のろけ話は酒のアテ
私は付き合って8年になる彼氏がいる。生まれて初めてこんなに長く1人の人と一緒にいる。私の彼は植物のように、いや「まりも」のように普段全然喋らない。
おしゃべりな私と良く一緒にいられるね。と私をよく知る人たちからは驚かれる。
私も驚いている。もやは彼は人間ではないのかも知れない。得体の知れない人である。
そんな彼を飽きっぽい私は過去もこれからもとっても愛おしく思っている。そして時にそれは傲慢な所有欲に似たものにもなる。そんな事を知ってか知らずかいつも私のまりもさんはふわふわと浮いているだけ。何もしてくれないし、期待しても特に何かをしてくれるわけではない。つれないのである。
我が家のマリモさん、有機物ではある。と思う。が、欲もそんなになさそう。えらぶったりもない。何かしてくれるようでいて、何もしてくれない。付き合い始めた時は出かけるのも嫌い、お互いの友人を紹介し合うなんてもってのほか、予約しないと入れない店に行くと苦痛を訴える。そんな彼に対して不満はエベレストのように高く険しくなっていた。そして、私の友人にそのことを愚痴っていると不思議と我が友たちは私よりマリモの肩を持つようになっていく。なんなのだ、友人たちよ!私より会ったことない意思もあるかないのか分からないこと男の肩を持つのか!!(怒りというより驚き)
美味しいものを食べるためなら、千里の道も本気で厭わない私からすると予約するなんて、呼吸するくらい自然な事なのに、彼には半径1メートル以内に人がいるだけで苦痛なのである。なので、彼が嫌がらない程度においしくて混んでいない店を探す私の嗅覚は恐ろしく鋭くなった。そしてある程度理解のある私(適応能力は高め)はそれなりにある交友網から美味しいものを食べに行けばいい。と今は割り切っている。
2人で食べに行く居酒屋の飲みはお通夜のよう。最初はそんな食事が私も辛かった。しかし、今はその静けさがかえって心地よい。たまに興が乗っておしゃべりになる彼を見るのも悪くない。そんな風に私とまりもさんとの生活は続く。とても愛おしく、幸せに溢れた日々。特別な事は起こらない、けれども毎日が特別。そんな日々。
そんなまりもなのですが、時に彼を見直す、惚れ直す瞬間がたまにくる。
そりゃーもう、気持ちがすんごく盛り上がる、恋に落ちる瞬間である。今のところ、年に一回くらいあるこのキュンが昨日起こった。
うちの近所にはとってもうるさいシバ犬がいる。手のかかる困った柴君で私は手のかかる子ほど可愛いので吠えているのも気にならない。しかし、隣人として気になっている事がある、飼い主が犬に対してかなり横柄な叱り方をするのである。
夜中にバシバシ何かを叩く音がすると私はずっと気になっていた。そして、うちのまりもさんも。優しいんです。うちのまりもさん。
ここ数日、その隣人が棒のようなものでバンバン叩く音がしていて、暗くてよく見えまいけどもしかしたら犬を叩いているのかも・・・と不安に思っていた。
私はこの自分が飼っているわけではない柴君を愛していた。それはもう自分の子供のように。餌もあげられない、散歩に連れていくわけでもない、ブラッシングしてあげるわけでもない。でも私はしょっ中語りかけ、柴君も私に答えてくれていた。と思う。
その日もすごい勢いで泣いていた我が子(犬)とバシバシ何か固い棒のようなもので叩いている音、犬の叩かれた時にだす悲鳴は聞こえてこないので叩かれていないのかも知れないけど・・・そんな時うちのまりもさんが立ちあがったのです。
窓を開け、外に向かって普段は出さないような声を出していった!
「叩くのやめてください。」「かわいそうでしょ」
彼が言わなかったら私が言っていたかも知れない。
でもやっぱり女に言われると逆上する爺さんがいるのは否めない。自分の家だし、嫌がれを考えると私がしゃしゃりでる幕ではないのである。
私はこの最愛のパートナーが声を上げてくれたことが震えるほど嬉しかった。
その後爺さんは「はいはい」と言って家に帰っていったらしい。
その後、私はうちの子(私だけが思っている)にひそひそ声で話しかけた。
「怖かったね。でも、泣いても仕方ないからもう寝なさい。いい子いい子」
その後、柴犬はなく事なく私はほっと胸を撫で下ろした。
そして、横で眠る我が家のマリモ氏に愛おしさと感謝とこの人はいい人だという安心感と共に眠った。
間違いなく、うちのダーリン世界一。の今年のハイライトNO1である。(当社比)
普段、何もしない(語弊あり)マリモ氏ですが、この人のやる時はやる。の姿勢に私は骨抜きなのです。
聞かれてもいないけど昨年のNO1は、徘徊しているおじいちゃんに話しかけ家まで送ろうかと言っていたこと。
この人のこの人はやばいかも、という危機察知能力はすこぶる高い。
この時も警察に繋いで家に帰ったのだけど、こういう時のやる時はやるうちのマリモ最高!なのである。
誰得?って私に得いや徳しかないだろう。という惚気話を書く場所を持っていて良かった。
私はうちのダーリンが大好きである。
もう、それはもう、全幅の安心と信頼とアフラックやアルソック以上の安定、安全を彼が持っているからというよりは時折(年数回)の垣間見える能力の高さから
勝手に脳ある鷹を連想してしまう私の単純さと素直さによるからかも知れない。
恋は盲目という。私も本当にそう思う。
この心優しいうちのマリモは私の大切な大切な相棒であり、味方。
そして、いざという時にはやるのである。
とはいえ、G(夏に出てくる黒光りして飛ぶ素早いやつ)は苦手でも、私プルプルチワワのように震えて、眠れなくなる彼のためにいつでもスナイパーのようにGをヤるだろう。でも、それは彼が私と一緒にいる意味を噛み締めてもらうための儀式であり。
年に数回訪れるキュンのお礼だということを今も彼は知らない。