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【音楽】falling Graceにみる作曲アプローチと完成された美しさについて

マンタです。普段はスタートアップ企業で働き、週末は音楽や趣味を探求し新しい生活様式を模索しています。

いつもは「JAZZの編成」という切り口からアルバムをご紹介させていただいていますが、今回は"楽曲"に焦点を当ててご紹介させていただければと思います。

今回はSteve swallow作曲の「Falling Grace」という美しい楽曲を取り上げて見たいと思います。

Steve Swallowとは

Steve Swalllowとはおん年なんと80歳になるJAZZ創世記からご存命のレジェンドベーシストの一人です。
元々はアコースティック・ベースでしたが、そこからエレキベースへシフトし、「エレキベース+銅ピック」という個性的な組み合わせからの独特なサウンドをお持ちの偉大なプレイヤーです。またプレイヤーとしてだけではなく多くの楽曲を制作されておりそのどれもが素晴らしいものとなっています。

Fallin' Graceとは

Fallin' Graceとはそんな彼が作曲した楽曲の中で私が最も美しく、そして最も演奏が困難な楽曲として捉えている1曲となります。
今回はその美しさの理由、そして演奏困難な理由についてまとめていければと思います。

なおタイトルの意味は色々考察できるが、Steve Swallowはこの楽曲はピアノにすわってるときに「いきなり降ってきた」と表現していたとのこと・・・。しかし深く考えれば考えるほど、確かに「降ってきた」曲と言われるのも納得かもしれません。

−この楽曲の美しさをまずは聞いてください

Youtubeで調べていただくと本当にいろんな演奏が出てくると思いますが、今回はその中でも偉大なピアニストChick CoreaGery Barton(ビブラフォン)のデュオ作品をピックアップして見ました。

聴いていただくとわかるかもしれませんがメロディが繊細で美しいです。
ビブラフォンのような繊細なサウンドはもとより、ピアノトリオ、ギタートリオなどの編成の方が、金管・木管よりも映えるメロディーだと思っています。

実際ギタリストやピアニストに人気の曲です。

−美しさの要素①:小節数をコントールした構成美

こちらがFalling Graceの譜面です。

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JAZZの譜面は基本的には4小節1区切りで楽曲が構成されることが多いです。そのためAパートは8小節、曲全体で32小節など4の倍数となることが多いです。

しかし「Falling Grace」は異なります。

まず曲全体の小節数は24小節と確かに4の倍数ではあるのですが、中途半端な数になっています。

また内訳はAパート;14小節、Bパート:10小節となっています。
Aパートというか、パートの構成として8小節構成や16小節構成が多い中、圧倒的に違和感のある小節数となります。

そしてBパートは10小節とこれまた普通ではありません。
このように14小節+10小節による24小節という特殊な小節数にはなっていますが、これがメロディ、コード進行と相まって、より楽曲の美しさが際立つようになっています。

−美しさの要素②:美しさと浮遊感を持つメロディー

Falling Graceの持つ「美しいメロディー」には3つのポイントがあると思っています。

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ポイント①:2拍裏から入るソの音による哀愁と浮遊感
   この音は絶妙な位置にあると常々思います。この音こそがテーマの美しさの象徴であり、また小節割が異なっても違和感を感じさせない浮遊感をこの1音で表していると思っています。

ポイント②;同じメロディーが四度現れること
 
 青で囲った箇所の音符の配列ですが上下の移動、横の形含めて同じようになっています。しかし同じような音の配列ですが、少しずつ異なった点を入れており、「同じようだけど同じじゃない」「ループしているようでループしていない」
そんなな錯覚を起こさせてくれます。またどの音も裏のリズムから開始しており、小節の頭がわかりにくくなっています。ポイント①同様に小節数の違和感を感じないようになっています。

ポイント③:終わりは始まり、そして終わりに向かう盛り上がり
   エンディングに向かって盛り上がっていくのは、演奏の途中ならまだしも、テーマやメロディーだけではあまり見られません。
しかし緑で囲ったように、この楽曲では最後の音に向かって最後2小節は上昇をしていきます。そして上昇し切った所で曲の先頭に戻るのですが、この時に自然と先頭の1音目=終わりの音と重なるように作られています。
   そのため小節数の違和感はここでも調整されており、もはやどこが頭なのか、譜面と1周演奏するだけで、分からなくなるような構成になっているのです。

−美しさの要素③:構築され尽くした分数コードの美学

青字で結構書いていますが全体的に分数コードが多く、そしてその分母部分(つまりベース音)は半音で綺麗につながるようになっています。この辺りは世界観を出すのが難しい1つのポイントです。

さらにAパートの終わり部分、B7|Em7|Am7 D7|GM7はGM7に向けたⅢ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ-Ⅰのコード進行になっていると捉えられビバップ的な面を見せてきます。またこのGM7からBパートのCm7へ向けた進行はⅤ-Ⅰの解決とも捉えることができます。そのため2段階の意味でAの中での解決、そしてAからBパートへの解決としても捉えることができます。

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そしてBパートです。Bパートは最初から半音ずつ音階が上がっていき、分数コードとしてではなくコードそのものが半音ベースで移り変わっていきます。
そして最後はAパートと同じようにⅢ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴの進行になるのですが解決コードはAbM7と1小節目のコードがメロディと同じようなっています。

そのためここではBパートからAパートへの解決という形で捉えることができます。非常によく構成されたコード進行になっています。

-課題:構成が完璧すぎてアドリブでのアレンジの幅が狭くなりがち

今回改めて整理した美しさの3つのポイントはそのまま演奏の難しさにも直結します。簡単に言ってしまうと、演奏にアレンジを加えるよりも譜面通り忠実に演奏することが最も"綺麗"に演奏ができるので、アレンジの幅が狭くなりがちなのです。

もちろんそんな難曲であっても自由に引きこなせてこそ真のミュージシャンだと思うので、精進あるのみです。

いかがでしたでしょうか。
今回はFalling Graceという1曲に絞り、構成についてまとめてみました。

もちろんこれは私の1解釈にしかすぎません。JAZZとはもっと自由であり、自由に解釈して良いものだと思っているので、他の解釈もあると思いますが、「こういう風に曲を見ている人もいるんだなぁ」とそんな感じで軽く思っていただけると嬉しいです。

マニアックな内容でもあるので、「ここはこうじゃないか?」などご指摘なんかあればコメントいただけると嬉しいです。

またBlogもやっていますのでよかったらそちらもみていただけると幸いです。

本日もご拝読ありがとうございました。

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マンタさん
平日はスタートアップ企業の社員、土日はたまにミュージシャン。読書や芸術、ITネタからガジェットまで興味は尽きない変人。