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米軍実物M24双眼鏡を旅行用に買ったのでレビュー!

先日ジョシュアツリー国立公園へ旅行へ行ったとき、ちらほら遠くを双眼鏡で眺めている人がいました。アジアの観光地だとあまり見かけない光景ですが、なるほど確かに歩き回って観るランドマークや遺跡系の観光地が多いアジアに対して、アメリカの国立公園のような基本大自然の中で観光スポットや道から遠くを眺めるタイプの観光地では双眼鏡あったら面白そう!と興味が出てきました。
そこで折角なら何か面白い双眼鏡を、と思い、米軍御用達のM24双眼鏡を入手しました!そのM24のレビューをメインに、M24の測距機能の使い方やバリエーション、入手方法等も書いていきます。

レビューまとめ

長所

・見るからに頑丈。パッキング、持ち運びに気を使わなくてよい
・軍用光学機器と考えれば値段は安価(ホロサイト等に比べて…)
・ソロ旅行においては測距レティクルが暇つぶしの道具になるかも?

短所

・キャップがとても邪魔
・アイレリーフが意外と短く狭く、眼鏡やゴーグルとの相性が×。
・純粋な光学的性能はおそらく同じ値段の民用品に劣る
・レーザー保護コーティングで視界が紫~ピンク色になる

結論

一癖あるが、道具そのものにちょっとしたストーリーや遊びを求める人なら楽しめるはず。実用面でいえば防水防塵のようなタフ性能を求める旅行や測距レティクルが欲しくない限り、同価格帯にもっと性能が良い民用品がある。個人的には自分は買って満足!

M24双眼鏡とは?

最初に思いついて「米軍 双眼鏡」と検索してみたのですが、意外とヒット数が少なく海外ページ参考にまとめるとこんな感じのようです。もし何か間違っていたらコメントで教えてください。

2000年代に入り、米軍は「1つのサイズですべてに対応できる」というコンセプトで新しい双眼鏡の開発を開始したが、現場の声に応え現在M22、M24、M25と3種類の双眼鏡を米陸軍と海兵隊で使用している。
・M22双眼鏡
 最初に配備された、7倍x50口径・ポロプリズム式の大型双眼鏡
・M24双眼鏡
 M22が大きいというフィードバックを受けて開発された、7倍x28口径・ダハプリズム式の小型双眼鏡
・M25双眼鏡
 より長距離に対応するため開発された、14倍のジャイロ式手振れ補正
双眼鏡

https://www.ausa.org/articles/soldier-armed-binocular-update

M24の民生品と違う大きな特徴は、目標までの距離や対象物大きさを測ることができるレティクルが左目側についていること、そしてレーザーから目を守るコーティングがされていることでしょうか(同機能はM22と共通、M25は不明です)。どちらも一般的には不要ですが、レティクルはオタク心をくすぐられる特長で、一方コーティングは見ている対象物の色合いが変わってしまうのでマイナスポイント、というのが個人的な感想です。

左目側にだけこのようなレティクルがついています。
白色の壁で撮影してますが、ピンク色がかっているのがレーザーコーティングの副作用。

M24の供給元はノースロップ・グラマン(初期型)、フジノン(日本)、L3 Communications(旧ロッキードマーティン)の3社。新品で手に入りやすいのはフジノンとL3のようで、ノースロップグラマンは中古での出品履歴が確認できる程度でした。

開封の儀

2022/5月現在で新品未開封174.99USD(税・米国内送料込)。日本製のちょっと良い双眼鏡が買える値段ですね。正規の流通に乗る類のものではないので、正直ちょっと怪しいサイトで買ったのですが、マニュアルの質感などもガンショーで触った米軍マニュアルのものに近く、偽物を作るとしてもここまで似せる類のものではないだろうということで、実物と判断しています。詳しくは後程入手経路を紹介します。

箱、NSN等が印字されたラベル付き。2013/10製造?
ちゃんとマニュアルもついています。
未開封という説明には偽りなし
キャップ内には保護紙まで入ってました。
件の対物レンズ側レーザー保護コーティング。見た目は綺麗でカッコいいです。
M24の品番プレート。NSNと呼ばれる米軍の備品番号が実物感を際立たせます。

実際に使ってみる!

アメリカでもガソリン代が高騰し、今やスタンドによってはハイオクのリッター単価は日本円で250円を超えています。ガソリンを捨てながら走るようなアメ車V8で毎日200~500キロ単位の走行が基本となる国立公園めぐりはちょっと精神的によろしくない。ということで、近場のNASCAR観戦に行くときに持って行ってみました。

NASCARで座った席。あいにくの曇天でしたが…?

