『うんこロボット』#ショートショート
俺はうんこだ。
ふと、そう思った。
どうしてそう思ったのか。その原因は今まで生きてきた過程を振り返れば、どれもこれもそのような気がしてくる。
(あー、嫌だ……)
すべてに嫌気がさしている。
何もかもが嫌だ。
と、頭を抱えているこの状況にも頭を抱え、もうどうしようもなくなっていた。
ふいに皮膚をなぞるような寒気を覚える。
スマホを開き、デフォルトのカレンダーアプリで日付を確認する。
思考が一瞬止まった。
――年が明けてから、もうひと月が過ぎようとしている……?
インフルエンザに罹ったことにより、クリスマスは“苦しみます”、年末年始は”寝正月”。そして、熱は下がったものの、未だ咳は止まらず(おそらく、持病の喘息が悪化)。
ただただ体調をこじらせ、十二分の一を無為にしようとしている。
こんなにも心身ともに不安定なのには、思い当たる節があった。
それは、人間関係だ。
よくある話だが、例に漏れず、俺も人の性から逃れることができない。
四年ほど勤めていた職場から、半ば追われるように自己都合退職をさせられた。させられてしまった。
まぁ、詮無いことだと思う。
なぜなら、四年も勤めていて、歳がひと回り以上離れた年配者には、いつまでも心を開くことができず、まるでロボットのように振舞っていたから。
だからなのか、〈マイペース〉とか〈協調性がない〉とか〈子どもみたい〉とか、陰に陽に言われていた。
直接言ってきてもいるのだから、それでチャラかと思っていたら、むしろ彼らの不満はエスカレートし、あからさまに態度を変え、嫌がらせ(迫害と言ってもいいだろう)をしてきた。
その結果が、自己都合退職だ。
会社の設立当初から勤めていても、後輩の年配者に追い込み漁で餌食にされてしまうのだ。人間関係、でね。
外から鳥のさえずりが聞こえたような気がした。
小寒から大寒に差し迫るこの時期に、鳥のさえずりなんて聞こえただろうか。
そんなことを思いつつ、窓外に目を遣ると、外はすでに白んでいた。
(あー、嫌だ……何もかも…………)
俺はうんこだ。歩くうんこ製造機。……うんこロボットだ。