ジャニーさんとKinKi Kids。ずっと、ともに。
Thanks 2 YOU。
KinKi Kidsがいかにジャニー喜多川を愛し、ジャニー喜多川がいかにKinKi Kidsを愛したか。痛いほどにそれを感じたコンサートだった。
コンサート中、自分自身の20数年間にも思いをめぐらせた。彼らもそうだったかもしれない。
2年ぶりとなったKinKi Kidsドームコンサート。優しくて幸せで、ほんの少し切ない時間だった。
■いろんな曲にジャニーさんを重ねてしまう
SNSの東京ライブレポで見つけた、彼らの言葉。
例としてあげられていたのは『雪白の月』だった。
君がいなくなったあのとき
あらためて気がついたんだ
いつかのように笑えるように頑張ってはいるけど…
恋をなくした悲しみの曲が、大切な人を亡くした思いに重なる。
空に浮かぶ雪白の月 見上げるたびに思う
愛しただけ胸が痛む ぽっかりと穴が開いたみたい
今回のライブ中、剛(敬称略)は何度も天に向かって歌を、想いを贈るような仕草を見せていた。印象的だった。
『雪白の月』でもまた“空に浮かぶ”という歌詞を歌いながら、大きな瞳が天を見つめていた。その先に、ジャニーさんの笑顔を探していたのかもしれない。
さようならと言われるよりも 言うほうがきっとツライ
光一(敬称略)は、このフレーズを例にあげ「切なくなる」と言っていたという。
さようならの瞬間は、辛いものだ。
けれどこの歌詞には、自分の辛さよりも相手を思いやる気持ちを感じる。
死は、置いていく者と置いていかれる者を分ける。
置いていかれる者はこれからも生きていかねばならない。どうしたって、自分の辛さや悲しみに目を向けがちになる。
そのなかで「置いていかねばならなかった者」に思いを馳せることができる光一は、優しい人間だと思った。
もちろんこれは私の憶測に過ぎないが。
■今さらね 愛しいね
ジャニーさんがKinKi Kidsに与えた最初の名前「KANZAI BOYA」。これをタイトルにした楽曲が今回、剛によって制作された。
ジョークまじりでアッパーで、最後には光一とふたり揃ってコミカルにキメる。ファンも演者も終始笑顔。そんな曲。
歌詞は「KANZAI BOYA」と名付けられたときの心境や、ジャニーさんが今どうしているかという想像をユーモラスに表現している。
KANZAI BOYAという名を“素敵な名前じゃん!”とポジティブに語る言葉の羅列のなかに「今さらね 愛しいね」という節があった。
人間は、なくしてから気付くことが多すぎる。
「いまさら」というたった一言が、なんだか切なかった。
■ジャニーさんが名付けた曲
『Harmony of December』というタイトルがジャニーさんのひらめきだというのは、ファンの間では周知のエピソードだ。
今回、本編最後に歌われたこの楽曲にも、ジャニーさんのかけらを見つけた。サビでは、またも天へと視線を送る剛の姿があった。
君に会いたい いま会いたい 離れた一秒も
僕の思いは 夜空彷徨う白い羽さ
君を抱いて 羽ばたいて 永遠よりも彼方へ
消えないでいて この恋よずっと
7月。ジャニー喜多川氏が逝去した際、光一が『ボクの背中には羽根がある』の歌詞を引用しコメントしたことから、以降KinKi Kidsやファンの間では『羽根』という言葉がひとつのキーワードになっていた。
振り返れば以前にも、剛がKinKi Kidsを翼に例えたことがある。2つ揃わないと飛ぶことができないと、そう話していた。
ジャニーさんが、彼らに授けた羽根。
KinKi Kidsという、対になる翼。
そして、ジャニーさんとKinKi Kidsもまた、ともに羽ばたき生きていく。
そんな、永遠以上の関係なのだと思う。
“we’re the one”
ラストを飾った『YOU…』。KinKi Kidsの友情を歌った楽曲。ここにもまた、ジャニーさんの存在を感じてならない。
KinKi Kidsとジャニーさんはこれまでも、これからも、いつまでもともにいる。ずっとひとつであり続けると歌っているようにも感じられた。
■ジャニーさんが引き合わせ、残したふたりぼっち
今回のコンサート。
KinKi Kidsは、これまで以上に「ふたり」だった。たくさんのミュージシャン、ダンサーに囲まれ、ファンの声援を浴びる。
それでも「ふたり」。
同じ衣装を着るわけでもない、並んで踊るわけでもない。
それでも「ふたり」だった。
ジャニーさんが引き合わせたふたりは、並びながらもそれぞれの道を歩き、ときには「個」と「個」として混ざり合わない美しさを、成長を見せてくれた。
そんな彼らをまた「ふたり」という原点に立ち返らせたのは、奇しくもジャニーさんとの今生の別れだったのかもしれない。
ジャニーさんとの思い出、ジャニーさんへの思い、それはきっと、誰よりもお互いが分かっている。きっと、お互いにしか分からない。ふたりだけ、KinKi Kidsだけの、宝物だろう。
最後の写真には、これまで我々が知ることのなかったふたりの優しい距離感、優しい時間が映されていた。友情という言葉が似合う、はじめて見るKinKi Kidsだった。
ともに見てきた景色もまた、ふたりだけのもの。
彼らのことだから、きっと今日のコンサートのことも、明日のコンサートのこともすぐに「忘れた」というだろう。
多忙な毎日。しかたのないことだ。
それでも、KinKi Kidsとして立ち続けてきたステージは、ふたりしか知り得ない景色であり、記憶であり続ける。
KinKi Kidsが、堂本光一と堂本剛であること。
堂本光一と堂本剛でしかあり得ないこと。
当たり前のように思っていた奇跡を、青いふねで待ち合わせた奇跡を、今一度思い出させてくれた。
世間はときに、いろいろとうるさい。
それでも彼らは、KinKi Kidsであり続けると思う。
彼らを愛したジャニーさんとともに、KinKi Kidsであり続けるだろう。