LINE AI DAY 2021 開催に思うこと。LINE AI事業の振返り
「イノベーター x LINEが目指すこれからのあたりまえ」をテーマに7月15日開催予定のLINE AI DAY。多くのお客さま事例や、パートナー企業各社との協業を発表できることを大変嬉しく思います。私が担当する45分のキーノートでは語り尽くせないことも多そうなので、ここに至る過程や想いを書き留めておきたいと思います。思えば遠くまで来たもので…。
以下、長くなるのでイベントの登録はコチラ。
AIカンパニーを担当することになる前、Developer Relationsを担当してた私が、最初にB2BのAI事業に絡んだのはcompany.aiというスタートアップをNAVERが買収し、彼らの主要プロダクトであるFAQ応答型のチャットボットを日本市場向けに展開するにあたっての検討会議でCTOのイビンさんに突然呼びだされたのがおそらく最初。当初はいわゆる有識者的に助言をしていたつもりが、気づけば当事者になっていて、LINE BRAINと呼んでいた事業(その後LINE CLOVAに統合)を、エクサウィザーズに移られた佐々木励さんと立ち上げることになりました。LINEが開発に関与していた多くの機械学習、深層学習を応用した技術のうち、B2B2Cでお客様の体験価値を大きく変えるポテンシャルのある技術はなにか、という観点で社内スタートアップ的にあらゆる可能性を、UX的にも事業的にも試してました。
さらに過去を振り返ると、私が2016年にLINEに参画してすぐのころに手掛けたLINEカスタマーコネクトという、企業がお客様個々人と連絡を取りやすくするための、主にコンタクトセンター向けのプロダクトが今の土台になってます。その頃は自社内でAIベースの対話エンジン的なものや、テレフォニー系の技術が揃っていなかったこともあり、プラットフォームのオープン化戦略をとりはじめていたLINEにて、Messaging APIで接続可能な外部サービスをいくつか組み合わせて構成してましたが、現状では多くの部分を内製化することができています。なお、この頃にカスタマーコネクトを推進するにあたり必要な人物として引き抜いてきた飯塚さんは、AIカンパニーでCROをご担当いただいており、今回も最多セッション登壇回数でご活躍です。
AIカンパニーを担当することになる前、スマートスピーカーCLOVAのチームとは、CEK(Clova Extension Kit)での開発者エコシステム作りの観点でDeveloper Relations担当時代から連携してました。なかでも、LINE BOOT AWARDSではCEKと連動した作品をたくさん応募いただき、テキストベースでのチャットボット一辺倒だった初回のLINE BOT AWARDSと比べて、音声認識・音声合成技術を利用した作品のバリエーションが大きく広がりました。りんな風女子高生Botを作ってLINE BOT AWARDSに参戦されていた白石さんは、LINE AiCallのプロジェクトマネージャーとしてご活躍です。その頃CEKを担当していた細谷さんはLINE AiCallをはじめとする言語コミュニケーション関連のプロダクト責任者を、事業全体のとりまとめをしていた和波さんはAIカンパニーCOOをそれぞれご担当していただいてます。和波さんにはSoftbank連携の窓口も担当されており、今回はSpecial SessionでSoftbankキーパーソンお二方と対談の予定です。また、Developer Relations仕切りのLINE Developer Dayで超絶玄人研究者向けのセッションをやっていた戸上さんは、ご自身も信号処理を専門とする研究者でありながら、AI開発室全体の責任者をご担当いただいております。
OCRについては比較的歴史が浅く、Computer Vision系の事業責任者をしている赤石さんを中心に少数精鋭チームでプロダクトと事業を成長させてきました。難読文字のCompetitionで優秀な認識精度を誇っていた要素技術をベースにしていることから、複合機でスキャンしたお行儀の良い画像データだけでなく、エンドユーザーがスマホで撮影するような場面でも、比較的安定した認識結果を返すことができ、スマホ完結の本人認証を実現するeKYC領域においても柔軟性の高いユーザー体験を提供できています。また、1年がかりで口説き続け、今回初登場となる井尻さんをComputer Vision Labのマネージャーとしてお迎えし、画像・動画関連についてもよりアグレッシブに研究開発や事業を進めて参ります。
