「Agri-AR」の林業用拡張機能で、山林の測量業務等が驚くほど簡単に!
1. アプリの概要
これまで森林整備の事業では、近年、内業職員の減少と事業地の増加が重なり、周囲測量や森林の調査が現場での大きな負担となっています。
そんな中、これらの課題を解決に導くアプリ『Agri-AR』の林業用機能が登場しました。そのアプリを使ってみた内容をここに記載します。
2. 『Agri-AR』の主要機能と特長
『Agri-AR』は農作業におけるシンプルな仕事の効率化に向けてAR(拡張現実)技術を活用し、株式会社Rootが開発した、畑の面積、畝・苗シミュレーション、サイズ計測等12機能を有したアプリである。2024年4月にはアプリ・サービスを公開し、(VR/AR/MR)分野での日本最大級のカンファレンス「XR Kaigi 2024」では、XREAL Best Creative賞及びXR Future Pitchにおけるオーディエンス賞を受賞するなど、農業業界以外からの注目も大きい。
【1年更新の費用】
2機能 _9,900円/年
4機能 19,800円/年
全機能 26,400円/年
3.林業用拡張機能:
(1) 周囲測量(簡易版)
これまで、山林の測量業務はコンパスと距離レーザーを使用したものでしたが、これらの業務をスマホ一つでオフラインでも計測可能になりました。
アプリを起動し、予め打った杭に向かって点を打って周囲の点を落として行くだけの仕様となっており非常に簡単!面積計算もすぐにできます。
特長
①Android端末、(Proでない)iPhone/iPadでも利用可
②作業中に、現実空間で点・線の配置を確認可能
③点・線の配置は、情報パネル「表示2」で鳥瞰図としても確認可能
④最終点の削除機能を実装
⑤デフォルトの点確定方式を「連続配置」作業を容易に
⑥精度を担保するための確定方式として「戻り位置」「戻り角」が選択可能⑦日誌へのデータ保存
(2) 周囲測量(GNSS-RTK)
こちらは、通信環境のある場所での使用が必須ですが、GNSSによる精度の高い測量が実現可能です。こちらは別途通信機器の導入が必要です。
特長
画面右下のボタンから「必要精度レベル」を、RTK fix/RTK float/DGPSから選択できるようにしています。それぞれの誤差精度は以下の通りです。①RTK fix:数cm②RTK float:20~50cm程度③DGPS:1m以内程度森林内では「fix」での測位はなかなか難しいと思いますが、floatやDGPSを使用可能な地域はそれなりに多いと思います。Agri-ARでは、ソフトバンク社が提供する「ichimill」というRTKサービスとの連動を推奨しており、こちらは機材が55,000円/台、通信費が66,000円/年で利用可なようです。
(3) 標準値調査機能
こちらは、間伐の事業地などの森林状況の調査に100㎡ほどの標準値を設定し、その中の木の本数や胸高直径の計測が可能になっています。中心点から区域内の木をカウントできるので、竿をもってなどの操作が不要です。また、データはネット上に保存できるので、野帳への記入の手間も省けます。
特徴
①AndroidやLiDAR非搭載のiPhoneでも利用可能
②対象範囲の広さや、形状(円 or 四角)を選択可能
③全体図の確認が可能
④点の削除が可能
⑤データ保存→サポートページで確認機能を実装
4. 筆者の現場での使用感
開発の当初から開発者の(株)Rootさんにかなり要望などをお伝えしてきた筆者なのですが、実際の山での使用の状況についてお話します。
まず、私が整備担当した現場で森林組合さんが測量した場所で、使用してみました。事前の測量では0.75haで杭も事前に打ってある現場で計測しました。実際に我々の現場はほとんどが通信できない場所なので、オフライン可能な周囲測量の簡易版を使用しました。
↓こんな感じで杭に標準を合わせてボタンを順番に押して行くだけ!
途中、一回転ぶというハプニングがあったものの、一周して計測しました。
時間については大体15分くらいで完了しました。
測量結果は約0.74haと誤差0.01haでした!413mでこれなので、良い精度じゃないでしょうか?元の位置からも数m程度なので誤差も閉合比1/100クリアしていそうです。
転んだせいか最終点が若干ずれているので、この辺は改良の余地がありそうです。
後は、ボタンの誤動作だったり、精度を担保する工夫が必要だなと思いましたが、それ以外は初めての方でも利用できそうな感じです。
測量の時間も2人で25分くらいかかっていましたので、一人で15分はかなりの業務効率の向上にもつながることは間違いないです。
5. 実際のユーザーへの体験
先日1/17に実際に業務で使用されるだろうユーザーの方(森林組合、県、市町村担当等)に集まっていただき、周囲測量をはじめとする機能の仕様テストをしていただきました。(当日の記事)
場所は住田町役場周辺に杭を打ち、GNSSで測量した場所を周囲測量の簡易版で測量してみました!0.74ha、350mとなっています。
複数のユーザーで、それぞれiphone,ipadを用いて点の確認をしました。気温がマイナス3度くらいだったので、手がとてもかじかみました笑。
ユーザーテストの結果、私のデバイスでは0.73ha、349mとほぼ許容範囲の精度ではかれていました。その他ipadはほとんどGNSSと同じ精度でした。その他のユーザーでは、ボタンの押し間違えや画面のダウンなどのハプニングがあり、大きく異なった値になりました。
これは、通常でも起きやすいエラーなので改良の余地がありそうですが、正確に計測した端末でも精度は良いようです。
6. 今後の展開
今回のユーザーテストを踏まえて、(株)Rootさんでは、閉合比チェック及び、その結果に応じた微調整、作業途中データの保存と、その時点からの再開、作業途中でアプリを閉じたり、スリープにしてしまったときの対応、データのエクスポート(CSVダウンロード等)を実装し、森林整備の補助事業で活用できるよう、都道府県への働きかけを行って行くそうです。
また、こちらのアプリの開発に係るクラウドファンディングも行っていますので、通常よりもお手頃に利用できるようなので、ご利用いただければ開発に弾みがつくようなので、ぜひ現場もためによろしくお願いします。!
内容:
クラウドファンディングでの支援方法と特典を紹介。
「3,300円で10日間試用できるプランなど、多様なリターンが用意されています。」