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キャンプ総括2022

前日に監督が退任を発表するという異例の形で始まった2022年の阪神タイガースの春季キャンプを、個人的に振り返ってみたいと思います。

注目点①二遊間の競争

昨季ショートのレギュラーだった中野が故障により調整遅れとなる状況の中、健康体の二遊間がほとんど一軍に招集された。さらには、キャンプ早々にセカンドのレギュラーだった糸原も離脱。昨年のレギュラー2人がともに消えるという絶好のチャンスだったが、正直アピール不足に感じた。
筆頭は一軍で最も実績のある木浪だったが、攻守に結果を残せていない。本人は手応えを口にする部分もあり、一軍での実績もあるため、今後の巻き返しに期待したい。対抗の小幡も出だしこそ良かったものの、腰の違和感もありその後はあまり目立たず。ポテンシャルは誰しもが認めるところであり、あとは結果のみ。一軍キャンプに参加した二遊間では唯一の右打ちの熊谷も、広島・菊池直伝の打撃と守備で奮闘しているが、やはり課題の打撃でもう一押しが欲しいところ。ライバルは全員左打ちなので、特に左投手を打てればチャンスはあるだろう。髙寺は打撃のセンスはピカイチであり、打撃だけを見ればこの争いを勝ち抜く力を持っているが、守備走塁や体力面を考慮するといきなりのレギュラー奪取は難しいか。それでも、行けるところまで食らいついてほしい。遠藤はパンチ力はあるが、攻守にまだ課題が多い印象だ。
結論から言うと、現状のままでは中野糸原の牙城を崩すことはできないように見える。しかし、負担の大きい二遊間で小柄な2人に全てを託すのは怖い部分もあり、誰かが割って入るくらいのアピールは今後欲しいところである。

注目点②リリーフの穴埋め

絶対的守護神のスアレスが退団し、かねてより穴となっているリリーフ陣。ポテンシャルの光る投手は多く、このキャンプで結果を求めたが、こちらも正直アピール不足だろう。
監督の期待が大きかった湯浅は、ストレートの速さはあるものの決め球の精度に欠ける。スライダーのレベルが高いため、カウントを整えることはできるが、どうしてもフォークが浮いてしまうケースが目立っている。昨年後半にブルペンを支えた小川も、キャンプでは打たれるシーンが目立った。浜地もまだアピールに成功しているとは言い難い。
しかし、石井小野はかなり良く見えた。石井はルーキーイヤーの昨年は一軍では結果を残せなかったが、威力のあるストレートと特殊球のシンカー、緩いカーブと鋭いカットボールを操る投球で二軍では無双しており、今季のブレイク候補筆頭ではあったが、それに違わぬアピールを見せている。小野はしなやかなフォームから繰り出される速球が売りの投手だったが、制球難に苦しみ、今季はついに背番号が28から98に変わった。そこで、これまでのストレート偏重のスタイルから、カットボールやフォーク等の変化球も投げ込むスタイルへ変更。元々真っ直ぐの威力は十分で、そこに変化球も加えることで以前より容易にストライクを稼ぐことができ、内容のある投球を続けている。矢野監督からの期待は大きく、監督が今季限りと決まっている今年は特に小野にとって大事な一年となるだろう。
また、左腕の渡邉も面白い選手だ。ソフトバンクから新加入の左腕サイドだが、その変則的なフォームで左打者を中心に自分の打撃をさせず、キャンプでは無失点を続けた。このままいけば、開幕前の支配下登録は確実だ。
全体的にはまだまだ新戦力を探している最中と言え、安芸にいる小林齋藤二保らに加え、先発争いから移ってくる及川のような投手を含め、あらゆる投手に今後もチャンスが巡ってくると思われる。このチャンスをモノにする選手が現れるかに注目したい。

