利および同意なしに、個人に関する健康情報、人口統計情報、その他の機微な個人情報またはプライベート情報を収集、処理、開示、生成、または推論すること。
g. Llama 2のマテリアルを使用した製品またはサービスの出力または結果を含め、第三者の権利を侵害、流用、またはその他の形で侵害する行為に関与または助長する、またはコンテンツを生成すること。
h. 悪質なコード、マルウェア、コンピュータウィルスの作成、生成、または作成を促進すること、あるいはウェブサイトまたはコンピュータシステムの適切な動作、完全性、操作、または外観を無効化、過度な負担、妨害、または損なう可能性のあるその他の行為を行うこと。以下に関連するLlama 2の使用を含め、個人に対して死亡または身体的危害を与える危険性のある活動に関与、推進、扇動、促進、または計画や開発に協力すること:
a. 米国国務省が管理する国際武器取引規制(ITAR)の対象となる軍事、戦争、原子力産業またはその用途、スパイ活動、材料または活動への使用。
b. 銃および違法武器(武器開発を含む)
c. 違法薬物および規制/管理物質
d. 重要インフラ、輸送技術、重機の運転
e. 自殺、切り傷、摂食障害など、自傷行為や他害行為
f. 暴力、虐待、または個人への身体的危害の付与を扇動または促進することを意図したコンテンツ。以下に関連するLlama 2の使用を含め、意図的に他者を欺いたり誤解させたりすること:
a. 不正行為、または偽情報の作成もしくは宣伝を生成、促進、または助長すること。
b. 中傷的な発言、画像、その他のコンテンツの作成など、中傷的なコンテンツの生成、宣伝、助長。
c. スパムを生成、宣伝、またはさらに配布すること。
d. 同意、承認、または法的権利なしに他人になりすます行為
e. Llama 2の使用または出力が人為的に生成されたものであることを表明すること。
f. 偽のレビューやその他の手段による偽のオンライン関与を含む、偽のオンライン関与の生成または助長。AIシステムの既知の危険性をエンドユーザーに適切に開示しない。
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