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安倍晋三回顧録

 最長政権を担ったひとりの政治家の声・記録を、自分で読むべきではいないかと私は思う。この政治家は何をしてきたのか、どんな功績があったのか、問題点が何だったのか、それらについて本人はどう思っているのか。

巻頭の写真から、元首相である政治家のヨイショ本であるような印象を受けるかもしれないが、本書を実際に全ページ読めば、そうではないことがわかる。時系列に従って、当時どのように政治の決断がなされていたのかが、克明に本人の口から語られる。貴重な記録と言える。(あくまで安倍さんからの言葉という点は当然認識しておくべき)

 批評家ではなく、政治家として行動を重要視してきた、ひとりの男の生き様が伝わってくる。繰り返しになるが、本書は自分の目で全頁を読まなくてはならない。書評を読んでも、本書の良さは1/100も伝わらない。この国に生きる者として、そして過去10年を振り返るうえでも、貴重な資料である。


人物評がおもしろい。

トランプ:長電話が好きで、1時間以上平気で話すため、こちらから切らないといけない。安倍さんとは一緒にゴルフ。沖縄米軍基地をアメリカの領土と思って、基地の地価はいくらなのか?と聞いてきたり、最後まで政治家の枠に収まらない人だった。
オバマ:日本への不信感が至る所に見え隠れする。雑談を好まず、ビジネスライク。自分に興味のある用件のみを、淡々とこなすタイプ。個人的な関係を築けるような感じではなかった。

小池百合子:ジョーカー。上昇志向の塊。それ自体はいいが、では上昇して何を成し遂げたいのか、それが見えない。実務家としての能力が低いが、キャッチーな用語を用いたり、発信力・見せ方に能力を発揮する。

あのような最期の迎え方をされて、人々の記憶に残る形になってしまったのが、返す返す残念でならない。ご冥福をお祈りいたします。

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