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【追悼】神戸人形の作者・吉田太郎さんのこと。

先ほど 
吉田太郎さんが亡くなったお知らせがスマホに来ました。

吉田太郎さんは神戸人形の製作者であると同時に、「伝道者」でした。

彼が書いた『神戸人形賛歌 よみがえるお化けたち』(吉田太郎 著、神戸新聞総合出版センター、2021)は、神戸人形の歴史と魅力ーー神戸の文化の豊かさを伝える出色の書です。


わたしと神戸人形との出会いは、kiitoで催されていた人形の展覧会「TOY&DOLL COLLECTION」。


https://japan-toy-museum.org/archives/exhibition/rental/%e7%a5%9e%e6%88%b8%e9%96%8b%e6%b8%af150%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e4%bc%81%e7%94%bb%e5%b1%95%e3%80%8ctoy%e3%80%80%ef%bc%86%e3%80%80doll%e3%80%80collection%e3%80%8d

グッズ販売コーナーで、神戸港開港150周年記念で作られた、150体限定の神戸人形「船乗り」が販売されていました。

神戸人形なんて見たことがなかった。存在さえ知らなかった。
でも、神戸人形のユーモラスな動きや佇まいに惹かれ、決して安くはなかった神戸人形を購入しました。

150体限定モデルの、吉田太郎作「神戸人形・船乗り」

仕掛けはシンプル。
横のつまみを回すと、望遠鏡やマドラスパイプが顔に近づくと同時に、首が傾いたり、口が動いたりします。

神戸人形「船乗り」の底面。109番のシリアルナンバーつき。

神戸人形の虜になったわたしは、いろいろ買い集めました。
いろいろと言っても、6体だけですが。

個人的には、やはり最初に購入した「船乗り」が好きです。

わたし(本木晋平)が蒐集した吉田太郎作の神戸人形。

一度だけ、神戸の渦森台(神戸市東灘区)にある工房にお邪魔したこともあります。

工房は、神戸人形への愛にあふれていました。
ネットのカタログに載っているモデルが何体も並んでいて、机には修理を依頼された年代物の神戸人形が置いてあって……
神戸人形を作るのが楽しいという「気」に満ちていました。

吉田さんは、いかにも職人、いかにも市民、という、実に飾らない方でした。
いい意味で素朴ーー純朴な方でした。

帰りがどしゃぶりの雨で、ビニール傘を貸していただいたことを覚えています。ありがたかった。

その後、テレビやラジオに出演されたり、神戸新聞に載ったり、先ほど紹介した本を出版されたりと、神戸人形の普及に尽力されました。
繰り返しますが、本当に神戸人形が好きなんだなあ、と、思わずこちらが微笑んでしまうような方でした。

神戸人形を通して自分を伝える、名誉欲や承認欲求のいやったらしさがまったくなかった。
彼が伝えたかったのは、どこまでも神戸人形であり、彼が愛したのはその神戸人形を生んだ神戸の街、神戸の文化でした。

吉田さんに、一つお詫びしたかったことがあります。
オリジナルの、特注の神戸人形を作ってもらいたかったわたしは、一点ものの神戸人形の製作費について尋ねました。
本業の鍼灸師らしく鍼灸施術をしているわたしか、趣味で小説を書いている(アイディアが閃いた)わたしかのどちらにしようか迷っていると、吉田さんはいかにも申し訳なさそうな顔で、

「うーん、ものにもよりますが、少くとも5万円くらい・・・」

と答えられました。

「高いもんだな」

と思ったわたしは、製作依頼を諦めました。
貧乏者のつらいところです。

でも、今思えば、全然安かったーーほとんど採算度外視の料金でした。
だって、時給1500円で、30時間かけて人形を作るとして、それだけで45000円しますから。(材料費を5000円として)
あの神戸人形の製作で、時給1500円は、人件費としては安すぎます。

吉田太郎さんは、そういう方でした。
あなたの神戸人形への情熱を安く見積もって、本当にごめんなさい。

御冥福をお祈りします。

悲しいし、悔しい。
わたしと年が7つしか違わなかったもの。早すぎるよ。

今後、わたしなりに、神戸人形の魅力と吉田太郎さんの偉業を伝えたいです。

2024年2月23日
本木晋平

【参考】サンテレビのテレビ番組のアーカイブより
https://youtu.be/D78E1BYjQbk?si=HTi2gSGaAMj5zFJX


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