よそ者が地方で地域webメディア(ローカルメディア)を始めて5年経ったらこうなった。
(2023.8.24更新)
こんにちは。香川のあれこれを配信する地域webメディア・ガーカガワ編集部の原田と申します。
実質ひとりで運営していますが「編集部」です(笑)。こう名乗るのは何も大きく見せようとしているわけではなく、とある理由からなのですが、この理由については後ほど書かせていただきます。
◆香川の地域情報サイト「ガーカガワ」
僕自身は兵庫出身で香川には縁もゆかりもありません。前職が転勤族だった関係でフリーランスになる際にどこに住む?問題が勃発、妻が愛媛出身なのでお互いの実家にちょうど良い距離感だった香川県高松市に移住しました。
そんなわけで、知り合いもほとんどいないから当然なんのコネもなし。フリーランスなのでそれほどお金もかけられない状況だったのですが、せっかくだからもっと香川を知りたいと、2017年5月にガーカガワを立ち上げました。
それから6年。結論から先に申し上げると、現在では主に以下のような状況になっています。
月間PVは単体で50万ほど、他媒体掲載分も合わせると月間80万PVぐらいの規模感?
Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。Yahoo!、SmartNews、LINE NEWS、Googleニュース、aumoほか記事掲載中。
web制作、冊子デザイン、観光系・人物・商品などの撮影、SNSの投稿代行、他媒体への記事執筆などの受注あり
シンポジウムなどのパネラーや講演、各種ワークショップなどの講師、地域団体などの評議員・役員就任、新聞やラジオに出演
自治体の首長、議員、職員、地場の社長、メディア関係者、旅行会社、大学教授、先生、学生、モデルなど多数交流あり
などなど、もちろんうまく行かなかった事も多いのですが、そこいらの一個人としては悪くないんじゃないかなと思っています。
今回は、久々のnoteです。
5年の節目に備忘録的に書き残したかったことと、随分前から地域webメディアの運営について教えてほしいというご相談も多くて、いつかはまとめようと思っていました。
ただし、僕自身は検索順位がどうとかPVがどうとか、実はあまり考えていなくて、直接的な広告収入も、取れればラッキーぐらいにしか思っていません。
なので、SEO的な話やマネタイズの方法みたいなテクニカルな話は書けないと思います。
もっと行動レベルでガーカガワは裏でどんなことをやっているのか、今の状態まで持って来るのに何をやってきたのか、人との付き合いを広げてどう収入に結び付けているのか… こんなことをまとめてみたいと思います。
教科書的な話しにはならないですが、これから地域webメディアを始めようとしている人の参考になれば幸いです。
【初期方針】まずは数字は考えない!自分がどうなりたいのかを考えた。
よく「地域webサイトはマネタイズが難しいよ」なんて話を聞きます。考えてみたら当たり前のことで、エリアが限定されていて分母が少ないから何百万、何千万なんてPVはそれほど期待できない。PVが取れないからアドセンスを貼ってもアフィリエイトを貼っても収益化は難しいのです。
タイアップ記事などの営業をしても「お宅のPVどれくらい?」なんて聞かれて撃沈ですしね(笑)
そんなことは最初から予想できたので、僕がこのガーカガワを始めるにあたってPVや直接的な収益はとりあえず意識しませんでした。
実はガーカガワを始める前に、1年ほどある企業が運営する地域webメディアのコンサルタントに入ったのですが、高額のFCに入ったものだからまず収益を上げなきゃいけない。僕がいくら「まずはコンテンツを充実させよう」と言っても目先の広告営業に走って轟沈の日々、社員さんはかなりストレスを貯めていましたね。
なので僕が最初に決めたことはたった2つだけ。
ひとつ目はとにかくたくさん取材してクスッ笑いを入れること。だって、PVを稼ぐためだけに閉店・開店情報ばかり集めたってつまらないじゃないですか? 取材先のおもしろいポイントを探して、多少ツッコミやイジリも交えながら、読む人が楽しくなるような記事にしようと思いました。
ちなみにうちでは基本的に閉店情報は扱いません。チェーン店ならまだしも、個人店が閉店するにはいろんなネガティブな事情がありますからね。当事者からすればそっとしてほしいという心情もあると思いますし、そもそも連絡取れないから掲載許可が取れませんしね。
そして2つ目は写真画像にはこだわること。
僕は最初から個人ブログをやるつもりはありませんでした。あくまでもメディアを作りたいと。
じゃあ、個人ブログとメディアの違いって何かと考えたら、どこかしらプロっぽい要素を盛り込まないといけないと思ったんですね。
ちょうどそのタイミングで「インスタ映え」なんて言葉も出てきて、ネット全体の写真画像のレベルが一気に上がったんですよね。もはや素人が適当に写した写真だと貧相に見える。
それと、将来的にはやっぱり収益は取りたいので、「原田は写真がうまい」というポジションは取りたかったのです。
おかげで、現在では商用撮影やフォトライターとしての受注も毎月入ってくるようになりました。
写真はね、ぶっちゃけそこそこ高性能なカメラを買って、いいなぁと思う写真をマネしながらとにかくたくさん撮れば、自然にうまくなります(笑)
以上2点に共通することは、まずはコンテンツを重視して媒体としての個性を出そうということ。それと、自分の生き方としてどうあるべきかを反映させることですかね。「お金を稼ぐこと」以外の自分にとっての目的をしっかり考えてみましょう。
お金を稼ぐことを考えても、どうせ最初からは儲かりませんから(笑)
【人脈を広げるコツ】取材先行、とにかくいろんな人に会うこと!
