朝焼け__1_

【連載小説】風は何処より(16/27)

16

城所昌之は、六本木にいた。
15歳で中学3年生だ。あまり学校には行っていない。成績もよくない。
髪を長く伸ばし、茶色く染めている。ピアスも3つあけている。
合成皮革の革ジャンを羽織り、太めのジーンズを腰ではき、レッドウイングのワークブーツを履いている。顔中ニキビだらけで、真っ赤な顔をしている。

今日は、知り合いの先輩が、六本木に店を出すというので、そのオープン記念パーティに呼ばれたのだ。
昌之は、チーマーと呼ばれる、所謂ギャンググループに入っている。
中学の同級生たちとは、ほとんどつるまない。
チームも、ダイヤルQ2のパーティラインで知り合った仲間だ。

「キド」
待ち合わせていた、カノジョのエリが駅の階段を上がってきた。
エリは、冬だがミニスカートだ。茶色の厚底ブーツを履いている。髪は明るい茶に染めている。アイシャドウも明るいグリーンだ。当然、眉は細い。年齢は、やはり15歳である。

「いこうぜ」と昌之が言うと、エリが腕を絡ませてきた。
「キド、お店の場所わかる?」
「ああ、この先だ。分かりやすいよ」

昌之が、ふと交差点に停車している、ハイエースを見やると、見覚えのある顔が後部座席に座っていた。
「じじぃじゃねえか。」
「え?なに見てんのぉ?」
少女は気だるそうに、同じ方向を見つめた。
黒人が「ディスコ楽しい」とビラを渡す。
「いや、あの車に乗っているの、うちのじじいだよ。」

祖父は、緊張した面持ちで、座っているように見える。
隣の座席には、40代の無表情の女が座っている。

「なにやってんだ?こんな時間に、こんなとこで。」
昌之は訝しげに、車を見つめた。
信号が変わり、ハイエースが発車した。

「いこう」少女が促し、
「ああ」と昌之は少女の肩を抱き、街の雑踏に消えていった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?