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GG Pokerのユーザー数が大幅に減少している可能性-今後のオンラインポーカー市場について考察

記事のポイント

・2024年はGG Pookerのアクティブユーザー数が大幅に減少している可能性がある
・Poker Starsも減少しているが、減少率は相対的に小さい
・GGはユーザー数減少を補うためにレーキ引き上げ等のユーザーにデメリットのある施策を打ち出す可能性がある

Poker Starsの過疎化‐GG Poker一強の時代は続くのか?

Poker Starsの過疎化が著しいと感じる。昨年までは一定頻度でハイステークスリング卓が立ち、200NL Zoomは概ね24時間、500NL Zoomは日本時間の深夜-早朝に一定頻度で立っていたが、今年に入ってから卓が立たない時間帯が明確に増加したように感じる。
一方でGG Pokerの同時接続ユーザー数は15-20万人とStarsの10倍程度の数値が表示されている。1000NL+の卓も24時間稼働しており、オンラインポーカー市場の覇権はGGが握っているようにみえる。
Poker Starsはこのままユーザー数が減少し、GG一強の時代が続くのか。
そこで、オンラインポーカーユーザー数の長期トレンド、2018年~直近のステークス別のプレイヤー活動状況を整理し、今後のオンラインポーカー市場について考察してみる。

オンラインポーカーユーザー数の長期トレンド

Google画像検索で拾ってきた2007-2021年の主要オンラインポーカーサイトのユーザー数動向をみると、2003年のマネーメーカーWSOP優勝がポーカーブームに火を付け、2011年頃までユーザー数は大きく増加した。

一方で2011-12年頃から下落トレンドに転換。最大の要因は2011年4月に米国司法省が違法ギャンブルの疑いでPoker Stars等の大手サイトを提訴したこと(ブラックフライデー)だろう。これ以降、Poker Starsは世界最大の市場である米国からの撤退を余儀なくされた。
更に、2012年頃からSolverベースの高度な戦略が浸透し始め、StarsではOtb_Redbaron、Trueteller、LlinusLloveといったスタープレイヤーが台頭した。Solverの普及に伴い、Reg-Recのウィンレート格差が拡大した結果、技術水準の低いプレイヤーの退場速度が加速しポーカーエコシステムの均衡が崩れた可能性も指摘できる。

2020年頃にPoker Starsのユーザー減少トレンドは止まり、GG Pokerのユーザー数が増加した。背景として、コロナ禍における外出自粛・オンラインポーカー需要の高まりが考えられる。GG Pokerはコロナ特需に加え、2020年にPoker Starsが中国、台湾、マカオから撤退したことを好機と判断、マーケティングに力を入れ市場シェアを伸ばした。


意外にもGG Pokerの稼働量は今年に入って大きく減少
上述の長期トレンドには2022年以降のデータが含まれていない。直近データの利用は有料のようである。そこで、直近の動向を探るためにSmart handというオンラインポーカーのトラッキングサイトを用いる。
2018-2024年の各年におけるポーカーサイト・100-5,000NLのステークス別プレイハンド数上位10名の合計値を稼働量と定義。2024年に関しては7月までの数値を年率換算している。
Poker Stars とGG Pokerのステークス別のプレイヤー活動状況を下のチャートに示した。

ステークス別稼働量(Poker Stars vs GG Poker)

概観すると、Starsは全ステークスで緩やかに減少、GG Pokerはミドルステークス(100-200NL)が2023年以降減少。意外なことに2024年はハイステークス(500nl+)も含めて大幅な減少がみられる。

2024年におけるPoker Starsの100-5,000NL合計の活動量は前年比‐15%であるがGG Pokerは同-30%*と大幅に減少した。特に200nlに注目するとPoker Starsが概ね横ばいであるのに対し、GG Pokerは同-25%であった。
*2024年2月のデータマイニング対策影響調整後では-20%程(詳細は後述)

2020-2023年において、GGはパンデミックによる巣ごもり需要増、2020年Starsの中国・台湾・マカオ事業撤退、2022年ロシア事業撤退→Starsのロシア中国ユーザー獲得で市場シェアトップに立った。一方で2024年は主に下記3つの要因によってユーザー退出数が増加したと考えられる。
・2023年5月にWHOがコロナによる緊急事態宣言の終了を宣言しコロナ特需が消失
・Poker Starsの大型事業(中国ロシア)撤退=GGにとってのユーザー獲得要因の剥落
・マイクロ-ミドルステークスでは10bb/100handsを裕に超える高額レーキに耐えられないプレイヤーの顕在化

