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生物多様性ワークショップ【メモ】_大宮交通公園in京都

講師:坂田昌子 氏
場所:京都・大宮交通公園
日程:2023/04/04-05


生物多様性の第一人者である坂田氏が開催する京都府大宮交通公園での生物多様性ワークショップに2日間参加。

1日目「公園の見立て(植物・生物観察)」と2日目「楠の木再生に向けた施業」から、生き物と自然環境の関係性や庭と森のつながり、植物の特性などから、浅はかな知識だった「生物多様性」の解像度が高まり、とても興味が湧いたワークショップだったため、ワークショップでのメモ書きをシェアです。

内容については、手元でメモしたものを編集していますが、情報に不備がある場合もあるかと思います。ご了承ください。(※あくまでもメモです)

庭が良くなれば、鳥が行き来し、周りの森までよくなります。


講師

坂田昌子 氏

明治大学文学部史学科卒業。一般社団法人コモンフォレストジャパン理事。 虔十の会代表。前国連生物多様性の10年市民ネットワーク代表。 東京高尾山にて生物多様性を守り伝える為に、ネイチャーガイドをされながら日本各 地を駆け回りつつ、生物多様性条約や地球サミットなど国際会議にも継続的に参加。(Facebookイベント 講師紹介より引用)


ワークショップ経緯

大宮交通公園では土中環境の改善を目指し、落ち葉や杭といった天然資材を活用した管理が随所に見られる。


2021年のリニューアルから「生物多様性」を目指し、今回は坂田昌子氏を講師にお招きし、昨年10月の「見立て」から始まり、春の施業がワークショップとして開催された。

今回は新緑の生命の芽吹きがわかりやすい時期に公園内の植物を観察し、植物や公園に住む虫や鳥の様子から土中の環境を学んだ。

大宮交通公園

京都市北区にある京都府唯一の交通公園。2021年にリニューアルされた。
公園内に自転車用の道路や信号機などがある。

大宮交通公園

生物多様性ワークショップを主催するのは、大宮交通公園の環境整備やイベント集客などの公園管理の事業を行うEarth worker

Earth worker 中島麻紀 氏は長野県から参加。当イベントの開催のため、作業道具や資材を軽トラックで運搬!

Earth worker 中島麻紀 氏


生物多様性ワークショップ

環境改善による目標

なぜ生物多様性をめざすのか?

・「鳥や虫などの生き物が集まる環境をめざす」
 =「鳥や虫の力を借りて、土地の地力回復につながる」。

・大宮交通公園の環境が改善されることで、周囲の環境にも変化をもたらす。大宮交通公園に鳥や虫が住める環境をつくることで、周辺の山や川にも生き物が行き来する。そうすることで、森の生態系が回復したり、植物が元気になることで街全体の地力が回復する可能性を秘めている。

大宮交通公園に限らず、各家の庭でもスモールスケールで同じことができるため、庭が良くなれば周辺の自然環境も徐々に良くなる。

庭と森はつながっている


鳥や虫と植物の関係

・鳥の糞に混ざった種は発芽率が高いと言われている。
木のみなどを食べた鳥が種子を運び、ジェル状な栄養(糞)で種子を包み込み地面に落ちることで、他の種子に比べ発芽率が上がる。

・植物はは戦略的に動いている
風や光の当たり方を植物は選び成長している。目立たない場所で芽吹く植物も、風などを使い揺れ動くなどで生き物アピールし、鳥に食べて運んてもらうために戦略的にアピールを行っている。

・森を育てることで、複数の木々が生い茂り支え合う環境のため、雷や風の対策となる。光の取り入れる環境と調整しながら木は周りの木々と連携しながら戦略的に成長している。


ワークショップ2日目

楠の木再生ワークショップ


公園のシンボルツリー「楠の木」

・楠の木の再生
コンクリートを周りにはめるために、根っこが切られている。
葉っぱの紅葉の仕方や生え方に元気がない。
周囲の楠の木も同様に状態が悪いがまずはシンボルツリーを施業。


楠の木の根の様子

リニューアルの際にコンクリートの外枠に合わせ、根っこが切られている 

施業

・藁を敷き、枝でしがらみをつくり落ち葉を漉き込む。
・周りのコンクリートの内側に焼き杭を打ち込む
(1m間隔程度で根っこの菌糸の邪魔にならないところ)
・イノシシが鼻で掘ったくらいの土を起こして最後に混ぜ込む。

根っこを傷つけない様に、手作業での穴掘り

・根(脇根)に当たらないように手で掘る
・脇根は水を吸い上げる役割
・焼き杭を打つ場所は根っこの成長したい方向を避ける
 焼き杭の炭素は菌根菌にとって、成長を阻害するもの。
 地面のどこもかしこも炭を混ぜ込むことは良くない。
 (菌根菌を呼び込むには藁の役割が重要)