使ってみた第一印象は、すごくよく見える!ということ。
私は旅行に一眼レフを持っていくので、遠くを見たいときはファインダーを覗いてズーム、細かく見たいときはさらにズームで撮影して液晶で拡大して確認、というような対応をしていました。なので、遠くを見るために双眼鏡をわざわざ使う意味はあるのかな、という疑問もありつつの導入だったのですが、これは別物です。まさに遠くの景色を近くで見ることができる、という感じで、旅行に持っていきたい持ち物がまた一つ増えてしまった!
いわゆる玩具の双眼鏡とは違い、光学性能を感じる解像感です。ただし遠く離れた位置の看板の文字などを見ると若干の滲みもあり、本当のハイエンドという趣ではありませんが…。
今までの荷物から何かを減らしてまでではないものの、荷物に隙間があれば今後はどこへ旅するにも持っていこうと思えます。

写真は一眼レフですが、M24双眼鏡は上のパノラマ写真右側に見えるコーナーを曲がるレースカーが路上に残ったタイヤカスを巻き上げているところが見えるほどの解像度です。
一眼で撮影した写真には写りますがファインダー越しではそこまでの細部は見えません。

一方で、x7という倍率は「動くものを見る」「遠くを眺める」には良くても、細部を楽しむにはやや物足りないかもしれません(例えば停車中のドライバーがどんな表情をしているかとか…)。そもそも私も買うまでx7という表記がピンと来ていなかったので、参考に撮影してきました。

参考にしたのは上記パノラマ写真左側のライブビュー。
肉眼では何が映っているかはわかるが文字は読めず内容は楽しめないレベルの距離(視力1.0)。
M24双眼鏡 レティクル側の視界。文字がはっきり読めます。
画面端の歪みは撮影によるもの。
一眼レフ(APS-C、300mm望遠、Pentax K-3II)での撮影。
ファインダー越しでは文字をはっきり読み取るのは難しいものの、
倍率でいえばM24のx7よりは拡大率が高い。
もちろん撮影後に本体液晶を使えば文字や細部が確認できます。

たとえばこのライブビューを細部までガッツリ見ようと思えば、x10やそれ以上の倍率が欲しくなるところなのだと思います。とはいえ、x10以上になると手振れも厳しく、またそこまでの高倍率で走り回るレースカーを追いかけることは結構難しいでしょう。x7といわず理想を言えばx8くらいは欲しかったな、というのが正直な感想ではあります。ちなみに民生品ではズーム可変式も多いですが、可変式は同価格帯では単一倍率に比べ暗くなってしまうためあまりお勧めはできません…。

もう少しM24についての色々レビュー

レティクル

最大の特徴ですね。左目側にレティクルがついており「既知の物体の大きさから距離を測る」もしくは「既知の距離から物体の大きさを測る」ことができます。
レティクル自体、意外に物を見ているときには邪魔にならず、かつ計ろうとしたときは非常にくっきりした文字が見え大変出来が良いです。ソロ旅行でぼーっと遠くを眺めているとき、暇つぶしにどれくらい離れているのか?どれくらい大きいのか?なんてことを計算してみても面白いでしょう。

マニュアルにも説明が書いてありますが、自分用の備忘録もかねて書き出してみます。
・数字が振られているメモリが10mil。
・10mのものが10milに見えたら、それは1000m先にある。
・1000m先のものが10milに見えたら、それは10mの物体。
・(物の大きさ[m]/目盛りのmil数読み)×1000 がその物体までの距離。
実用例;
・人の身長が約1.8mとして…
 2.5milに見えたら720m先。
 5milに見えたら360m先。
 10milに見えたら180m先。
 20milに見えたら90m先。
・旅先で既知の距離にある何かを眺めるというケースは少ないかと思いますが、対象物近くにいる別の観光客と比較して横にある物体が何倍の大きさである→この大木は高さ約何メートル…というような予測遊びはできそうです。

例えば、この反対側スタンドで観戦している人は約5~6milくらいに見えているので、300~360mくらい離れていると予測できます。
GoogleMapの航空写真とスケールで計算すると約325m。およそ正確な値が出ていますね。
添付のマニュアル。上に書いた内容がイラスト付きで解説されています。

レーザーコーティングの感想

絶対に気になる濃さです。とはいえ、レースを見始めてから「うわ~~ピンクだなぁ」とずっと邪魔になり続けるというほどではありません。ピンクがかったサングラスをかけているような感覚でしょうか。明確な短所ではありますが、「これはこういうもの」として捉えてしまえるならよいでしょう。逆にバードウォッチングとか、色も観察対象の要素である場合は向いていない双眼鏡ですね。

キャップがすごく邪魔!!!!

