インターナショナルどや顔交流

ゴールデンウィークはグランドピアノの上でローション相撲をすることが唯一の予定だった皆さんこんばんは。
ゴールデンウィーク中に無印良品の展示ベッドの中で女性店員とピロートークする↑野です。

最近毎日のように東京に行く必要があるわけですが、やはりあそこは外国人の人が多い。

そしてどうやら聞くところによると、やはり海外の人々は未だ日本や日本人に対して、僕らからすると笑ってしまうぐらいの間違ったイメージを持っているそうですね、例えばまだ忍者やサムライは少数ながら存在するとかね。

だから僕は、彼ら外国人の、日本人の典型的なイメージである、「ワーカホリックであり、鬱々とした表情で歩く人々」という偏見に逆らうため、外国人の人とすれ違う時だけわざと希望に燃えた眼差しをするようにしている。
だってそうじゃないですか?確かにイタリアやアメリカと比べたら陽気さは足りないかもしれないけれど、だからといって、日本人のみんながみんな毎日鬱々としているわけじゃないし、日々に充足している人だって、仕事を楽しんでいる人だって、家族と仲睦まじく過ごしている人だっていっぱいいる、それなのに勝手な偏見を持たないで欲しいと思う。

そういった彼らの誤解を解くために、彼らに真実の日本国民の姿を見せなければいけないのだ。
そして僕が個人として日本社会に貢献できるとしたら、もうこれしかないのである。

そのため電車の中でも街中を歩いている時でも、外国人の人と近くになる時に絶対にどや顔をするようにした。
疲れていてもそんなことは関係ない、僕の顔面には日本と日本人の威信がかかっているのだから。

そう考えながら歩いていたところ、いた!いたぞ!カメラを肩からかけてジャパニーズ桜をパシャパシャと撮っている、ドイツの教授とその関係者みたいな二人組がよぉ!こいつぁ絶好のターゲットだぜ。
見せてやる!貴様らに日本人の概念を覆す、明日への希望に満ちた純然たるどや顔をよぉ!
なにが日本人は毎日満員電車と無味乾燥な職場で疲れきっている民族だぁ?この顔見ろや!

僕はものすごいどや顔でそのドイツ人らしき二人の顔を見た。
外国人二人は「なにこいつ超キモいんですけど」というような顔をしてからまたすぐ桜の方へ向き直った。

独りどや顔のまま佇む僕。
桜吹雪がどや顔を軽く撫でる。

その帰り、素晴らしく晴れていたこともあって、電車の中から多摩川を見ていたら、その美しさに堪らなくなって、つい衝動的に電車を降りて、多摩川の沿道を散歩した。
部活に励む青少年たちの声、咲き誇る菜の花、官能をくすぐる豊かな川と草花の入り混じる芳香…。

そうしてウットリとしていると、とても背の高いフランス人っぽい若い女性が、ベビーカーに子どもを乗せて歩いて来た。
これはリベンジのチャンスだ、今度こそこの若き御婦人に教え込んでやらねばならぬ、日本人の精神的豊かさを。

僕は目を輝かせ、表情を作り、道端に咲き誇る菜の花に負けないくらいの明るいどや顔をして夫人と赤ちゃんを交互に見た。

するとフランス人風のご婦人はやはり「なにこいつ、キモ過ぎて母国に帰りたくなったんですけど…」という目で僕を見た。
赤ちゃんのほうも物凄く純粋無垢なドングリ眼で僕のことをキモそうに見ていた。

多摩川のせせらぎの音をBGMに、またしても独りどや顔で佇む僕の姿がそこにはあった。

多摩川を散歩し終わったあとは、相変わらず東横線に乗って住んでいる街へと向かった。

電車の中で、スーツを着た仕事の出来そうな屈強な黒人が偶然前の席に座っていた。
もう僕はさすがにグローバル環境と多文化のハードルの厳しさに打ち負かされていたのだが、これも何かの縁と、最後の気力を振り絞って、前の黒人の顔を軽いどや顔で見てみた。

黒人は少しだけ微笑んで僕の顔を見た。
僕は照れてすぐにポケットから文庫本を取り出して読み始めた。

「We are the world」

そう、心の中で静かにつぶやいてから。

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