・等間隔ではないが1m程度の間隔が良い。

焼き杭を打ち込む

・【しがら】枝柄
・二本以上を噛み合わせ空間が崩れにくいように
・空間に落ち葉を密に入れこむ(手で押し込む)
・落ち葉と枝の細かい部屋をつくるイメージ
・水をゆっくり浸透させ、土中環境の乾燥を防ぐ
・杭にも枝や藁を絡ませる

藁・木の枝・広葉樹の葉っぱを敷き詰める

ワークショップ解説

楠の木が回復するために必要なこと

・表土5センチの土中環境は重要で環境が改善することで変化が見れる。
→ 今の固い土の状態から、湿った地面の環境に変化させる。
・乾燥を防ぐことで、根元に下草が生える様に整備する。
・土中の水分量が増えることでコケや雑草が生えやすい環境にする。

『リブランドカバー』
・根っこにもコケが生える状態が理想

水の動きは苔の生え方で得られる情報が多い

違う場所の楠の木の根っこ。サラサラの砂で地面に植物が生えていない。
この時期でも葉っぱが少なく、不栄養状態だとわかる

楠の木が「元気」になるための指標

葉っぱの色と木の栄養状態について


・黄色の葉っぱを緑色の元気な状態に変化させる。
① 紅葉し、葉っぱを落とす
② 新しい新芽を生やす(一度、黄色くなった葉っぱは、緑にならない)
・②の時の、新芽の「色」が重要
最初は赤、そこから緑へと変化する。濃い緑になると元気な良い状態といえる。


炭化させた焼杭

杭の役割

杭を打つと水の動きをつくることができ、雑草などのが生えやすく、菌糸が伸びる環境の手助けをする役割がある。

焼杭
炭化しているため微生物に分解されにくく、腐りにくい 。
水が地面に入ることで多高湿環境になり「バクテリア」が住みやすい環境になるため、腐らない自然界の杭として焼き杭が良い。

※焼かなくてもいい杭もある
・栗の木:10年程度もつ

根っこの周りに杭をおおよそ1mごとに打ち込む

植物が水の動きをつくり出す

・「水孔」という根っこで吸収した水分を吐き出す小さい穴がある植物があり、地下と地上の水分の水の動きを生んでいる。

フィトンチッド

・朝に水孔から外気に向けて吐き出す。
・ゆっくり地表に降りるため、森林浴などで効果を人間が感じやすいのは、午後2時頃と言われている。(朝は高い位置の空気層にとどまっている)

地ごしらえ

植物が発芽し、周りとの競争を勝ち抜き成長するためには「高い」というだけで有利

マウンド
マウンドは森のなかの「切株」をモデルとしてつくると良い

①菌糸により切り株が分解される
②分解段階でコケが覆り、外側の分解をとめる
→ 内側は分解を継続
③苔が水を蓄えるため、植物が育ちやすい盛り上がったマウンドが自然界でもできる。

「わからないことは森にいって確かめる」

坂田昌子氏


苔の役割

水を蓄え、ゆっくりと浸透させる

コケに水を与えると色が変化し、盛り上がる。

いい土の考え方
・握った時に固まる(多湿な土)風で吹き飛ばない土

地衣類

地衣類

・苔のような樹皮についている
・大気汚染に弱い特徴があり、地衣類がある場所は空気が綺麗。
・現代人はほとんど知らない「めでたい植物」でカビみたいな見た目。

共生とは

<共生の種類>
①片鱗共生
・例)地衣類と楠の木の関係など
・片方が得する共生
・得をしない植物側は損も得もしない

②相利共生
・例)木と菌根菌

③寄生
例)宿木
・生かさず殺さず
・適度に養分をもらう

植物の外来種について

・日本は外来種天国だった!!?
海洋国家の日本は開放的で、貿易や動物の移動によってさまざまな植物が(主にアジアから)入ってきている。
現代の日本の農業で採れる野菜の90%は外来種とされている

【少し前まで】
・日本は自然の力が強すぎるため、外来種が入ってきても外来種が淘汰され、日本固有の植物が多く土地の気候に合わせて会った。
【近代】
近代になり土地が私有化されたことによって、日本の固有種が育ってきた強い自然環境のバランスが大きく変化し、自然の力が弱まる。
昔から日本に渡ってきていた外来種がその自然バランスの変化に入り込み、今では、外来種が増えた問題が各地で起こっている。