冒頭にも触れましたが、僕は元々兵庫の人間なので香川には縁もゆかりもコネもありませんでした。そのうえ、そもそも初対面の人と話すのが苦手。なので、振り返ってみると自分でもよくやったなと思います。
最初は数少ない友人知人にお店や会社さんを紹介してもらったり、いきなりカフェなんかに行って「ブログに書いていいですか?」なんて、メディアを目指しているくせに自らブログと紹介するチキンな状態だったり…
お店に電話してアポ取りしだしてからは、ガーカガワと言ってもみんな知らないのでいちいち媒体の説明をしないといけない…
そこである時めんどくさくなって「ガーカガワ編集部の原田と申します。実は取材にお伺いしたいんですが…」と、言うようになりました。「編集部」と名乗るだけで雑誌かメディアかな? と察してくれますし、取材と言われて喜ばない人はあまりいませんからね。
電話の第一声も「お忙しいところすみませ~ん!」なんて元気よくやったら変な営業電話かと思われますからね、少し声のトーンは下げた方がいいみたいです。
そして、時間帯もちゃんと選んでお店の人とお話ができるよう努めました。よく地域メディアの人が無断で掲載したり、帰り際にささっと掲載許可もらってるなんて話を聞きますが、それってほんと勿体ないですよね。
インタビューするつもりでいろいろお店の人と話した方が親しくなりますし、そこから次の取材先を紹介してもらったり、あるいは「ちょうどホームページ作ってくれる人探していたんだよね~」なんて、思わぬところから仕事を受注したり… こうなると、メディアの知名度とか関係なくなりますよ。
ある程度メディアとして地域に浸透したら(うちの場合はスタートから3ヵ月経った頃かな?)県民ライターや企画ものの出演者募集などをweb上やSNSなどで行って、いろんな人に参加してもらうようにしました。
今ではモデルさんも多く出演してもらっているのですが、最初は香川で頑張る女子を紹介する「カガワガールズ!」という企画で募集したのがきっかけです。カガワガールズ!企画は今でも人気企画として続いていて、モデルのオーディション的な使い方もしています。
ここでも収益求めなくてよかったと思ったのですが、収益媒体だとギャラが発生したりでお金目当ての人しか集まってこないんですよね。「みんなで楽しい事やろうぜ!」というノリだからこそ、いろんな人たちと楽しくかかわり、人脈も広がるのだと思います。
収益媒体だとエラい人にペコペコしないといけませんしね、うちでは市長も教授先生も学生さんも駄菓子屋のおばちゃんも(笑)みんな立場を捨ててフラットに接してくれています。
臆病にならずに会える人にはどんどん会っていく。そうすれば自然と人脈は広がっていきます。
そもそも「あなたのお店や会社をタダで広報しますよ~」という相手にメリットがある話なので、堂々としてればいいんです。もちろんこちらも「取材させていただきます」という気持ちが大切なのは言うまでもありませんが…
それと、これが意外とバカにならないのですが、ある程度メディアが知られるようになると、広告会社やプロモーターさんなどからプレスリリースが届くようになります。こういったものに取材に行って、広告会社さんや他のメディア(テレビ局や新聞社なども参加されます)の方たちと仲良くしておくと、いろいろ情報が入ってきてラクになりますよ。
【拡散術】なぜ個人運営なのに大手媒体に記事配信できるのか?