注目点③外野手争い

昨年苦しんだのが外野手、中でも両翼である。センターは近本で確定、ライトも佐藤輝でほぼ確定のため、争っているのはレフトということになる。
1番手は、最も年俸が高く、期待のかかるロハスである。両打ちだが、左打席の方が良く、対右投手では最も数字が残せそうだ。しかし、打球が上がってこないと数字もついて来ず、また右打席では特に安定感がないため、現時点では開幕確定とは言えない。
これに続くのが小野寺、島田、江越、糸井といった選手。特に右打ちの小野寺は貴重な存在であり、広角に打つ打力と守備力の面からも戦力化できるとチームにとって大きな選手だ。島田は左打ちの俊足であり、対右投手や終盤の代打からの守備走塁といった役割に期待がかかる。そしてキャンプでアピールしたのが江越。毎年期待されながらも打撃不振が続いていたが、今季はオリックス・杉本との自主トレや藤井康コーチの指導等の結果、スイングそのものから改造し、以前は全く対応できなかった球にも対応できつつある。対左はもちろん、元々守備走塁では優秀な選手なので、このまま行くと開幕一軍を十分狙える位置にまで浮上している。糸井は大ベテランながら精力的にメニューを消化し、キャンプMVPにも選定された。優勝には間違いなく糸井のバットが欠かせないだろう。
その他、安芸にも井上豊田といった若手や陽川髙山ら一軍実績もある中堅組が控え、また大山が守るプランもあるため、オープン戦はもちろん、シーズンに入ってからも競争が続くポジションと見られる。

注目点④開幕ローテ6番手

阪神は先発投手が非常に豊富であり、キャンプ前から既に青柳秋山西伊藤将ガンケルの5人がローテ確定の位置にある。したがって、空きは僅かに一つだ。ここを争う投手は及川藤浪村上、そしてルーキーの鈴木桐敷であった。
結論から言うと、キャンプ終了時点でほぼほぼ藤浪と桐敷の一騎打ち状態まで絞られている。毎年復活を期待されている藤浪だが、ここまで安定感のある投球をしており、投げた瞬間からボールとわかるような球が大きく減っている。そのため、多少打たれることはあっても、投げている球のレベルからしても大崩れは考えにくい。一方の桐敷は非常にまとまった投手であり、ストライクを取ることには苦労しないタイプ。打者の左右を問わず内角に投げきることができ、活躍するための根拠を既に持っている。監督からも高評価で、先発6番手かもしくは中継ぎでいずれにしても開幕一軍は確定クラスだ。
ライバルであった及川は安定感に欠け、1イニングを抑えるために要する球数がかなり多い。その辺りを踏まえると、今すぐ一軍で先発として結果を残すことは難しそうだ。村上は一軍レベルで通用するストレートを安定して投げられるかが課題。変化球のレパートリーや制球には問題がなく、真っ直ぐ次第で一気に飛躍する可能性を持つ。鈴木は当初の評価通り、ストレートの威力やカーブは光るものの、制球の改善が当面の課題だ。
総合的に見ても阪神の先発投手のレベルは非常に高く、阪神の最大の強みであるとも言える。髙橋の復帰がいつ頃になるか、そこまでに6番目の投手がどのような結果を残すかで、その厚みがさらに増すかどうかが決まってくるだろう。

この他、4番打者や正捕手などの争いも注目されているが、個人的には、ここの争いに加わっている選手はいずれも「活躍してもらわないと困る」選手であり、どちらがどう使われてもチームとして大きく変わってくることはないと考えているので、ここでは取り上げない。

今年のキャンプの総括としては、正直期待していたほど若い選手のアピールが見られなかったという印象だ。一方で、以前から中心として出場していた選手のレベルはさらに上がっており、チームとしての成熟度合いを感じさせる。立場が実質的に確約されている選手も増えてきたが、それ以外のポジションではオープン戦はもちろん、シーズンに入ってからも常に競争が続く。こういう立場にある選手が一人でも多く戦力として貢献してくれれば、優勝へと大きく近づくだろう。
今回はキャンプの総括として記事を書いたが、キャンプはあくまで通過点。むしろこれからが本番だ。今後も活発的な競争とその結果得られる勝ち星が増えることを祈って、記事を締めたい。ご覧頂きありがとうございました。


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