10月の朝活園藝教室~プロから学べる庭いじりのコツ〜
日時:2021年10月11日(月) 8時~9時30分
場所:BONUS TRACK
園藝部員のともみです。今月の朝活園藝教室もボーナストラックを舞台に行いました。10月とは思えない残暑の中でしたが、季節の歩みも感じられた楽しい時間でした。
最初は先月に引き続きノリウツギの剪定。枯れてもまだ味わいのある花は残しつつ、来年の花つきや樹形も見据えて整える丁寧な仕事は、園藝部ならではです。
そしてこの日のメインはボーナストラックのシンボルツリー的存在の、シダレヤナギの剪定です。こちらが剪定前の写真。マメシバ先生からの質問です。この場所にある植栽として、現在どこが問題でしょうか?
答えは、通路にかかってきてしまっていることと、下に植えられた低木が隠れてしまっていることです。自然環境なら伸び伸び成長していてもいいのですが、街中の風景としてデザインされているので、その場にあった管理が必要になります。
枝垂れ樹形の剪定のコツは内側から枝の流れを見ること。剪定は先端から見て伸びた枝を切ろうとしてしまうことが多いですが、内側から見て、枝のつけ根からの流れを観察することが大切です。
マメシバ先生はイロハモミジの枯れ枝を裏返しにしたものを枝垂れ樹形に見立てて、わかりやすく教えてくださいました。枝垂れ樹形が美しく見えるポイントは、単に枝が下がるのではなく、一度上に伸びてから弧を描いて下がっていること。最初から下に向いている枝は美しく見えないのでまず整理します。枯れてしまっている枝も除去します。また、人の美的感覚として、真ん中に伸びた枝からシンメトリーに枝が出ているのは美しく見えないという傾向があります。周りの枝とのバランスを見ながら、左右対称の枝のどちらかを落とします。枝はなるべくつけ根から切る方が望ましいですが、途中で切りたい場合は芽の位置を見ます。下側についた芽からは最初から下に向かって伸びてしまいます。枝の上側についた芽は一度上に伸びてから下がります。枝の上側についた芽を残してその外側の位置で切りましょう。
剪定の教材として使われたイロハモミジの枝にも学びがありました。枯れ枝は放置すると木にとってストレスになるので、見つけたら除去した方がいいそうです。断面の樹皮のすぐ下が緑色だとまだ生きている枝、茶色だと枯れています。この枝の切り口を見ると、枯れていたことがよくわかります。
また切り口にV字の茶色いシミのようなものができていますが、これは腐朽菌などの侵入に対して防御反応を起こした跡です。抵抗もむなしくこの枝は枯れてしまったのではありますが、植物は外敵に対してこのようにさまざまな対応をして生きています。
年輪の密度の違いから、木の生きざまも伺えます。実際の木の年輪はバームクーヘンのような同心円状ではない場合が多いです。これは横枝なので、年輪の間隔が詰まっている方が重力に対して上側です。枝が下がらないようにがんばって引き上げているため、年輪の密度が上がるのです。枝垂れ樹形の木の場合は上に向かって引っ張る力が元々弱いので、しだれた樹形となるそうです。
ここからは実際のシダレヤナギの剪定を解説しながら実演していただきました。マメシバ先生が最初にノコギリで落としたのは、幹の下の方についていて、あまり枝垂れずに斜め上に伸びた枝でした。枝のつけ根から切ります。素人は外から見て、下の方まで垂れ下がっている枝を途中から切るのかと思ってしまいがちですが、木の内側に入って流れを見て判断することが重要です。落葉樹は冬に葉を落とすのでシルエットが大切です。まず木の下から見上げてシルエットを追いかけます。2番目に選んだのは、やはり下の方で横に伸びて、シダレヤナギのシルエットに貢献せず、垂れ下がった枝が下の低木を隠してしまっている枝です。このようなある程度太い横枝を切る場合、いきなりつけ根から切ろうとすると、重みで樹皮が裂けてしまって、大切な幹の樹皮を傷つけかねません。最初は少し外側の位置で、まず下から、次に上からノコギリを入れて枝の大きい部分を落とし、最後につけ根をきれいに切ります。
枝のつけ根を切る位置ですが、幹に対してまっすぐ切るのではありません。枝のつけ根の下側にはブランチカラーという少し膨らんだ部分があります。ここを残したギリギリの位置が正しい剪定位置です。ブランチカラーからまんべんなく切り口を巻き込んで形成層が成長し、切り口がきれいにふさがれるのです。木を腐らせる菌が入り込む危険性も減ります。幹に対してまっすぐに切ると、幹の組織を傷つけて防御層の形成がうまくいかず、幹が腐ってしまう可能性があります。
枝の途中で切ると腐朽菌が入りやすく、枯れたまま残ってしまい、木に悪影響があります。このシダレヤナギの木にも、移植の時に不適切に切られた枝が残されていましたので、その部分は除去しました。
2,3本ほどの枝を切っただけですが、シダレヤナギはすっきり美しくなりました。
ヤナギの枝はしなやかで加工しやすいため、手仕事の材料として優秀です。この日は園藝部員で手仕事研究家の石田紀佳さんもご参加下さっていて、紀佳さんの指導で枝から葉をはずして、お正月飾りなどに使う材として下処理をしました。運動会の代休で参加してくれた女の子も含め、参加者の皆さんはリースをつくり、剪定したノリウツギの花がらを飾って楽しみました。学びと楽しみがミックスされた園藝部ならではの一場面でした。
残暑が厳しいながらも季節は秋。実りの季節です。参加者の皆さんがタネから苗木を育てることに興味があるとおっしゃるので、実生を育てるのが大好きな部員のともみがご案内しました。この日に拾うことができた木のタネは、8種類もありました。
ツリバナ:しなった釣竿のような枝の先にぶら下がった赤い実が割れて、朱色のタネが覗いています。
アオダモ:木の根元にたくさん種が落ちています。モミジのタネを半分にしたような羽根つきです。
シナノキ:ヘリコプターのような羽根つきのタネを目ざとく見つけて、高い位置から落として見せてくれたのは、運動会の代休で参加してくれた女の子でした。
アオハダ:鮮やかな赤色の小さな実です。雌株に実がつきます。ボーナストラックには雄株もあります(ギャラリー前の階段の下)。
ヤマコウバシ:青黒い実です。名前の通り香りのある木で、落葉樹ですが、枯葉が冬のあいだも枝についたままで、春になってから落葉します。
ヤマボウシ:サクランボくらいの大きさのブツブツした実です。果肉は食べることができて、けっこう美味しいです。
シロヤマブキ:真っ黒いタネがたくさんつく低木です。発芽率はけっこういいです。
エゴノキ:丸い薄緑色の実が並んでぶら下がり、熟すと割れて茶色のタネが出てきます。根元にタネがたくさん落ちていました。
ポットなどの容器に土(普通の培養土)を入れ、種類ごとにいくつかタネを蒔いて薄く土をかぶせればOKです。土が乾かないように一日おきぐらいに水やりしてください。芽が出てくると嬉しいですよ。芽が複数出たら一本ずつに株分けしてください。そのまま鉢植えや盆栽にすることもできますし、30㎝ぐらいの苗になったら庭などに植えることもできます。
次回11月の朝活はどのような季節の営みに出会えるでしょうか? どなたでもご参加いただけますので、ぜひお問い合わせください。
下北線路街園藝部
下北線路街園藝部は、園藝のプロからアマチュアまで多種多様な人が集まりシモキタらしいみどりをつくり、いかし、はぐくむことをテーマに活動しています。活動にご興味があれば気軽にメッセージお待ちしております。
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