意外な組み合わせがはまると気持ちいい
これあわないんじゃねー?って思ってた組み合わせが、試してみたら、あれ?実はいい組み合わせじゃん、みたいになると気持ちいい。
20年くらい前、酒を飲んだ帰りの早朝6時くらいに新宿の松屋でご飯を食べていたら、あとから一人で入ってきたきれいめなおねえさんが、カレーと牛皿と納豆を注文して、それを全部乗っけて食べていた。
牛皿、納豆、カレー、おねえさん、きれい…全てにアンバランスさを感じる光景なんだけど、一番の違和感はカレーに納豆っていう組み合わせで、「それあわないんじゃねー?」って思って脳が理解できなかった。
ただ、なんかその光景が忘れられなくて、後日おそるおそるその食べ方を試してみたら、これが、あれ、いい組み合わせじゃん!ってなって、それからはカレーに納豆は「あり」な存在になった。牛皿はカロリーすぎて脱落したけど。
このときのカレーに納豆が合う!な感動は、なんか忘れられない。
今でこそ、常識的な食べ方みたいだけど、この時のぼくには、この組み合わせは神だった。
これに近いかどうかはわからないけど、そんな感覚を先週、味わった。
映画「機動警察パトレイバー2the Movie」のリバイバル上映だ。
「パトレイバー2」、言わずもがな、神の作った作品だ。
神とは…。
「花束みたいな恋をした」で麦と絹が終電を逃して運命の出逢いをするシーンで、二人を結びつけるきっかけになった人だ。
深夜のカフェで「神がいる…」と菅田将暉演じる麦が言った人、押井守監督だ。
その押井守が、1993年に作った映画が「パトレイバー2」だ。
神を神たらしめた作品と言ってもいい。そんくらい神がかった映画だ。
つい最近も2回見直したばかりだ。
最近見たのは、このブログで読んだからだ。
南雲しのぶ役の声優・榊原良子さんのブログ。
監督と意見が衝突したという終盤のセリフ「あなたを逮捕します」のひと言をどう表現するかの徹底的な役作りとキャラクター考察。
25年以上経っても昨日のことのように語ることができる役作りへのこだわり。
これを読んだら、ラストシーンを絶対にもう一度見たくなる。
このときは勢い余って2回見てしまった。
画がいい、セリフがいい、声優がいい、全部いい。
いいしかない113分。
何度見てもいいし、何回見ても発見がある。
これがまた劇場で見れるなら何としても行く、這ってでも行く。
そんなこんなでリバイバル上映はすごく嬉しいんだけど、余計なものがひっついてる。
それが、これ。4DX上映だ。
4DX、座席が揺れたり、振動がすごかったり、スモークが出たり、水がぷしゅーっと噴き出したりする、体感型映画鑑賞システム。
正直、これが邪魔だ。
通常上映があったら、そっちを選ぶ。
今まで何度か4DXで映画を見てるけど、「マッドマックス」も「スターウォーズ」も悪くはないけど没入感が高まるというよりはアクションで揺れすぎて疲れる感じで、「シン・ゴジラ」で石原さとみの登場シーンで花の香りがして爆笑した記憶くらいしか、いい思い出がない。
で、料金も通常上映より1000円高い。
しかも「パトレイバー2」はあまり4DX向きの映画ではない気がする…。
近未来もの(といっても今から見たら過去だけど)のロボットアニメだけど、アクション主体の作品ではない。どちらかというと、会話劇が中心の静かな映画だ。
東京で起きる「戦争」を描いた映画なので、激しい銃撃シーンとか見せ場はもちろんあるけど、大半が会話だ。それがこの映画のすごいところなんだけど。
そんな静かな映画を4DXで…意味がわらない。
それ、あわないんじゃねーの?ってしか思えない組み合わせだ。
ただ、これが意外にも、ほんとに自分でもびっくりするくらい悪くなかったのだ。
冒頭、東南アジアの森の中での戦闘と、それが終わってシミュレーター機を操縦するパイロットのシーン。
タイトルが出てオープニングが終わるまでの冒頭の流れは、4DX向きというか、派手な展開で、ここは確かに没入感が上がった。特にシュミレーターの操縦シーンはパイロットと一体になった感じがして悪くない。
ただ、良かったのはそこではない。これが続くと正直疲れる。
意外だったのは、もっと何でもない静かなシーンでの4DX効果だ。
この映画、乗り物に乗って移動しながら会話するってシーンがすごく多いのだけど、そこでの4DX効果がすごくいいのだ。
例えば、ながーい車での会話シーン、そのシーンでずっと車の振動が伝わってくる。ああ、車にのってるなーな感じ。
船での移動シーンは、船の揺れが伝わってくる。
水族館から基地に帰るっていう移動シーン。
画面に映されているのは、平和ボケした東京の光と影みたいな風景なんだけど、その間ずーっと船の揺れが伝わってきていて、この景色を船から見てるんだなーっていうのが、体感として伝わってくる。
あと、雪だ。作中、印象的な雪の降り出すシーン。
本当に雪?っていう何かが降ってくる。
雪の降る中、静かに芝浦の川を船で移動するシーンの本当に船に乗ってる感じ。
ここねー、いいんですよ、ほんと、それを体感してる感じが、ヤバイ、エモい、気持ちいい。(語彙…)
とにかく、静かなシーンの4DXが、すごくよかったのだ。
「パトレイバー2」は4DXと相性がいい!
とまで断言できるかは疑問だけど、少なくと今まで見た4DXの中では抜群に良い体感度合いだった。
あくまで個人的な感想だけど、これは意外な良い組み合わせだと思った。
なんか、すごく気持ち良かった。
正直、4DXで、もう一回見てもいいと思ってる。
(週末はチケット完売でもう一回見に行けなかった…)
こういう意外な組み合わせがはまると気持ちがいい。
これは仕事でも似たような所があって、この本のデザインにこのモチーフを使うの?みたいな、そういう意外な組み合わせがビタっとはまって、認知されるというか、広まっていくと、けっこう嬉しい。
例えば、これとか。
吉田松陰の超訳本に子供の写真。一見、どうなの?な組み合わせだけど、これがけっこう目を引いた。
これ以降、ビジネス・自己啓発本に子供の写真を使うというのが、ちょっとしたブームになった気がする。
それまで提案しても「え?なんで子供の写真」って却下されることが多かったんだけど、認知されたら逆にそういうオーダーが来るようになった。
ただ、あまりにもこのテイストがあふれすぎて今はもう自分ではあまり作らなくなってしまったんだけど…。
最初はちょっと違和感があるけど、実は意外にいい組み合わせ。
そういうのを探して日々色々と試行錯誤している。
とにかく今回は4DXに新しい楽しみを見つけられた!
ちょっと地味目な映画を4DXでやってたら、また見に行ってみよう。
それにしても今の映画館、Dolby cinemaで「ガメラ2」やってて、4DXで「パトレイバー2」やってて、なにげに伊藤和典の傑作脚本2本立て祭りだったり、「セーラームーン」の新作やってて、本来だったら「エヴァンゲリオン」の新作も上映されてたはずで、いったいいつの時代だよ!感がハンパない。