これは買うまでにネットを見ているときには指摘しているページを見かけなかったのですが、対物・接眼側両方ともに、キャップがかさばって使用時すごく邪魔です!外した後に固定しておける場所がなく、最初「見えずらいな~」と思っていたら片方の対物レンズキャップがいつの間にかレンズを隠す位置に戻っていたこともありました。首ヒモ側にくっついてくる接眼キャップ程よくランヤードと干渉して邪魔です。この辺はデザインの段階で一工夫をする民用品と、そうでない軍用の違いなのかな…と思います。あるいは前線で使う方は輸送中つけておいてフィールドに出たら外してしまうんでしょうか。

しっかりしたキャップゆえにかさばる。今のところキャップごとボディ全体をぐっと握りこむ以外のアイデアがありませんが、それはそれで握りにくい…。

アイレリーフが短く狭い

アイレリーフとは双眼鏡がくっきり見える接眼レンズと眼の距離のこと。
一応M24はどの型式でもキャップを折り返して、眼鏡やゴーグルに対応できるようになっています。が、それでもよく見えるスイートスポットが狭く、レンズにM24を押し付けて目への距離を少し縮めれば見える、という感じです。NASCAR観戦時は眼鏡を頭に上げて裸眼で見ていました(裸眼でも視力片目0.2~0.3くらいの私は普通にくっきり見えました)。
サバゲなどのゴーグルを外せない用途で使うことを考えてる人は場合によっては使いにくいかもしれません。
裸眼で使う場合は何も考えず目に押し付ければ綺麗に見えるので特に問題にはならないところですが、眼鏡っ子でこの眼鏡対応の折り返し機能に期待していたところからはちょっと残念なポイントです。

左側が折り返した図。眼鏡越しでも使えるよう近づけられるが、そもそもアイレリーフがかなり短いため、結構厳しい。
(裸眼では写真右側の状態で目を押し付けるようにして見えるような距離感…)

どこで買うか?

M24とそのシリーズとしては、2022年6月現在こんな感じのようです。
L3製M24:流通が一番多い(最安値174.99USD~)。NSN 1240-01-602-8216。
FUJI製M24:新品流通あるが少なく高い(500USD前後)。
FUJINON Apache:M24の民生版。レティクルあるがレーザーコーティングがないのが最大の特徴。NSNがないため米軍仕様ではないが、同デザインに綺麗な視界でレティクルが欲しい…という場合の選択肢? こちらもレプリカが存在するようなので要注意。
Northrop Grumman製M24:もっともレア?新品流通確認出来ず、中国製もなく、ebay等では中古が300~500USDくらい。とはいえ軍用機でおなじみのあのロゴがプリントされているのはアツい。デザインはL3と同じ模様。
中国製M24:素性不明の怪しいM24がAliexpressにて125USDで売られている。レプリカにしては高いため、もしかしたら製造工場の検査落ち品や横流しの可能性もあるが、その値段出して偽物リスクを負うなら普通に民用品買ったほうがよさそう。
他、旧モデル?のM24:上記5種類の微妙な違いから大きく見た目が異なるM24も存在しているようです。NSNのAssign年を見ると2012年以前はM24は別設計だった?中古がebayで散見できますが詳細不明。

私が手に入れたのはTeam Equipというサイト。ちょっと怖かったので購入前調べてみたがテキサスにちゃんと実在する会社で、メインのビジネスは中古の工場機材を売っている会社の模様。関連商品を見るとちらほらミリタリーモノの出品もあるので、デッドストック放出のルートや関連メーカーとつながりがあるのかもしれない。2022/6現在まだ174.99USDで900個以上在庫あり。 (→ 残念ながらページが消滅していました。 リンクは切れていますが残しておきます…。) 日本宛でもESTIMATE SHIPPINGするとFree shippingと出るが本当に無料なのか、そもそも海外発送対応してくれるかは不明。まあ手段は色々あるでしょう…。カリフォルニアには5~6日で届きました。

おわりに

ということで、M24レビューでした! 
実は2022年5月に書きかけで放置した記事をすっかり忘れており、久々にnoteを開いたタイミングで思い出したため、遅ればせながら取り急ぎ仕上げて2023年4月付で公開いたしました。

…ちなみに買って1年弱、未だ旅行ではほぼ実用してません。まあオタクのコレクションってそういうものですから!!…次はどっか行くときはちゃんと持っていきます。

気になった方は是非あなたの心に刺さるモデルを探してみてくださいね!



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