56日目(夢中)

久しぶりに実家の母と電話。
こういうご時世なので(ということにしているが)
まあまあ実家にも寄り付かず、
想像ではあるけれど寂しかったりするのかな。
それぞれ老いた夫婦二人きりの生活は、
仲が良い、悪いなんて2択で語れるものではないし、
そんな状況がこんなに続くと「飽きる」ことだってあるだろう。
だからこそ「どうでもいい話」が大切になってくるわけで。

とはいえ、本当に「どうでもいい話」だった。
書くまでもないほどに。
ただ、物置化している実家の部屋から、
放置が続く漫画やカセットテープなどを処分していいか。
なぜなら時間だけは有り余るほどあるから、ということ。
その中に、ダビングした
ブルーハーツの「ヤングアンドプリティ」もあったらしい。

小学生のころ、初めて買ったCDがこのアルバムだ。
消えかけた記憶を手繰ってみると、たぶん
「人にやさしく」が聞きたかったんだと思う。
(当時、レナウンのCMソングで聞いて衝撃を受けた気がする)
https://www.youtube.com/watch?v=m8oSGs8hkco

で、CDを手に入れた喜びと、
そのきっかけとなったラジカセを早く使ってみたかったこととで、
早速ダビングをしたんだった。そうだ、カーステレオで聞きたかったんだ。

何せこの1枚しかないので、とにかく聞き倒したわけだが、
案の定、「ロクデナシⅡ」に夢中。
反抗期にはまだ早かったが、ひょっとしたらこの曲のせいで
反抗期に自力で突入したのかもしれない。

破壊衝動があるわけでもないし、
鬱屈するほどのストレスがあったわけでもないだろう。
だが爆音でかき鳴らされるギター、
唸るようなボーカルに心を奪われるのは、あっという間だった。
なんだったら「音楽の快楽性」を
最初に買ったCDで得られたというのは本当に幸せだ。

あれから30年近くたって、
久しぶりにアルバム全体を聞いてみると、
ぐっと来たのは「ロマンチック」だった。
あの頃と違う感情で、またこのアルバムが楽しめるというのは
なんだかいいなと思う。

その夜、なんとなくではあるが再度母に電話。
「いやあ、最初に買ったCD、ブルーハーツを久しぶりに聞いたらすごくよかった」
「は?あんたが最初に買ったの『堀内孝雄』やろうもん」

ガキの頃の話でした。

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