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宮崎駿はなぜ『となりのトトロ』を作ったのか
宮崎駿はあるインタビューで、
「はっきり言いたいのは、あの時代が懐かしいから作ったのではありません。やはり子どもたちがあの作品を見たのをきっかけにして、ふと草むらを駆けたり、ドングリを拾ったりしてくれないかなとか、もう本当にわずかになっちゃったけど神社の裏側にもぐって遊んでくれないかなとか、自分の家の縁の下を覗いてドキドキしてくれないかなとか、そういうことなんですよね」と語っていた。
映画の最初のシーンで、田舎の家に引っ越してきたメイとサツキが、家中のふすまを開け、部屋や納戸を見て回り、ドキドキ、ハラハラするシーンがある。別の場面では、台風がやってきて一晩中激しい雨風が屋根を打ち、メイとサツキが恐くて眠れないシーンがある。
子どもはそういうどこにでもあることに「ドキドキ、ハラハラ」する。それが子どもの感性を育てていくと考えているようだ。
現代人はスマホやネットを中心に生きていると言っても過言ではない。そのことにより、人の、特に子どもの心身に大きな影響を及ぼしていることはいうまでもない。
宮崎駿は、子ども時代のドキドキを描きたくて、そして現代の子どもたちに伝えたくて『となりのトトロ』を作ったようだ。
何が正しいと考えるかは人の価値観によるものだが、少なくとも自分が将来的に子どもができた時には、豊かな感性を養うことができるよう「ドキドキやハラハラ」する経験・環境を大切にしていきたいと思う。