ガートナーシンポジウムから見えた大企業のAI活用の本質
本日(2024年10月28日)、ガートナーIT Symposium/Xpo™に出展者として参加する機会を得ました。この経験を通じて、企業のAI活用における興味深い潮流が見えてきましたので、共有させていただきたいと思います。
企業固有のAI活用ニーズの高まり
会場で強く感じたのは、汎用的なオープンAIソリューションではなく、各企業に固有のAI活用へのニーズの高まりです。これは、まさにマグマのように企業の内部から湧き上がってきている印象を受けました。
この傾向の背景には、これまでの様々なPoCを通じて得られた教訓があります。多くの企業が実感してきたのは、汎用的なAIソリューションだけでは十分な効果が得られないという現実です。結局のところ、企業固有の機密情報や独自データを最大限に活用できるAIソリューションでなければ、実務での真の価値創出は難しいということです。
満員御礼の生成AIセミナー
私たちは今回、わずか15分という短い時間ではありましたが、「国産最高性能LLM開発企業が語る 生成AIプロジェクト成功の鍵」というテーマでセミナーを開催しました。セミナールームは立ち見が出るほどの盛況で、企業のAI活用に対する関心の高さを実感しました。
ChatGPT利用と業務改革の違い
ここで重要な区別を指摘したいと思います。ChatGPTを実務で使用することと、企業の特定業務フローを自動化・高度化することは、全く異なるアプローチを必要とします。
全社的なChatGPT活用であれば、以下の要素を整備すれば十分です:
生成AIの基本的な仕組みの理解
活用知識の共有
ユースケースの蓄積
普及のためのインセンティブ設計
一方、特定業務フローの改革には、より深い理解と準備が必要です:
対象となる業務フローの徹底的な理解
関係する社内の人員・部門の把握
パートナー企業との関係性の整理
既存データとシステムの理解
明確な目標設定と課題の特定
つまり、実務理解と課題設定が先にあり、その解決手段として後から生成AIが検討されるべきなのです。
エージェント AI/エージェンティックワークフローがAI活用の本命と言われる所以がここにあると思います。
プロジェクト成功の3つの鍵
セミナーでは、プロジェクト成功のための3つの重要なポイントを共有しました:
目的の明確化:生成AI利用自体が目的なのか、業務改善・改革が目的なのか、視点を明確にする
失敗を知見として捉える:初期の失敗は避けられないため、短期プロジェクトで素早く学習する
ROIへのこだわり:投資対効果を常に意識し、数字で効果を測定する
結局、オープンなAIがどれだけ賢くなろうが、自社や自社の顧客に詳しいAIをどう仕立てるか?ができないと役に立ちません。
また、AIのAPIの料金はどんどん安くなっている傾向にありますが、それでもAPI利用だけでROIを出せるほどのタスクはそんなに多くないでしょう。
SLMやローカルLLMの技術選定や技術の組み合わせの最適化は当たり前のように行われていくと思います。
実際、米国の企業の41% が既にオープンソースLLMの活用しているというデータがあるほどです。日本企業だと10分の1程度でしょうか(もっと少ないかも?)
基本的に『データガバナンス』の観点、そして、コストパフォーマンスの観点でこのような結果になっているかなと思います。
今後の展望
確かに、現在の生成AIブームの中で、技術ありきのPoCが増加し、多くの「PoC死」が発生する可能性は否定できません。しかし、この過程を乗り越えた先には、日本企業の付加価値生産性の大きな向上が待っているはずです。
独自の生成AIをつくれるのか?という点も含めて、ハードルが高いと感じる企業が多いと思います。そこはしっかりと成果を出している企業とともにプロジェクトを進めることをおすすめします(弊社含む)
『生成AIをつくったことのない企業に自社の独自LLM開発を任せるのは、野球をやったことない人に野球のコーチを任せるに等しい』
という言葉を会場の誰かが言っていました。たしかにな、、、と思った次第です。作る過程でのみ得られる知見があることが間違いないと思います。しかし。とはいえやったことがある企業が少なすぎるので今のタイミングだと挑戦する人や企業はすべて応援していきたいです。(テックブログもやっているので、挑戦したいエンジニアさんには読んでいただきたいです!)
私たちは、この変革の波を企業の皆様と共に乗り越え、真の価値創造につなげていきたいと考えています。それは単なる技術導入ではなく、企業の本質的な競争力強化への道のりとなるはずです。