これは本当に偶然というかラッキーだったと思います。
まず、ガーカガワを始めて半年ぐらい経った頃、突然Yahoo!ライフマガジンさん(現在はサービス終了)からご連絡をいただき記事提供開始。そして、その実績が買われたのか、SmartNewsさんやaumoさんなどの大手メディアから続けて記事掲載のオファーが届きました。
現在もとある大手ニュースサイトへの掲載準備中なので、早ければこの8月にもまた提供先が増える予定です。
有難いことに、Googleニュースさん以外は、すべて先方よりお声がけいただいたものです。
僕も最初はキツネにつままれたように気分で、なんなら新手の詐欺かな… なんて一瞬疑ったのですが、担当の方と親しくなるにつれ、なんとなくうちなんかを選んでくれた理由が分かったんですね。
まず、今はタイミングが良いようで、地方の情報を各社が重視するようになってきたという背景があるそうです。そこで担当の方が「香川 地域情報」などで検索して地域メディアを探す中で、しっかり運営ができていること、取材記事が中心であること、記事にそれなりのクオリティーがあることなど独自の基準で選ばれるそうです。
Yahoo!さんは今のところ公募はされてないようですが、他の大手メディアだとこちらサイドから提携申請できるものもあるそうなので、ある程度メディアが育ったらチャレンジしてみるのもいいですね。
ちなみに大手メディアさんへ記事掲載することでデメリットも実はあります。それは、本来ガーカガワで見るはずだった記事が他媒体で読めるということで、PVが食われるというものです。
ただ、取材元(お店など)からすれば、たくさん記事を読まれることに越したことはないので、すべてひっくるめてどれだけ読まれるのかを気にする傾向にあります。
また、単純に大手メディア経由でガーカガワを知ってもらう事も多いですし、特に地方だと大手の名前を出すと「すげーっ!」ってなるので、僕的にはかなり有難いと思っています。
【収益の話】そうはいってもお金はほしい。収益へのつなげ方について
聞かれることも多いのでいちおうサイト上には広告についてのページを作っていますが、実はタイアップ記事などの広告はあまり入ってきません。営業をかけていないという事もありますが…
投げ銭システムやアドセンスを貼り付けたり、たまにアフィリエイトで商品紹介もしていますが、せいぜい月数万円レベルです。
普段から香川県内を西に東に取材していますので、交通費や取材にかかわる経費を考えると、ガーカガワ単体ではずーっと赤字です(笑)
でも、ガーカガワがあることで収益につながるケースは割と頻繁に… というか、毎月そこそこあります。
例えば…
ホームページの制作、維持管理、更新、バナー制作等
観光系撮影(旅行会社、他媒体、観光施設等)、商用撮影(商品写真、店舗写真等)、人物撮り(宣材、プロフィール等)、動画制作・編集
SNS投稿代行(自治体、公益法人、企業)、冊子デザイン(社団法人、企業等)
他媒体、企業サイト向け記事執筆
自治体や企業の事業で撮影やライティングなど、ワークショップの講師
などです。ホームページ制作だと1本数十万円、商用撮影や他媒体執筆は1件5万円~でしょうか。単発の依頼のほか、年間契約などもあるのでフリーランスとしては十分な利益が出ています。
他にも本業の仕事なんかもあるのですが、あえて上記の例を挙げたのには理由があって、実はこれらは、地域webメディアをきちんと運営したら自然と身に付くスキルばかりなんですよね。怠けずにすべて自分でやればどこかの専門学校なんて通わなくても、実戦で覚えられるので、ある程度お金が取れるレベルになったらきちんと値段をつければいいだけです。
本当にそんなこと可能なんですか?
とよく聞かれるのですが、例えば写真なんて「プロを雇うほどじゃないけどそこそこ綺麗な写真を撮ってほしい」という需要は案外多いものです。飲食店なんて食べログ用の写真とかほんと需要ありますから。プロだと数万円取られるのを例えば最初は5千円や1万円で撮ってあげるとかなり喜ばれます。実績を積めば単価取れますから最初はプロとアマの隙間を狙えばいいのです。
仕事はだいたいこれまで取材した先やその紹介など「人のつながり」で依頼されることが多いのですが、普段から「カメラマンもやってます」みたいなことを雑談の中で言っておくといいです。売り込むのが苦手なら、できることを一覧にしたチラシでも作って「いちおう取材先には配ってますが、興味があったらでいいですよ」と軽く渡しとけばいいんです。地方だとそれくらいがちょうどいい。
先に「取材」という利益を相手に与えているのだから、中にはちゃんと恩返ししてくれる人もいますから(笑)
むしろ、飛び込み営業なんかで苦労している企業さんこそ、地域webメディアの運営はメリットが大きいと思うのですが、どうなんでしょうね。
【最後に】結局は、あきらめずに続けるのが最大のコツ
と、つらつらと5年経ってどうなったのかを書きましたが、自分自身で思い返しながら書いてみても、実はたいしたことは何もやっていない(笑)
でも、ヘタなりに5年も続けるといろんなつながりも出来てくるし、広がりも出てきます。
人付き合いで悩むこともあるかもしれませんが、ネガティブなことは思ってもいいけど他人には話さない。SNSでこんな酷い目にあったみたいな投稿はしない。できれば人様を褒める(しかも本人のいないところで)。
収益を出すのが第一義になってしまうと半年や1年ですぐ畳んでしまうけど、実はそれからが旨味の出てくるのが地域webメディアの特徴です。肩ひじ張らずに、取材を口実に遊ぶみたいな気安さでライフワークとして気長にやるのがうまく行くコツなんだろうと思います。
本当はもう少し細かい部分まで踏み込んで書こうと思ったのですが、これから取材があるので今回はこれくらいにしておきます。
地域webサイトにご興味のある方は、ちょっとした質問ならいつでも答えますし、しっかりやりたいなら「エリア運営者募集」みたいなこともやっています。
よかったらガーカガワ本編もぜひご覧ください。
おしまい。
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