コロナ禍での全豪オープンテニス
テニスの4大大会(グランドスラム)のひとつ、全豪オープンテニス。例年メルボルンで1月中旬から2週間にわたって行われるのだが、今年は3週間遅れで2月8日に開幕し、今週末(2月20日、21日)に男子、女子の決勝を迎える。オーストラリアは世界的に見ても新型コロナの封じ込めに成功している国。参加選手には指定チャーター機でのオーストラリア入国と、入国後の隔離政策を徹底した。こうした対策を行うために、100年を越える歴史の中で初めて2月開催となったのだ(一時期12月開催だったことはある)。
オーストラリアは現在、海外からの旅行者を受け入れておらず、今回の大会はオーストラリア在住者のみが現地観戦でき、1日の観客数の上限は3万人だ(試合数が少なくなるセカンドウイーク後半は2万5千人)。今年は日本から、優勝候補の大坂なおみ選手や、すでに日本テニス界のレジェンドといっていい錦織圭選手、さらに若手注目株のダニエル太郎選手などが参加しており、観に行きたかったという人も多いはず。行きやすさや時差のなさなどから日本人に人気で、ここ数年500~800人が観戦に訪れていた。
僕も全豪オープンテニスは過去何度か観戦したことがある。メルボルンパーク・テニスセンターは市中心部に近く、期間中運行される無料のトラムを利用したり、のんびりヤラ川沿いを散歩しながら向かうことができる。おもに上位シード選手が試合を行う3つの屋根付きアリーナコートのほか、20以上の屋外テニスコートがある。例年であればグラウンドパスという1日券で屋外コートの試合をすべて観戦できたのだが(アリーナコートはグラウンドパス付き指定席)、今年はコロナ対策として3つのアリーナコートのいずれかの指定席購入(グラウンドパス付き)に変更されている。会場内各所には大型ライブスクリーンが設置され、アリーナコートの試合を中継。その周りには数多くの飲食&イベントスペースが設けられている。オージー(オーストラリア人)たちは、気になる試合以外の時は、仲間とビールやワインを飲みつつ料理を味わい、全豪オープンテニスという祭りを楽しんでいるような雰囲気だ。
全豪オープンテニスの会場内はお祭り気分を楽しむ人がいっぱい
大坂なおみ選手が予選を勝ち上がり初グランドスラムに登場したのが2016年全豪オープンテニスだった。僕が初めて彼女の試合を観戦したのもこの時だ。屋外最大のショーコート(収容人数3千人)で行われたドナ・ベキッチ選手との1回戦の試合で、強烈なサーブと正確なストロークで終始試合の主導権を握り完勝。当時は無名だったので、最近の試合で耳にする「ナオミ、(拍手)(拍手)(拍手)」という声援はなかったが、ほぼ満員となった会場で地元の観客が大きな拍手を送っていた。この大会は大坂選手が3回戦まで、錦織選手が準々決勝まで残り、日本人としてちょっと誇らしく、すごく楽しかった。
全豪オープンに初出場したときの大坂なおみ選手
今年は怪我明けの錦織選手始めほとんどの日本人選手が1回線で敗退してしまったけれど、大坂なおみ選手が好調で、準決勝ではセリーナ選手を破って見事決勝進出。4度目のグランドスラム栄冠、そして2度目の全豪制覇を達成してくれることと期待が高まる。
もちろん女子シングル決勝の結果が気になる。すごく気になる……のだけれど、以前大会を観に行ったときの、真夏の日射しに照らし出されるメルボルンの街や、会場内で楽しそうに1日を過すオージーの姿の方が、とても懐かしい。
来年は、現地に足を運びたい、今はそう願っている。
(秋田魁新報2月13日掲載『遠い風 近い風』掲載コラムを加筆修正)