幻のキノコを探して~最終章:死にかける(前編)~
Hello my bros & sis 元気してるかい?
今回は私の友人が"キノコを食べて死にかけた話"を代筆していきたいと思います。
シリーズとして前回と前々回のトリップも書いてるので、よかったらこちらも見ていただけると嬉しいです。
サイケデリックとは儀式である
サイケデリックの世界を訪問するにあたって大事なこと、それは"サイケデリックとは神聖なる儀式"である。そのため場の環境を整えたり、自分自身の中身がキレイな状態で行う。とにかく自分が落ち着く場所を演出することが何よりも大事だ。
今回のSet & Settingは瞑想寺で10日間ベジタリアン生活をした後、24時間何も食べてない状態で、行きつけの食堂のFlat Noodle(米粉のきしめん)をチェイサーにして、5g分のJack Frostをできるだけ味わって食べた。
しかし実はこの時、一人ではなかったのだ。
瞑想寺で同じ日に到着し、同じ日数を過ごし、そして大部屋から個室に変わるのも同じタイミングだった(しかも隣のバンガロー)見た目が完全にキリストなイタリア人、アレシオに見守られながらなぜか食べていたのだった。
彼は「(私が)どうなるのか観察したい」と言って、少し心配そうな表情で私を見てくる。それもそのはず、瞑想寺で会ったサイケデリック好きな西洋人に、5gセッションの計画を伝えると必ずビックリされた。だから彼も私を心配していたことは簡単に分かった、優しいやつなのだ。
彼はTALK TOO MUCH(会話が大好き)である。私がご飯を食べている間もずっと話している。久々の食事だったこともあり、15分ほどかけてゆっくり全てを噛み終わり、トリップに向けてのジョイントを巻こうと一式の道具を部屋に取りにいった。
共有スペースに戻ってジョイントを巻こうとした時に異変を感じた。
異変というよりも"既に世界が始まっている"のを感じていた。
視界は少しチラつき、ジョイントを巻こうとしている手に力が入らない。軽く小刻みに体が震えているような、呼吸していることを普段はあまり意識しないが、この時は呼吸に集中しても呼吸が浅い状態が続いていた。
しかしまだこの時は余裕があった。望まないがゆっくりであれば会話することもできたし。いつもの倍以上の時間をかけて何とかジョイントを巻き終えた。
5g食べて分かったことは、摂取量が増えれば増えるほどカムアップ時(最初の登り)のスピードが速いことが分かった。とにかく本当に速かった。時間の流れは穏やかに感じているはずなのに、できないことが増えていくスピードが速すぎて脳みそを使っていては到底追いつけない。
このとき私は既に話せなくなっていた。
彼の少し強めなイタリア訛りの英語を聞くことも、自分の状態を英語にして話すことも到底できなかった。できないというよりは感覚的に"したくない"のだ。正確にいうとそこに脳のキャパシティを使うほど余裕がなかったのだ。
流石にヤバイと感じたので自分の部屋に戻ることにした。イスから立ち上がり部屋に戻る旨を言葉を使わず表情とジェスチャーで彼に伝えるも、理解しているくせに言葉で「大丈夫か?」などと聞いてくる。
その問いに答えるためだけに「I'm going back my room.(部屋に戻るわ)」という一文だけを絞り出し、アレシオの返答を聞かずにそのままフラつく足取りで部屋に戻った。
既に世界は未開の地
真っ白なキノコを摂取してから30分ほど経ったであろうか?
何とか部屋に戻ることができた私はすぐに全てのカーテンを閉め、服を脱ぎ捨て全裸でベッドに横たわっていた。キノコに対して服を着ながらトリップしていることが"無礼"に感じてしまったのだ。生まれたままの姿で向き合うこと、それが意識の奥底まで向かう上での私のルールなのだ。
そうこうしている内にも、どこか知らない世界へ向かうスピードは一向に止まらない。正直この時点で今まで体験した全サイケデリックの体験は優に超えていた。そして同時にこの時点で"人に見せれる姿"ではなくなっていたのだ。
体の感覚は徐々に薄くなっていき、それと比例して思考はどんどん未開の地へ遠慮なく突き進んでいく。心と体が分離していく感覚。トリップ前に行った瞑想寺で"この分離の感覚"を体験していて本当に良かったと思った。それがなければ気が狂いそうなぐらいのスピードと恐怖だった。
そんな状況の中、急に部屋の外から声がした。
「Are you ok ??(大丈夫?)」というアレシオの声だった。
言葉をロクに紡ぐことができなかった私は「ぅーーん…」というような声にもならないような空気の振動で生存していることを彼に伝える。すると彼が何かを言っている。
「Can I use your bike ??(バイク借りてもいい?)」というような内容だった。
私は赤ちゃんのハイハイをしながら机の上にあった鍵を取り、カーテンを少し開いて彼に手渡す。その時に私の姿が一瞬見えたのだろう、「Oh…bro…」というような感嘆詞が聞こえた気がした。
「(これで少しはトリップに集中できる)」と少し嬉しい気持ちになったが、本当の異世界はまだまだこれからだったのだ。
だいぶ長くなってしまうので前後編に分けることにしました。恐らく後編の方が強烈な内容になっていると思います。引き続き綴っていくのでもう少々お待ちください。
ではまた次回!