風の種類と種の運ばれ方

①頭より上に流れる強い谷風
②顔や肩付近の優しい風
③足首くらいの地表5cmの風

風によって「戦略的にゆれる」植物
一般的な風は胞子をとばすために使われるが、「こぶしの花」になるグミなどは鳥に種を運んでもらうように揺れやすい木からの生え方で風を使って鳥にアピールしている。

日本は大型哺乳類がいない(人くらい)ので、人の腰の高さにタネをつけている植物が多く、服にくっつき種を運んでももらっている。

土圧
人間は大きな哺乳類
日本では大型哺乳類が少ないので、人間が土を固めている。特に二足歩行で一歩の圧力が大きい。
公園で土が固められたくない場所は、子供達が入ることを躊躇う仕組みに場づくりを行うなどの工夫が必要。

風は水気を運ぶ役割がある
「どの風をどの様に通したいか?」によって、植物の切り方が変わるため、一概に風を通すためだけの草刈りが良いというわけではない。
風が強く当たりすぎることで、昆虫が生きられない空間や樹皮の乾燥などにもつながる。

菌との共生

菌糸とは?
・微生物
・原生アメーバ

菌類
①細菌 → バクテリア、大腸菌など
②真菌類→ きのこ
      ②ー① きゅうきん
      ②ー② 菌根菌(カビ、酵母)
※「糸状菌」や「土壌菌」呼ばれることがあるが、その様な分類は学術上なし

分解
菌糸の分解菌によって有機物が分解される
菌の中でも「②きのこ」の真菌類しか分解能力のある菌はいない。
※きのこがあると分解されるため、石炭はできない。

不朽菌を呼び込む

菌根菌
 ・内生菌根 根っこの細胞に侵食して共生する
 ・外生菌根 根っこの先っぽに住む菌

 ・木と菌根菌の関係
木:光合成によって糖を生成
・糖の80%は自分(木)に使用
・糖の20%は菌根菌へ供給される
菌根菌:リン窒素、カリウムを生成(農業の三大要素)
・木の生育を助ける

 ・スプーン一杯で4000メートルの長さ菌糸

 ・菌根菌は炭が苦手

★悩みながら土中環境の整備が必要

・菌根菌は炭が苦手
・全ての土中に炭を入れれば良いという訳ではない。
➡︎人間の使い方が大切

・菌根菌は藁などで土から呼び込む必要がある。
・菌根菌と藁の関係はいまだに不明。
・菌根菌によって木に栄養が蓄えられる

「きのこ」のこ

木は高分子で構成される
リグニンは特に誰も分解できない木の成分

①地面から出るキノコ | 菌根菌
②木から生えるキノコ |
③虫に生えるキノコ  | 冬虫夏草(漢方に使われるきのこ)



植物解説シリーズ


【竹】

・抗菌作用が強い植物
→葉っぱは分解されにくい
・根は浅く横に生えるため、大宮交通公園のような周りがコンクリートの場合、成長の妨げとなる。
→色が悪い。
・草なのか、木なのかはいまだに学者の中で議論になっている。
→「幹(みき)」ではなく「幹(かん)」と呼ぶ

・竹林の管理方法(旧来)
・元気な植物で一気に増殖することは昔からわかっていた。
・干渉エリアを1m以上設けることが重要でその1mをまびくなどで管理する。

・役割
・竹の下は他の生物が生えにくいため、他の植物からすれば邪魔な存在。
・根っこが「土止め」の役割をしている。
・水分の少ない土壌を好む性質
└ 山の竹を一気に切ると「土砂崩れの可能性」が高まるので、切りながら土中改善。

・春に紅葉する
・里山には必ず竹林がある。建物や家具などに必須の植物で邪魔者ではなかった。


【楠の木】

・4月に紅葉を迎える常葉樹
・枝先の周囲まで土中では根を張る
・根っこの特徴
・太い根っこ → 自重を支えるための役割
・細い根っこ → 水を吸い上げて、菌糸をつくる(切らないように施業する必要あり)

・ダニ部屋がある
・肉食のダニの部屋
・草食ダニから守るためにダニを飼っている
(草食ダニがいなくなると肉食ダニがいなくなるのでバランスを自分でとっている)
・葉っぱ一枚一枚にダニ部屋がある。


【芝】

・高麗芝(大宮交通公園)
・管理必要
・乾燥しているところに生えやすい
・食べられたり踏まれるのが好きな植物
・奈良は鹿が食べることで芝が成長している。(若草山は和製の芝あり)
・焼いてあげることで新芽が生えるといった手法もあり(野焼き)

