虎の最重要人物?
最近あまり名前を聞くことはないが、今になって僕が改めて凄いと思う人物がいる。誰かと言うと、和田豊だ。長年阪神ファンをやっている人なら必ず知っている名前だろう。選手としてプレーしていたのは20年以上前、監督を辞めてからももう6年が経過する今になって急になぜ?と思われる方もいるかもしれない。でも、時間が経った今だからこそ思うのだ。
現役時代の和田は阪神一筋17年、通算打率.291、1739安打をマークした巧打のセカンドだ。ただし、残念ながら僕は彼の現役時代をリアルタイムで見てはいないので、あまり語れることはない。僕がイメージとして強いのは、やはり監督時代だ。2012年に監督に就任すると、初年度こそ5位に終わったものの、そこから3年連続でAクラス入り。中でも2014年はCSファイナルステージで巨人に4連勝、日本一こそ逃すも最後まで粘りの戦いを見せたことは印象深い。しかしそのような実績とは裏腹に、当時若かった僕の和田監督時代の阪神といえば、良く言うと堅実、悪く言うと地味だと感じていた。後任監督の金本が派手だったから余計にそう感じる部分もあるかもしれない。とにかく、いつも同じような選手で小技を用いて僅差を中継ぎで逃げ切るような野球をしていたことばかりが記憶に残っている。若手を使わなかったなどという批判もよく見受けられる印象があるし、現に当時の僕もそのようなことを思っていた。
しかし、改めて当時の阪神を振り返れば思う。あの戦力でAクラス入りし日本シリーズまで出たのはすごくないか?と。しかも、実はけっこう若手も使っていないか?と。あの頃の阪神は確かにマートン、ゴメス、メッセンジャー、呉昇桓と外国人選手は大活躍していた。ただその一方で、5年10年前のドラフトの失敗や積極補強で若手をあまり使っていなかったことが災いし、鳥谷や能見などごく少数しか生え抜き選手の主力はいなかった。また、極端に高齢化が進んでいた。21世紀の阪神ではかなり戦力の薄い時代だと言えるだろう。
その中でも、和田監督はけっこう若手を使っている。代表的なのは上本や大和だろうか。実は抜擢され始めた時点で彼らは既に20代後半に入っており、今の阪神の年齢層を見るとさほど若くないように感じるが、当時の阪神で考えれば本当に若虎だ。さらには藤浪、大卒ルーキーだった梅野や江越も積極的に使っていたし、就任1年目の開幕スタメンにはドラフト1位ルーキーの伊藤隼太も使っていた。岩崎を開幕ローテに抜擢したこともあった。他にも歳内や松田、岩本なども多く起用。当時の阪神の若手を思えばわりと色々な選手を使っているし、少なからず後の阪神に生きているように思う。
いや、僕が今回書きたいのは「和田監督は実はけっこう頑張ってたよね」という話ではない。注目したいのは監督退任後だ。彼は2016年からフロントに異動し、現在はTA(テクニカルアドバイザー)という役職に就いている。役割としては特命スカウトしてアマチュア野球の視察をしたり、トラックマン等のデータ分析を行ったり、現場で指導をしたり……要するに多岐にわたっている。二軍戦の中継を見ていると鳴尾浜球場のスタンドで彼の姿が見られることもあるので、プロスカウト的な仕事までしているのかもしれない。また、子どもに野球を教える「タイガースアカデミー」の特別顧問まで任されている。とにかく、球団にとって重要な部門や事業の至るところに一枚噛んでいることがわかる。阪神に入団した1985年から選手として活躍し、コーチとして実績を残し、監督として奮闘し、そしてフロントに移ること37年間、ずっと阪神タイガースに貢献し続けている。これほどの人物は他に見当たらないのではないか。だから僕は今になって「和田豊はすげえ」と思うのだ。
ただし、フロントに異動してからはなかなか仕事ぶりや貢献が表に出てこない。それこそ現場で指導を行った時やスカウトのコメントとしてくらいしか。もちろんそういう役職だから仕方ないのだが、どのようなことをしてどのような貢献をしているのかもっと知りたい。ということで、もしメディアの方が読んでおられるのであれば、ぜひ一度特集してみてください笑。
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