ぼーろランドへようこそ 5
終わった。
夢のぼーろランドが終わり、帰り道になってしまった。
私と妹は、ほんっとに楽しかったねー!
幸せだったねー!!
いやすごい!
こんな幸せなこと起こるんだねー!
と、大絶賛が止まらない、おそらくエンドレスで同じ話をするおばあちゃん同士みたいにそれだけを話しながら帰りの高速道路に乗った。
夜も更けて、22時を回った高速、まだメインの高速に乗る前の道なので車がいない。
そして、一車線だったので、運転していた私は高速だったことも忘れて60キロくらいでノロノロ走っていたことに気づいた。
あ、高速だったわ!と加速する。
気持ちが緩みすぎているのか、アクセルもなんか緩む。
いやいやいやいや。
アクセルも緩むわけなかろう。
アクセルを踏む。踏むたびに緩む。減速する。
ガソリンメーターを今更見る。
1番下のEを指している。
踏む。減速する。
あ!
ガソリンを東京から一度も給油していないことに私たちはやっと気づいた。
狭い一車線の高速が、不意に二車線に広がる。
するとすぐ車止めスペースと非常電話の灯りが見え、車止めにスーーっと入り、車は息途絶えた。
やーべーやーべー!
なんてね、ごめん!お姉ちゃんガソリンのことすっかり忘れてた!
いや私もだよ!丁度電話があるね!
停止した途端に妹は何の迷いもなく車を降りて非常電話に向かい、給油車を依頼した。
昨日よりも格段に冷え込んだ夜だった。
電話の対応待ちでずっと外に居る妹が心配になり、防寒具を持って行ってあげる。
ぼーろ氏にも一応やっちまったぜ!の連絡をする。
停車からこの間15分くらいなのだが、
最初の2分くらいやべーモードだったのに、すんっとその気持ちは通り過ぎていき、次なる困難が発生した。
尿意である。
私も妹も。
給油待ちと尿意から意識を外すために私たちはひとまず有平糖を一つ口に含み、そうだ、今日の写真をぼーろ夫妻にシェアしよう、と、アレやコレやを送る。
ぼーろ氏からの返信は
彼に心配させておいて私たちはこの返信に笑い転げる。
給油車待ちの間、今のうちに路肩でするかしないか談義をまたおばあちゃんの会話のようにグルグルし続ける。
妹)いや今しててよ?
給油車来てお尻ライトアップされても、途中で止められないしさ。
私)いや、まだ来ないきっと。今ならいけると思う!
妹)いや今しててよ?
の繰り返しでなんかもう大変すぎて笑いが止まらない。
私に至っては、天使のようにジェントルマンなJAFさんがいらしても、シートから一歩も動けないくらい瀕死状態である。
運転席からドアを軽く開けて笑顔で挨拶するのが全力である。
10リットル給油すると、次のサービスエリアまではそれでも持たないかもと教えて頂き、下道にいったん降りてスタンドへ行くことにした。
でも瀕死の私。
IC出口にトイレはないかと立ち寄ろうとする。
お姉ちゃん、あと数分だから!
妹にたしなめられる。
下道に出る。スタンドまであと2分。
行手に神々しく輝くファミリーマートが見えた。
私)え、あそこ入ろう。
妹)お姉ちゃん、あと2分だから!
私)……お姉ちゃんはそれどころじゃない……!
何の迷いもなく駐車場に入る。
妹も相当我慢しているはずだ。
トイレは男性用と女性用の二つ。
瀕死のわたしは女性用に入った。
隣のドアの音がする。
妹は、男性用に入った。
こんな時に譲ってあげられなくてごめん妹よ。
姉として生涯悔いに残りそうな出来事だった。
ガス欠に気付けなかったなんてかわいいもんだ。
妹に女性トイレを譲れなかったなんて。
ていう惨事をまた大笑いしながら私たちは想定外の朝までのロングドライブを経て、帰宅した。
(朝方にもう一度ガス欠の危機が訪れそうになったが妹が何とかスタンドにたどり着くルートを編み出し、事なきを得た。)
どんなに楽しい夢の国に行っても、ガソリンとトイレには気をつけよう、それが今回の教訓となった。
生きてるといろんなことが起こる。
ハラハラしたり、わたしのバカバカバカ!って情けなくなったり。
でもね、たっくさん幸せなことが起こっているって気づいて、幸せなことを存分に楽しむと、やべーことが起こった時に反応が変わる。
noteで感動したり、笑ったり、癒されたりする記事を読んで、小説をたくさん読んで、幸せな波動を沢山充電したら、同じ困難が訪れても、笑ってコメディにできる。
そしてまた今日を生きる。
大丈夫、あなたは沢山の幸せアンテナがあって、幸せ充電を知ってる。
いつか一緒に笑いましょうね。
ぼーろランドへ、ようこそ。
完