免許合宿9日目「無くし物」

免許合宿9日目
日記作成者 下島
半谷との関係 劣悪
帰りたい度 90
朝食 ウィンナー ひじき 納豆 味噌汁
昼食 醤油ラーメン
夕食 豚の生姜焼き イカバター焼き オニオンスライス 味噌汁

昨夜の消灯後、眠りにつく直前に小太りが話しかけてきた。「もし明日で地球が消滅するとしたら、最後の一日を誰と過ごしたいですか?」なんだこいつ。でもそういえばこいつ最初の適性検査の時、「時々死にたくなることがある」で、はいにまるをつけていたな。そう考えているうちに、「俺は家族です」と言ってきた。それを聞いて僕はゲロを吐いてしまった。こいつをそっとしといてやろうと思い、翌朝僕は半谷を強く起こさずに、1人で食堂へ向かった。1人で行く食堂は本当に心細く、たとえキチガイでも隣に友達がいるありがたさを改めて感じた。そうだ、明日からは殴ってでも絶対に半谷を朝食に連れていこう。



この部屋の鍵を管理しているのは半谷である。昨日の昼食の帰り、僕が前を歩きいつものようにドアの前で半谷が鍵を開けるのを待っていると、「開いてんだよ」と半谷。その時はなんだ、鍵を閉めなかったのか、くらいにしか考えていなかったが、どうやらそれから外に出る時に1回も鍵を閉めていない。不審に思い今日の昼に問い詰めると「実はなくしました」と言う。なくしたことを誤魔化すために僕に敬語も使わず強くでてきたことに納得がいかず、僕は敢えて言葉を使わずに僕が率先して鍵を探しながら、舌打ちや八つ当たりをする、という手段を使った。すると半谷も流石に探し始める。僕より前にお前が動けよ。
結局、部屋中を探しても鍵は見つからなかった。こいつに鍵を任せるべきではなかった。弁償すんの嫌すぎる。

午後の技能教習ではだいぶ運転に慣れてきたことを実感した。まだミスもあるが、ぶっちゃけバック以外は自信がある。

合宿の疲れも見えてきて、昼食時も夕食時も半谷と特に会話をしなかった。

夕食が終わり部屋に戻ると、半谷が自販機で買った缶ジュースを床に置き、そのまま自分で蹴ってこぼしていた。まあいつかやると思って驚かなかったが、小太りはそれをウエットティッシュで拭き始めた。馬鹿すぎるって。さすがに怒った。勿体ないし、ティッシュの方がお前の近くにあったし。ウエットティッシュで鼻かんでたのとかも引っ張ってきて、キレた。反省の様子は見えなかった。

半谷とワンピースの映画を見ながらコンビニで買ってきた味噌汁を飲むことにした。食堂でも味噌汁は飲めるが、僕の大好物である茄子の味噌汁は献立に出なかったため、我慢できずにインスタントのを買ってみた。僕はそれを非常に楽しみにしていたのだが、どこを探してみてもない。今日はよく物がなくなる日だ。探し続けていると、半谷も買っていたなめこのインスタント味噌汁にお湯を注ぎ始めた。「下島くんが味噌汁探してるの見て飲みたくなりました」そう唱える目を見て、僕は直感的にこいつの仕業だと確信した。多分こいつは意識せずに僕の味噌汁を捨てている。「お前捨てたろ」と一応問うてみると、「いや、俺ゴミとか捨てたりしないす」と小太り。それはそれで問題だろ。確かに部屋にゴミが散乱してるけどこれ全部お前のだもんな。しかし一応ゴミ箱の中を漁ると、ひとつのレジ袋を見つけた。その中には小太りが食べたアメリカンドッグのゴミ、小太りが食べたナナチキのゴミ、小太りが食べたワッフルのゴミ、小太りがワッフルにかけたケチャマスのゴミ、そして僕のなすの味噌汁が入っていた。こいつ僕の味噌汁が入ってる袋をゴミ袋としてる上に全然ゴミ箱に捨ててんじゃねーか。「俺じゃないすけどね」ととぼける小太りの顔に、僕はベタベタになった味噌汁の袋を塗りつけた。

明日は一日休みである。さて、何をしようかな。

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