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ナザレンコ氏に対する橋下徹のツイートがダメ。お前が降伏しろや!
橋下徹のウクライナ情勢に関する発言が酷すぎてどうしようもない。
橋下はとにかく市民の命が一番大切だからという理屈でもってウクライナに降伏するよう勧めている。一見正しそうな理屈に聞こえる。
しかし、当のウクライナの人たちは降伏しようなんて考えていない。
ウクライナの人たちは戦争とはどういうものか? ウクライナの主権、そしてそれを侵害しようとするロシアから国家を守るために何をしなければならないのか? そしてロシア軍がチェチェンやシリアで行ってきた残虐行為とはどういうものか? その辺りをしっかりと理解しているので絶対に降伏なんてできるワケがないのだ。そんな恐ろしいことをできるワケがないのだ。彼らは徹底抗戦しながらロシアが自滅していくのを待つ戦法を取るしかないのだ。
ロシア軍というのは学校や病院といった民間施設に情け容赦なくミサイルを撃ち込むわ、占領したマリウポリの市民数千人を自国に強制連行してしまうわ、そんな悪魔のような連中なのだ。降伏したら何をされるか分からないのだ!
そんなウクライナの人たちの苦しい胸の内を全く理解できず、安全な日本からバカなツイートをピーチクパーチク続けているのが、我が日本の橋下徹センセイなのだ。
以前、在日ウクライナ人のナザレンコ・アンドリー氏について紹介させてもらったが、彼は自国を守る為に義勇兵に志願している御仁で、ロシアへの徹底抗戦を舌鋒鋭く叫んでいる。
そんなナザレンコ氏だが、彼は先日北海道へ赴き自衛隊駐屯地で講演している(講演の内容はよく分からないが、地理的に考えるとロシアの脅威等に絡めた安全保障についてだろう)。
その行為について我らが橋下徹センセイは、「楽しく北海道を旅行している場合じゃない!」――的なカンジに噛みついているのだ。
橋下のツッコミは全く的を射ていないのだが、今回はナザレンコ氏に対する橋下のツイートを全て紹介することとする。ウクライナは降伏すべきだという自説を貫くため、祖国ウクライナのために行動している人間に対し、印象操作を織り交ぜた出鱈目な発言を続ける人間のおぞましさを垣間見ることができるだろう。
※以下、ナザレンコ・アンドリー氏に対する橋下徹からの一連のツイート。太字天乃川。
●雑誌への記事ありがとう。新聞広告の見出しを見たけど、僕は奴隷の平和を選べとは言っていない。今回の戦争の本質はヨーロッパにおけるウクライナの政治的立ち位置の問題。奴隷になるかどうかではない。停戦協議の中身を見てください。もちろん東部地域の問題はあるが、それは国民投票で決めることや、
●NATOが負担を引き受ける政治的解決策もある。しかもあなたは日本にいる限り奴隷になることはない。こうして北海道を楽しめる。他方、マリウポリのウクライナ市民、その他戦地で悲惨な生活をしている市民はどう考えているのか、僕はそこが一番気になっている。
●あなたの主張も理解できるし、戦争指導者層や戦闘員はそう考えるだろう。しかしマリウポリの市民、その他一般市民はどうか。僕の主張はその視点。あなたがマリウポリで今の主張を続けることができるのだろうか?義勇兵に志願したのは立派だけど、結局日本にいて、北海道を楽しみにしている。
●あなたのように日本で暮らしたいウクライナ一般市民はたくさんいると思う。ウクライナでは18歳から60歳の男性は出国禁止。避難する者は非国民呼ばわりされ、国外脱出が見つかると身柄拘束されてネットで公開されているとの報道あり。召集令状も出され、2週間の不十分な訓練で戦地に出されるらしい。
●お金がないから逃げられないという一般市民の状況の報道もある。他方、あなたのように北海道に行ける人もいる。あなたはそこに何かを感じませんか?あなたの主張は戦地の戦闘員が言うなら納得できる。しかしあなたは日本の北海道を楽しんでいる。
●あなたには戦闘員の視点ではなく、毎日死の恐怖に晒され、水も食料も医薬品もない中での生活を強いられ、家族の命を奪われ、とにかく生き延びたいと決死の覚悟で避難行動をとっている一般市民の視点で発言して欲しい。今のあなたのような主張は誰でもできる。僕もその程度のことは主張できる。
●しかしウクライナ一般市民の思い、考えを説得力を持って代弁できるのは、ウクライナ人であるあなた。あなたは戦地の戦闘員ではない。戦地の一般市民の状況を感じるべきだと思う。戦地の戦闘員には敬意を表しましす。
●あなたも雑誌に意見を出す存在なので批判対象にさせてもらうが、あなたがもし今北海道を楽しむなら、それは外出自粛要請中にクラブに通った国会議員の比にならないくらい批判される行動だと思う。
●あなたがいくら立派なことを主張しても全く説得力がなくなる。戦地のウクライナ一般市民のことを思って行動するよう願っています。
●戦地の自国の仲間たちに、徹底抗戦だ!一般市民の犠牲も已むなし!と叫びながら、自分は日本の北海道を楽しむ姿の矛盾、滑稽さに気づいて欲しい。あなたは戦闘員ではない。あくまでも戦地の一般市民の視点で考えるべきだと思います。あなたはもう有名人です。北海道ではSNSの写真に気を付けてください
――以上だ。
いかがだったろうか? 繰り返すが、ナザレンコ氏が北海道へ行ったのは仕事のためだ。自衛隊駐屯地での講演のために北海道へ赴いたのだが、橋下徹はその行為を、何かやましいことかのように印象操作しつつ議論を進めていこうとしているのだから卑怯者過ぎる。
「あなたがもし今北海道を楽しむなら、それは外出自粛要請中にクラブに通った国会議員の比にならないくらい批判される行動だと思う」
――って、そのいかにもナザレンコ氏がヘラヘラと馬鹿面下げて北海道を満喫してきたみたいな表現ってオカシイでしょ!