LINEを利用したコミュニケーションのあり方の多様化や、スマートスピーカーのためにつくりあげてきたAI技術を、より広く活用していただくべく外部に提供してきた我々にとって、初期から関心を寄せて実証実験に関わって下さったり、学習データを提供いただいたお客様や、パートナー企業は非常に重要な存在です。2019年のLINE Conferenceで緊張感溢れるAIによるレストラン予約のプロトタイププロジェクトDuetのデモをCSMO舛田さんが実演し(一度失敗したときはステージ裏で超絶ドキドキしてました)、その後早々に協業を開始することになったエビソル社とは、予約台帳システムebicaとLINE AiCallを連携させたAIレセプションを構築し、着実に店舗向けの導入を進めています。End to Endな音声認識エンジンNESTの認識精度向上にご協力いただいたdialpad社とも、より広い範囲でのプロダクト連携の話を進めています。なお、LINEはdialpad社が買収したTalkIQというスタートアップに投資していて、私も出資検討の際にサンフランシスコ郊外のTalkIQオフィスに当時お邪魔しておりました。今となっては不思議なご縁を感じます。偶然の出会いや現場の熱量が、AIの社会実装をリードしている実感を、できる限りシズル感もってお伝えできるとよいな、と思ってます。
パートナーシップや事業拡大の観点で、ここ直近で大きな変化はZ Holdingsとの経営統合と、それによりSoftbankとの関係性が急接近したことです。協業に向けた準備を進めている段階ではありますが、今後の期待を込めて、私が担当するキーノートでは、Softbankの法人営業部門を取り仕切る常務執行役員の藤長さんと、ZOZOテクノロジーズでAIを活用したビジネスの担当VPである野口さんをお招きして、目下進行中の企みごとや、ちょっと先にあたりまえになっていそうな未来について、お話お伺いしてゆきます。脚本なしのライブトークが今から楽しみです。
今回は基本的にビジネスカンファレンスということで、あまり技術的なお話は踏み込まないのですが、昨年末に発表させていただいた超巨大言語モデルでのチャレンジについては、その進捗をお知らせできると思います。AI界隈はGPT-3で一部騒ぎになりましたが、日本語で動いているところ、見てみたくないですか?大規模であることもさることながら、事前学習済みのモデルである点も重要で、現場の要件にあわせてフルカスタマイズでつくってきたコンパクトなAIから、大規模な事前学習済みモデルへのパラダイムの変換点を感じ取っていただければと思います。ちょっと前に論文発表された技術が、あっという間にプロダクトに反映されてゆくダイナミズムは、いろんな意味で痺れます。痺れます、というのは技術アドバイザリーを担当いただいている栄藤さんがよく使われる言葉です。グローバルでの開発競争や社内調整など、カンパニーCEOとしてはあらゆる面で本当に痺れます。
実のところ、このエントリーはイベント集客につなげるために、キーノートセッションの見所紹介的なノリで書き始めたのですが、気づいたら偶然の出会いと謎な熱量で乗り切ってきた過去を振り返る、ちょっとエモい感じの散漫な文章になってしまいました。とはいえ、ステージではこのような背景を語る時間もなさそうなので、ちょうどよかったかもしれないですね。
「イノベーター x LINEが目指すこれからのあたりまえ」をテーマにお届けするLINE AI DAY 2021。ここ最近諸事情でおとなしくしていたこともあって、お客様やパートナー各社を含むみんなの期待やパッションを背負い、我々のAI技術がもたらしているUX変革やDX成功例を、ライブ感溢れる内容であますところなくお伝えしたいと思います。
7月15日(木)14時から、オンラインでの開催となりますので、是非事前登録の上、リアルタイムでお楽しみ下さい。
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