Web3の定義と何ができるかについての考察
web3 とは何か
初のNoteの投稿ということで、何を書こうか大いに悩んだのだが、やはりweb3の概要について自分が考えていることから始めたいと思う。
仕事柄web3について話さなければならない機会があるが、web3について話すと、特に、年配の方は、そもそも知らない/聞いたことはあるくらいの方が多く、「そもそもweb3」とはということを何度も説明しなければならない。面倒だと思う反面、それだけ成長余地があるとポジティブに考えることにしている。
自分は、web3を「ブロックチェーンを利用した分散型のインターネット技術」と説明することが多い。しかし、その説明では、世のおじさんたちの顔が「???」となるのがよくわかる。
定義と言えば、例えば、インターネットの定義について、Wikipediaでは、
「インターネットとは、インターネット・プロトコル・スイートを使用し、複数のコンピュータネットワークを相互接続した、地球規模の情報通信網のことである」
と説明されている。この定義から、インターネットでできることを想像できる人は、ほとんどいないであろう。しかし、このような定義を知らなくても、人々は、インターネットとは何か知っているし、説明する必要もない。それは、インターネットのサービスが普及しているからに他ならない。
同じように、「ブロックチェーンを利用した分散型のインターネット技術」という定義だけでは、人々は???となるのは、当然だろう。
web3という言葉は、Ethereumの共同創業者のギャビン・ウッドが「ĐApps: What Web 3.0 Looks Like」で初めて使ったものである(日本語訳もある。web3を語るならこれくらいは読むべき原典だと思う)。そこでは、web3の構成要素は、①静的なコンテンツ公開、②動的メッセージ、③トラストレス(管理者不在)のトランザクション、④統合されたユーザインタフェースであると述べられている。
法律家はまずは定義から始めるのが好きだが(私も御多分に洩れず…)、web3の定義自体は、学術目的を除いて、あまり意味がなく、定義を侃侃諤諤と議論することは不毛なのではないだろうか。だから、web3の定義としては、「ブロックチェーン+インターネット」ということがわかれば良い、というのが私のスタンスである。
なお、Web3が関係する業界は広く、例えば、ゲームと金融ではかなり違うのに一緒に議論できない。しかしWeb3の概念が固まっていない草創期においては、Web3について語る人たちは、自分のかかわるビジネスをイメージしてweb3を定義したり語っている。人間の認知に限界があることから、やむを得ない部分もあるが、それが自分のビジネスを有利にするためのポジション・トークであることもある。だから、「web3とは何か」について人が語っている時には、基本、認知の限界によるバイアスやポジション・トークが入っていることを頭に入れておく必要がある。
web3で何ができるか
では、web3で何ができるだろうか?
これについては、イーロン・マスクとジャック・ドーシーの次のTwitterが有名だ。
イーロン・マスクが「誰かweb3を見たことある? 僕は見つけられない」とツイートとすると、ジャック・ドーシーがすぐに「たぶん、aとzの間のどこかにあると思うよ」とリプライしたものである(aとzとの間というのは、web3の投資で著名なVCのa16zを皮肉ったもの)。
このように、web3で実際にどんなサービスがあるのかについて、「わからない」ということがある。
しかし、おじさんたちにweb3を説明するには、web3でどのようなことができるかを説明する必要がある。
現在、web3ではさまざまなサービスが提供されていて、その範囲はかなり広い。ネットで探すと以下のランドスケープマップがかなり広く整理していると思う。
しかし、日本で一般的になっていて、おじさんたちに説明して「なるほど!」と思ってもらえるサービスはほとんど見当たらない。
NFTを扱うOpneseaであれば知っている人もある程度いるかもしれないが、Opensea自体は、NFT(=web3のプロダクト)を取り扱っているが、マーケットプレイスとしては中央集権的=web2プロダクトである。
他に挙げられる例としては、Maker DAO や Uniswap などの Defi(分散型金融技術)であるが、これも日本では一般的ではないし、その説明には時間と相手型の理解力を有する。
ブラウザーのBrave も使ってみたものの、広告が表示されないとかTokenがもらえるという点はあるものの、使用感がchrome と劇的に異なるようにも思われなかった。
STEPNは、面白い試みだったが、失速してしまったので、web3プロジェクトを打ち上げるための事例としては使いづらい。
山古志DAOも有名だが、地方創生という文脈なのでビジネスとしての事例としては使いにくい。
web3の技術はインターネットの世界を変えると思うが、現時点では、(日本人の)誰もが(少なくとも決済権限をもっているおじさんたちが)「おおー」というサービスはないように感じる(あったら教えくいただけると嬉しいです)。
ただ、このようなわけのわからない状況は、サービスにおいて、今のGAFAMのように勝者が決まっていないことを示しているので、それだけ可能性と面白さがあるということでもある。
インターネット草創期において、google検索や twitter がここまで一般的になることを想像できた人がいたであろうか。youtube や tiktok を人々が楽しみ、youtuberやtiktokerという職業が人気になることを想像できた人がいたであろうか。(俺はそうだ、という人は是非名乗り出てほしい)
同じことは web3 についてもいえる。5年後、10年後には、web3を使って、現在の我々の想像ができないサービスが提供されているであろう。そして、そのような新たなサービスを創造すべく、多くのstartupが切磋琢磨しているのが現在である。だから、今、「web3で…ができます。」などと確信をもって言えるはずもないし、言っているとすれば、それはその人の夢を語っているか、自社商品の宣伝文句にすぎない。
なお、インターネット草創期において、「なにができるの?」という質問に対して、「メールができます」と答えると、「FAXがあるからメールは不要」「電話があるからメールは不要」という反応があったようだが、今だと、そのような反応はいかにも先見の明がなかったといえる。我々も、web3に接する時に「FAXがある」「電話がある」と言わないように気をつけなければならないと肝に銘じたい。
つづき
もっと色々書くつもりであったが、長文だと読んでもらえないかもしれないので、3000字くらいになったこの時点で筆を起きたいと思う。今後の原稿も概ね2000〜3000字くらいにするつもりである。
次回は、
・ web3は社会をどのように変えるか
・ web3に関する都市伝説
について書こうと思っています。この調子だと、2つは分けた方が良いかもしれません。
総論部分の執筆が一段落してから法律について書きます…(笑)
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