ナザレンコ氏は義勇兵に志願しているんだって! 今後祖国に戻って命懸けでロシア軍と戦うんだって! 今は日本という戦地ではない場所に居るけど、今後はマリウポリのような死地に赴く人なんだって! 「戦地のウクライナ一般市民のことを思って行動」しようとしているじゃん!
それに、例えナザレンコ氏が北海道へ行った際に現地で何かしら楽しんでいたとしても、それの何が悪いのか全く分からない。悲劇的な状況下でも楽しんだり冗談を言ったりするのが人間というものではないか。それが人間の強さ・逞しさであり、そして悲しさではないか。
この感覚についてはナザレンコ氏もツイートしている。
●戦時を体験したこともなければ現地の人と話したこともない弁護士にはわからないかもだけど、近くに砲弾の雨が降る中でも、子供が遊んで笑うし、人は誕生日も祝うし、結婚式もあげるし、犬と散歩したり音楽を楽しんだりもする。人は辛い時こそ幸せを感じたいもの。「僕の考えた正しい当事者論」要らない
――そうなのだ、悲惨な状況においても人間は楽しさを追い求めるのだ。
本当に辛いときって楽しい事を求めたくなるではないか。学生時代の私はバッドエンドな映画や小説が好きだったが、年を重ねるに連れてハッピーエンドな映画も小説も好きになった。辛い時に辛いものだけを見続けることって相当にキツイではないか。橋下は絶望的に人間というものの理解が足りない。
橋下徹のツイートを受け、ある方がこんなツイートをしている。
●東日本大震災の10日後くらいで、避難所でボランティア活動をしていた時の話です。
屋外の広場で子どもたちが大きな笑い声をあげて縄跳びとフラフープで遊んでいました。
それに対して「ここはそんなことするところですかね?」と言い放った大人がいました。
その人は、東京から来た新聞記者でした。
この新聞記者は、「被災者はこうあるべきだ」「被災地はこうあるべきだ」――的な感覚に基づいて偉そうに発言しているのだと思うが、橋下徹もこの新聞記者と同じなのだ。人間への理解が足りないのだ。
そして結局、何もかも他人事としか思っていないのだ。当事者の思いや感情を全く考慮することなどなく、「僕の考えた正しい当事者論」をぶっているだけなのだ。それが橋下徹という男なのだ。
「僕の考えた正しい当事者論」要らない――ナザレンコ氏は橋下徹に対してこのようにツイートしたワケだが、橋下は「ウクライナは降伏すべき」という自説を押し通さんがために、まさに当事者とも言うべきナザレンコ氏に対して印象操作までしながら徹底抗戦しているのだから笑える。
――いやいや、お前こそ降伏しろや馬鹿野郎!!!
ウクライナに強く降伏を勧める人間が、自説を押し通す為に徹底抗戦する。――こんなもん、もはやギャグだろうが!
……ね、橋下さん? だからプライドとか誇りとかって大事でしょ? 自説を撤回することすら難しいんだから、なおさらウクライナの人たちは降伏できませんがな。ウクライナの人たちはプライドや誇りだけじゃなく、自分の命も子供の命も領土も歴史も文化も何もかも奪われるかもしれないんだから、絶対に降伏なんてできやしないのです。
橋下くん、理解できたかな?
※橋下徹氏Twitter
https://twitter.com/hashimoto_lo
※ナザレンコ・アンドリー氏Twitter
https://twitter.com/nippon_ukuraina