139、コロナ禍というバスからウクライナ危機というバスに乗り換えただけか
5~11歳の子供へのワクチン接種が開始された。こんなことは絶対に許されない。言わなければならないことがたくさんある――筈なのだが、どうにも何を言ったら良いのか分からなくなっている。
いや、例えば10歳未満の子供でコロナによって亡くなった者は0人だ。一人もいない、ゼロだ。それなのに、「いやいや重症化する場合がある」「いやいや、高齢者に感染させないようにする必要がある」――とかいった理屈でもって、もう1400人以上が副反応によって亡くなった可能性がある恐ろし気なワクチンを子供に打たせるのか? なぜに他者の為、社会の為といった理屈で子供が命を懸けなければならないのだ? 打つ必要なんて1ミリもない。1マイクロメートルだってない。
――と、まぁこんなようなツッコミを憤慨混じりで叫び、何か説得力のあるデータでも示してチャンチャンといきたいところだが、どうにもそういう気分になれない。
通りすがりの誰か
「他に何か気になることでもあるのかい天乃川くん?」
――はい、そうです。気になる事があるのです。私はウクライナ情勢が気になって仕方ないのです。
通りすがりの誰か
「ウクライナとロシアの戦争か……。ウクライナが心配なのかい?」
――はい、そうなんです。ウクライナには少なくない邦人も居るようですし、あの国がこれからどうなってしまうのか気になるんです。でも――
通りすがりの誰か
「……でも、なんだい?」
――他にも気になることがあるのです。どうでも良いことかもしれないけれど……いや、全然どうでも良くないな。とっても気になることがあるのです。
通りすがりの誰か
「というと?」
――いえ、私はウクライナのことを心配して応援している日本人たちが気になって仕方ないのです。
通りすがりの誰か
「例えばTwitterなんかを見ていると、ウクライナに住む人達に向けて激励や応援、同情、情報提供……そういったツイートを見かけるけれども。そういうものが気になるのかい?」
――はい、はい。まさしくその通りなんです。
通りすがりの誰か
「なぜ、一体どうして?」
――いえ、そういったツイートは実際に現地の人達を励ますだろうし勇気づけると思います。必要な行為だとすら思います。でも、ぶっちゃけて言いますと、私はその日本人たちに対して「てめぇら何様だよ感」がフツフツと湧いてきてしまって仕方ないのです。そうしてグラグライライラと茹(ゆだ)ってきて腹が立って仕方ないのです。
通りすがりの誰か
「君は随分と難しい考えをもっているようだね。僕なんかはそんなことは思わないな。みんな、ウクライナの人達を普通に心配しているんだと思うよ?」
――はぁ、結局私の性格が歪んでいるのだと思います。みなさん、ウクライナの人たちのことを普通に心配しているのだと思います。私だって強大な軍事力を背景にして、兵士も市民も子供も女性も関係なく、無差別に殺しまくるロシア軍は許せないです。ウクライナの人々に対しては「頑張れ!」と応援していますし、できることはしてあげたいと思っています。はい。
通りすがりの誰か
「どうにも話しが見えてこないな。一体、君は何が気に入らないんだい?」
――はぁ。そうですね、一言で言うと「自己矛盾」ですかね?
通りすがりの誰か
「自己矛盾? ウクライナを応援している人たちは何かが矛盾していると?」
――はぁ、全くその通りで。
通りすがりの誰か
「ウクライナの人達を心配しているから、応援や励ましの言葉を送る――何も矛盾していない。論理的一貫性があるように思えるが?」
――違いますよ、そこじゃない。
通りすがりの誰か
「どういうことなんだい?」
――盗人猛々しいということですかね。……要するにですね、ウクライナの人たちを応援している日本人たちというのは、ロシア軍による無差別殺人を批難しているワケですよね? 既に少なくない子供が犠牲になっていますし酷いもんですよ。
そのくせにですねぇ、国内で開始された5~11歳の幼い子供たちへのワクチン接種に対しては、子供を守るため、社会を守るために必要な行為だとして日本人の多くは諸手を挙げて賛成しているんですよ。応援メッセージを送っている連中もこの類が多いでしょう。
私はですね、これが大いなる矛盾だと言っているんですよ!
いいですか、てめぇが大量虐殺に加担してしまっている側の立場にあるということに全く気付きもせず、平和なお茶の間からスマホ片手にのうのうとウクライナの人たちに応援メッセージなんて送って悦に入っているんじゃねぇよ馬鹿野郎と言いたいワケです。
私に言わせたらですね、ロシア軍の空爆と5~11歳の子供たちへのワクチン接種はどちらも同じくらいに恐ろしくて卑劣な行為ですよ。どちらも権力者の都合によって行われている無差別爆撃ですよ。――いや、多くの人間を騙しているという点では、5~11歳の子供たちへのワクチン接種の方がよっぽど悪辣かもしれないですよ。
ロシア軍と戦って死んだ者は、死後「英雄」として扱われるでしょう。しかし、ワクチンを接種して亡くなった人間はどうなります? こんなもの絶対に英雄ではないですからね? ただの「被害者」ですよ。美しい物語が添えられることなんて絶対にない。なんだったら、その死の意味すら書き換えられてしまうような(寿命・たまたま)、そんな被害者ですよ。
そういった現実や可能性に考えを巡らすこともなく気付くこともなく、2年以上に渡るコロナ禍で味をしめた「一体感」「グルーヴ感」を、また今回のウクライナ危機でも感じたい、味わいたい、もっともっと続けたい、世界の人たちと共有したい! ――こうした己の非日常感を欲しているだけのつまらない心性にいい加減に気付いていただきたいということですよ。
「盗人猛々しい」と私は言いましたが、「馬鹿は死ななきゃ治らない」とも言っておきたいと思っていますよ。何度も何度も同じようなことを繰り返し、そうしてやっぱり子供を苦しめようとしている。
そんなことをですね、私は考えているワケですよ。
言っている意味、わかりました?
通りすがりの誰か
「……。あ、そうだ。こ、これから僕は3回目のワクチン接種に行かなければならないんだった。そ、それでは天乃川くん、また何処かで!」
……ふん。日本人の多くは、あっちのバスから、こっちのバスに乗り換えたということだな。
玉川徹もその類になりそうだな。
ウクライナでは大人達が子供を守ろうと必死だが、それに比べて日本は……。
それでは。
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