オンラインポーカー市場の見通し

GGはコロナ特需やStarsの一部市場撤退といった一時要因でユーザー数が増加した。しかし、一時要因消失後においては高すぎるレーキ負荷により、恒常的にユーザー退場数>増加数の構造になっている可能性を指摘できる。レーキ影響の大きい100-200NLの2023-24年における減少幅が大きいこともこの仮説を裏付ける要素の1つではないか。だとすれば近い将来、GG運営は下記のような施策を打ち出してくる可能性が高まる。
・レーキの更なる引き上げによるユーザー数減少の補完
・マーケティング、プロモーションコストの削減

実際、2023年にGG5000NL+のレーキが告知なく引き上げられる騒動があった(その時はボイコットによって取り消された)。レーキ負荷が原因でユーザー数が減少にもかかわらず、レーキ引き上げで収益を補えば、ユーザー数減少に拍車がかかる悪循環に陥るリスクも否定できない。

Starsの方も減少が続いており、かなり厳しい状況である。ただ、100-200NLの減少幅が緩やかなことを踏まえると、マイクロ-ミドルステークスであれば何らかの施策を導入することでユーザー数減少に歯止めがかかる可能性もゼロではないように思う。例えば、オンラインポーカー規制の再緩和が行われている米国市場の再拡大、米国市場とグローバルの接続(補足:現在、米国の一部の州でStarsをプレイできるが、対戦相手は米国内ユーザー同士に限定されているようであり、これをグローバルに繋げる)、PVIシステムの導入、ロシアーウクライナ紛争終了に伴うロシア市場の再参入、スマホアプリでのUI向上等、現実的に打てそうな施策とアップサイドは存在する。最近では一部ステークスでハッピーアワーを設け、レーキバック率が向上する施策を打ち出している。結果、500NL zoomがコンスタントに立っており改善の兆候も見られる(*500zの卓状況を見たところ未だにStarsのハイステークスに立ってる歴戦の猛者5-10人の多面打ち+Rec1-2人のような状況で持続的に立つまで改善するとは思えない)。
仮に上述のような施策を打ってユーザー数減少に歯止めがかかれば、200NLまでのミドルステークスで概ね24時間卓が立ち、少数のRecを囲いながらRegが稼ぎつつ技術向上を図るようなプラットフォームとして存続する、現状維持シナリオも想定できる。なお今年公表されたレーキバックシステムの改悪、やたらと多いシステムメンテナンス等の運営のポンコツぶりをみると、希望的観測かもしれない。

まとめると、GGは今後数年でシェアを落とし、レーキ引き上げ等を行うリスクがある。Starsの方は楽観的にみれば、ユーザー数減少に歯止めがかかる展開も想定できるが、このままだと減少継続。
オンラインポーカーはマネロン対策、本人確認、不正対策等のコンプライアンス関連費用、システム経費、人件費等、固定費が高いとみられる。ユーザー数が損益分岐点を恒常的に下回り、赤字化→事業存続が難しくなる可能性も十分あると考えられる。

本編は以上

*2024年2月のGGデータマイニング対策の影響について追記


読者の方から、今年2月にGGがデータマイニング対策を行ったため、2024年の活動量減少幅が過大に試算されている可能性について指摘を頂いた。その点を整理する。
2024年の前年比減少幅が大きかったGG1000NLの活動量を月次ベースでみると、2023年4月以降は減少傾向であったものの、ペースは緩やかであった。ただ、マイニング対策をアナウンスした翌月の24年3-5月は大きく減少。明らかにマイニング対策の影響が出ている。6,7月に関しては正常値に回帰しており、マイニングサイト側が何らかのカウンター策を講じたとみられる。

24年3-5月分に関してマイニング対策を調整するため、24年2月と6月データを用いて線形補完した。結果、調整前のGG1000NL活動量は2024年前年比-35%であった一方、調整後は-25%と減少幅が10%程縮小した。手間がかかるので、1000NLの調整幅+10%を全ステークスベースのものに適用して上に追記した。

GGユーザー数が減少している可能性が高いという結論は変わらないが、本記事公開当初は、減少幅を過大推計していたため、訂正・追記をさせていただいた。

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