見出し画像

カスタマーサポートのRAGに関する発想の転換について

こんにちは、皆さん!本日は、カスタマーサポートにおけるRAG(Retrieval-Augmented Generation)の先進的なアプローチについてお話しします。特に、顧客向けチャットボットの性能を飛躍的に向上させる新たな手法をご紹介いたします。

従来のRAG最適化手法とその限界

まずは、RAGの基本的な最適化手法を簡単におさらいしましょう。

  1. Q&Aデータベースの質的向上:データクレンジング、Q&Aデータ化、メタデータの追加などを通じて、データベースの品質を高めます。

  2. 検索機能の強化:ベクトル検索やハイブリッド検索の導入、検索エンジンのファインチューニングにより、検索性能を向上させます。

『データベース最適化と検索エンジンの最適化が王道』NapkinAIで作成

この従来のアプローチは重要ですが、カスタマーサポートの特殊性を考慮すると、十分とは言えません。

RAG性能向上の真の課題:ユーザー入力の質

ここで重要な点を強調したいと思います。RAGの性能が期待通りに向上しない主な理由は、実はシステム側だけではなく、ユーザー側にもあります。つまり、ユーザーの入力(いわゆるプロンプト)の質が低いことが、RAGの真の性能を引き出せていない原因なのです。

最高のデータベースと検索エンジンを持っていたとしても、ユーザーからの曖昧な質問や不完全な情報では、適切な回答を得ることは困難です。言い換えれば、RAGの性能を最大限に引き出すためには、ユーザーの入力を改善し、より精密で情報量が適切なプロンプト(質問)にすることが不可欠なのです。

なぜユーザーの入力の質が低いのか?

ユーザーの質問(入力、プロンプト)の質が低い理由は簡単です。カスタマーサポートにお世話になるタイミングは、ユーザー視点ではごく稀なことです。多くのユーザーにとって、製品やサービスに問題が発生し、サポートを必要とする状況は頻繁には起こりません。

そのため、どのような質問をすれば企業側の最適なデータを探し当てられるのかを知っている人、あるいはそれを考慮する人はそもそも少ないのです。加えて、適切な質問を構築することの難易度も高いと言えます。ユーザーは通常、自分が直面している問題の技術的な詳細や、その問題を解決するために必要な情報の種類を正確に把握していることは稀です。

この状況が、ユーザーの入力の質を低下させ、結果としてRAGシステムの性能を制限する大きな要因となっているのです。

カスタマーサポート特有の課題

カスタマーサポート分野では、この問題がより顕著に現れます。例えば、「スマートフォンが動かない」という簡単な問い合わせでも、適切な解決策を提示するためには、多くの追加情報が必要です。しかし、多くのユーザーは問題の詳細を自ら提供することが難しく、これがRAGの性能を制限する大きな要因となっています。

また、生成AIの「もっともらしい」回答生成能力が、誤情報の提供リスクを高める可能性もあります。これらの課題に対応するため、新たなアプローチが必要とされていました。

質問精緻化RAGアプローチ

そこで、私たちは「質問精緻化RAGアプローチ」を開発しました(特許取得済み)。

かっこよく表現すると、Question-Led RAG (QL-RAG)でしょうか。

このアプローチは、ユーザーの入力の質を向上させることで、RAGの真の力を引き出すことを目指しています。特徴は以下の通りです。

『回答の生成の精度よりも、質問の生成の精度向上に着目』NapkinAIで作成
  1. 初期質問の分析:ユーザーの初期入力を分析し、問題の概要を特定します。

  2. 質問生成RAG:RAGを使用して、問題をより明確にするための追加質問を生成します。これにより、ユーザーとの対話を通じて問題の詳細を引き出します。※Question-Led RAG (QL-RAG)

  3. 検索キーワード生成:収集した情報を基に、RAGを用いて最適な検索キーワードを生成します。

  4. 精密化されたRAG検索:生成されたキーワードを使用して、高精度なRAG検索を実行します。

  5. 回答の提示:検索結果に基づいて回答を生成し、元の情報源へのリンクも提供します。

このアプローチにより、以下の利点が得られます:

  • ユーザーの初期入力の曖昧さを解消

  • 問題の本質を正確に捉えた検索の実現

  • 誤情報提供リスクの大幅な低減

  • ユーザー満足度の向上

『顧客向けAIチャットボットのボトルネックを排除可能』NapkinAIで作成

実装例

例えば、「スマートフォンが動かない」という初期入力に対して:

  1. システムが追加質問を生成:「画面は表示されていますか?」「電源は入りますか?」など

  2. ユーザーの回答を基に、「画面表示なし 電源入らない スマートフォン トラブルシューティング」といった検索キーワードを生成

  3. 生成されたキーワードでRAG検索を実行し、的確な解決策を提示

まとめ

質問精緻化RAGアプローチ、Question-Led RAG (QL-RAG)は、ユーザーの入力の質を向上させることで、RAGの真の力を引き出し、カスタマーサポートにおけるチャットボットの性能を劇的に向上させます。このアプローチは、ユーザーが適切な質問を構築することの難しさを理解し、それを支援することで、より効果的な問題解決を可能にします。

このアプローチにより、ユーザーの問題をより正確に理解し、適切な解決策を提供することが可能となります。カスタマーサポートの利用頻度が低いユーザーでも、効果的にサポートを受けられるようになるのです。

弊社のチャットボットの製品の詳しい内容はこちらを参照ください。

皆様の企業でカスタマーサポートの質を向上させたいとお考えでしたら、ぜひこの革新的なアプローチをご検討ください。私たちと共に、カスタマーサポートの新たな地平を切り開いていきましょう。ご質問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお寄せください。


いいなと思ったら応援しよう!