『燃える焼きそば』#ショートショート
一旦、いろいろ焼いてみようか。
卵焼き、焼き魚、サンマの塩焼き、どら焼き、焼き肉……
腹が減ってきた。
そんなところで、ふと思うのが「焼き」という言葉の不思議さ。
日本語の特性として本質が後ろに来るから、「卵」+「焼き」だったら「調理方法」を主張しているし、「焼き」+「魚」だったら「食品」を主張しているように思う。
それで考えると、「焼きそば」は後者だ。
俺は悔しい。
もっと「焼き」に頑張ってもらいたい。
だから修飾する。
「燃える焼きそば」。
……。
なんだろう。とりあえず、ガス止めてもらっていっすか? って感じ。
「激しく燃える焼きそば」。
んー。
「これまでになく激しく燃える焼きそば」。
「これまでになく激しく燃え盛る焼きそばon fire」。
……結局、どこまで行っても「そば」になる。
ガタンゴトン……ガタンゴトン…………
電車の中でそんなことを考えつつ、つり革を握っていた。
眼下には立派なアフロが存在感をかましている。
しかし、俺の目にはそのアフロがもはや焼きそばにしか見えなかった。
俺はジーンズのポケットからライターを取り出した。