・芝が繁茂すると、クローバーなどの他の草が生えにくくなる

【オオイヌノフグリ】

・外来種

在来種:イヌノフグリ
・赤くて小さい

【たんぽぽ】


・西洋たんぽぽが多い
・関西たんぽぽは白色
・集合花

【ヨシ(葦)】

・1本で2トンの水を蒸散している
・冬になると倒れていく
手入れしてかる場合、冬に切らないといけない植物。
次の世代のために倒れる

夏に手入れして刈る場合、葦によって制御されていた土中で眠っている外来種が呼び覚まされる
刈った場合、まとめて置いておき、土中環境の改善に活用するなどする
・風を緩やかにする役割(風の草刈りは全て良い訳ではない)

・綺麗な水は生き物が住めない
琵琶湖では護岸工事などが進んでいる。
水際の葦が回復することで生態系の課題も大きく改善すると見立てている

【ぎしぎし】

真ん中の茎がおいしい
根っこが深くて水の流れをつくる(抜きにくい)

【園芸種(あじさいなど)】

虫や鳥は好まない植物

【紫陽花】

日本の紫陽花がオランダで品種改良され、日本が輸入して今の形となった。
「がく」だらけのアジサイとなった??

【芝桜】

他の植物の受粉を妨げるデメリット
虫に対してのアピールが強いため

◉バタフライガーデン
卵を産む食草や蜜のためになる庭づくり

【蝶】

里山に合わせて進化してきた生き物
 ①森林生 やんばる
 ②草原生 開放系
→ 人が山を切り開くことで進化した生き物(3万年の歴史)
→蝶がふえることで、餌とする鳥が増える

【果樹】

生き物が喜ぶ果樹を植えると多様性には良い
→ 柑橘類(ゆず、金柑)、柿、りんご、サルナシ、
→ 虫も人も鳥が喜ぶ

銀杏はアナグマが喜ぶ

【木】

菌も含めて木と呼ぶ

【蔦】

①巻き付く系(藤・あけび)の蔦の役割
・空間をつくる役割(巻きつくことで木を倒し、光を取り入れる)

②共生系(薮)
・良い藪
 つるが重なってマウントになる 
 雨のダメージを削減
・悪い薮
 擁壁に絡まる

【けやき】

・皮が剥ける木
 他事例)ヒメシャラ、リョウブ

皮が剥くれる理由:蔦などに巻きつかれたくないため、剥がれやすくなっている。
・剥がれるときは次の樹皮が内側で成長している証拠
・虫対策/蔦対策

【山桜】

・さくらんぼの時期(5月中旬)
・小さいさくらんぼ
・巣立ちたての鳥が食べるための木のみ
・ホオジロのヒナなど食べる

・樹皮
・木肌がガタガタで地衣類が共生しやすい

▼キノコがアメを降らす
・胞子が核になって、凍ることで水滴がまとわる
水蒸気の場合:-20℃の環境が必要
きのこの場合:-5℃で良い

【いちご】

・いちごは毒がない

【おおばじゃのひげ】

・グランドカバー
・やぶこうじ、じゃのひげ、やぶらん


【御土居(大宮交通公園)】

・洛中と洛外のあいだの土壁



<イベント詳細 (FB引用)>

4月4日/1日目...10:00〜15:00
公園の生物多様性ガイドツアー。 ルーペを使って生き物探し。
4月5日/2日目... 9:30〜16:30
環境再生ワークショップ

人と生き物が共生することのできる、貴重な都会のオアシス大宮交通公園。
土中環境整備によって街の中の大宮交通公園でもたくさんの生き物が増えてきました。
落ち葉の中にはたくさんの生き物がいて、それを食べる渡鳥のツグミがやってきました。地面の虫を一生懸命探している様子。ミミズ、クモ、昆虫を探しているのかな?これから迎える春にはどんな生き物に出会えるでしょうか?
普段あまり気づかない植物たちもルーペを使って観ると、また別世界が広がってますよー 

○集合場所:京都市北区大宮交通公園 杜の家前(コミュニティーセンター)
*駐車場は園内にコインパーキングがございます。

○ 参加費 :3500円/大人(1日) 6000円/大人(2日参加)
1000円/大学生.高校生 500円/中学生.小学生
家族割...大人2人で6000円

○定員 1日目 20名 2日目 15名

○ お申し込み・お問い合わせ
メールにて4月2日までに以下ご連絡ください。
ewOKpark .kyoto @gmail.com
①参加希望日
②氏名
③参加人数(大人、大学、高校、中学、小学生の区分)

○ ガイド.講師 坂田マサコさん
明治大学文学部史学科卒業。一般社団法人コモンフォレストジャパン理事。 虔十の会代表。
前国連生物多様性の10年市民ネットワーク代表。 東京高尾山にて生物多様性を守り伝える為に、ネイチャーガイドをされながら日本各 地を駆け回りつつ、生物多様性条約や地球サミットなど国際会議にも継続的に参加。


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