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僕にとっての「もう一つの20年」(バンドやるのって楽しいってことでいいよね)


「ぼっちざろっく」というアニメの存在を知ったのは、今から1年と少し前になる。

東京に出張した帰りに、横浜に立ち寄り、古くからの友人である彩子さんとお茶をした時のことだった。

彩子さんの娘さんが、「ぼっちざろっく」を観たことをきっかけにエレキギターを始め、教室に通っていると聞いた。
その時、僕はそのアニメをしらなかったので、アマプラで何話か観てみた。
正直、ハマるまでには至らなかったが、普通に面白かった。

(年末のuniquadのライブでは会ったが)それから1年近くが経ち、彩子さんから連絡が来た。
要件は、お家から出てきたマッキントッシュの帽子をあげようか?という内容だった。
その帽子はいただくことになったが、そのやり取りの中で、ギターを始めた娘さんのその後が気になり、「ギター続いてますか?」と聞いてみた。

すると、一枚の写真が送られてきた。

その写真は、これからライブを始めるだろうステージに、黒いストラトタイプのエレキギターを持つ不安そうな顔の女の子の姿が、他のバンドメンバーと共に映っていた。
地域イベントで演奏した時の様子だそうだ。

気持ち悪いと思って欲しくはないのだが、その写真を見た時、僕は不覚にもうっすら涙を浮かべてしまった。
なんの涙かはよくわからない。

その次に思ったのは、『やっぱりバンドって楽しいんだよね』ということだった。

僕は16歳になる年、1997年に初めてスティックを握り、ドラムを始めた。
それから27年間、幸いほぼ中断することなくバンドを続けることができた。
改めて、ありがたいことだなと思った。

実は、16歳、つまり高1頃に初めて組んだバンドでギターとボーカルをしていた友人が2年前に死んだ。自殺だった。

16歳から始めたバンドは、高校の間活動し、進学でみんなバラバラになったので、定期的な活動はできなかったが、それでもたま集まってライブをしたりすることもあった。
僕は今のuniquadにつながるメンバーと大学から活動していたので、高校の頃のバンドは、たまに一緒にやる仲間みたいな感じになっていった。

働き始めるとより一層会う機会は減った。
それでも年に1回くらいは同窓会的に会っていたかもしれない。

そして、コロナ禍をきっかけにすっかりご無沙汰していた。

ボーカルの友人が死んだということを聞いたのは、2022年の年末に近いころだった。
最初は音信不通だということを聞いたが、程なく自殺したということがわかった。

こんなことをいうと冷たい奴だと思われるかもしれないが、その時は悲しいとかショックだとはそこまで思わなかった。
というのも、彼はかなり個性的だったし、(敢えて詳細には書かないが)思想的に偏りがあり、飲みの席などで嫌な思いをしたことも関係しているからだと思う。

自殺したというのもそこまでびっくりしなかった。そうなってもおかしくない感じは十分あった。

周辺の情報がわからないということもあって、同級生には共有せずに一旦何も行動しないまま、半年ほど経過した。

2023年になり、死因や遺骨がどこにあるのか、両親や家の状況も明らかになった。
そういった事実の判明に尽力してくれた友人の発案で、当時高校の軽音楽同好会の同期のメンバーで仏壇に線香をあげに行こうということになった。

2023年の7月。
めちゃくちゃ暑い日だった。
総勢20人ほどで、彼の実家に行き、仏壇の前で手を合わせた。
まだ墓には入っていなかった。

そのまま、宴会になり、結局深夜まで飲み続けた。
1軒、2軒とハシゴし、最後はBARのようなスナックのような店で3人だけが残った。
医者と占い師の友人と僕。

酩酊状況だったが、なぜかこの3軒目に至って初めて彼が亡くなったことの悲しさが、ひしひしと感じられた。
「なんで死んだんやろな」とか「死なんでもよかったのにな」とか話をしていたら、ほんの少し涙が出た。

なぜこの話を今頃しているかというと、先日、遺骨が墓に埋葬されたという知らせを聞き、墓参りに3人で行ったからなのだ。
僕(ドラム)、リードギター、ベースの3人で。

南大阪のとあるお寺にその墓はあった。
墓に行ったことで、彼の命日が9月3日だと知った。
線香をあげ、手を合わせた。
蒸し暑い9月の午後だった。

墓参りの後、3人で20年ぶりにスタジオに入った。彼を含めた4人で最後にライブしてから20年以上の月日が経っていた。
スタジオに入るにあたり、何の曲をしようかということになった。
ただ音を鳴らすには2時間という時間は長すぎる。

せっかくなので、新たに曲を作ろうということになった。
僕は20年ぶりに歌詞を書いた。
ギターとベースのメンバーが曲を作ってくれた。

20年ぶりにスタジオに入ったが、案外そこまでの感慨はなかった。そんなに間があいたのかなというような気もした。

「1年に1曲ずつ作っていこうか」など話をした。
ボーカルの彼はもうこの世に居ないので、ギターのメンバーがボーカルをとる。
シンプルなロックだけど、なんとなく今の気持ちによく合う。
もっともっとシンプルで良い。

ということで、再びバンドが動き出した。

もう4人では絶対にできないので、3人でやっていくのだろう。

とてつもなく遠回りしたが、言いたいのはほんとに一言で『バンドは楽しいよ』ってこと。

黒いギターを持った女の子が写っている写真にまつわる話ということにしたいと思っている。


多少無理にでもそういうことにしようと。

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