熱帯アジアの美しき野生ウシたち。
皆さん、おはこんばんにちは。今回の小話のお題は、アジア熱帯域を元の住処とする野生のウシ科たちの中から、私が見てきた種類についてです。是非最後までご覧ください。
今回の写真は、特記事項がない限りベルリン動物園(Zoo Berlin)で撮影したものです。
1.最大の誉高き野生牛。
140種近くが存在するウシ科の中で、最大の体躯を誇る。それがガウルという動物です。南アジアと東南アジアの大陸部の森に棲息していますが、インドヤギュウという別称があるように、インドが最大の棲息国です。インドと周辺国に暮らす基亜種インドガウルと、インドシナ・マレー半島の亜種ラオスガウルに分かれていますが、諸説あります。
オスは喉の肉垂や肩のコブがメスよりも大きく発達するけれども、私はいまだにオスに巡り会えていません…。嗚呼、いつかは見たい。
日本では、5年前まで横浜の金沢動物園という所で飼育されていました。飼育が終わる前年、私は国内最後の1頭、メスのイチゴに一度会ったことがあります。間近に迫るその姿は、メスでもかなりの迫力だったのを覚えています。
2.小柄といって侮るなかれ。
インドネシアの東部に浮かび、動物地理区では東洋区とオーストラリア区の境目あたりに位置するスラウェシ(セレベス)島。その島にしかいない動物は多数いますが、そのひとつがローランドアノアという動物です。
ローランド(低地)という名があれば、高地に棲む種もいるんだろうな…、とお思いの方は多分何処かにいるかもしれませんが、スラウェシ島中央部の山岳地帯には、やや小型のマウンテンアノアという種が棲息しています。ただし、ローランドアノアと同種とする説は根強いです。
小柄なその身に、気性の激しさを併せ持つといわれているローランドアノア。日本では、10年ほど前まで金沢動物園で飼育されていました。
3.雌雄異色、でもどちらも良い感じ。
東南アジア大陸部および、ジャワ島とボルネオ島のジャングルに潜むウシ。それがバンテンです。ジャワ島に棲む基亜種ジャワバンテン、大陸に棲む亜種ビルマバンテン、ボルネオ島に棲むボルネオバンテンの3亜種に大きく分かれています。
バンテンは基本的にオスが黒っぽく、メスがオレンジっぽい色をしています。ただし、ビルマバンテンはオスもオレンジ色っぽいです。
日本では、かつて東京の多摩動物公園にて1960〜70年代頃に飼育されていたことがありますが、現在はいません。
4.おまけ。家畜としての方が有名なあの獣。
熱帯アジアを中心に、南欧や豪州等色々な地域で家畜として親しまれているが、その元となった野生種も当然いる。それがアジアスイギュウです。日本では、沖縄で観光用の水牛車を引く動物としてお馴染みですね。
野生種はインドやその周辺国の湿地帯や森林におよそ3000と〜4000頭ほどがいるとされています。ですが、家畜が野生化したもの、あるいは家畜と野生種との交雑等いくつかの説があってはっきりしていないそうです。
5.最後に。
今回ご紹介した野生のウシたち。実は彼等は何れも絶滅の危機に瀕しています。
原因としては、肉や角等を目当てにした密猟や家畜のウシからもたらされる伝染病、住処である森が大規模に開発され、森の面積が狭まったり分断されたりしていること等が挙げられます。特にバンテンは、ここ20年間での減少具合が激しく、今年は絶滅危惧ⅠB類(EN)から絶滅危惧ⅠA類(CR)に引き上げられているほどです。
日本に住む私たちにも、決して無縁な話ではありません。色々な食品や日用品の原料であるアブラヤシをはじめとした作物栽培用のプランテーションの拡大や、所謂南洋材と呼ばれる木材を得る目的の伐採。熱帯アジアで起こっている、野生ウシたちを追い詰めているそれらは、私たちの暮らしと繋がる話であるからです。彼等を守り切るために、できることとは何なのか。考えさせられます。
今回は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。