免許合宿12日目「行き止まり」

免許合宿12日目
日記作成者 下島
半谷との関係 最悪
帰りたい度 100
朝食 無し
昼食 ネジ塩チキン丼 味噌汁
夕食 和風ハンバーグ スパゲッティサラダ チキンナゲット 味噌汁

昨晩日記をアップしてから、勉強の済んでいる僕はテラスハウスを見ることにした。もちろん、僕が見るということは半谷も見るということである。この部屋に逃げ場はない。この小太りにまともな勉強なんかさせない。彼は一応アプリを開いて過去問を解いていたが、次第にテラスハウスに見入っていた。やんや言いながら見ていれば、気づけば5時。一応試験前、余裕とはいえ睡眠は取った方がいいということでそこから2時間寝た。起床し、半谷を朝食に誘ったが当然断られる。しかし僕はもう何も腹が立たなかった。この減らず口も今日までである。全てが終わればこいつの口から「すいません俺が間違ってました」「明日からは下島さんの言う通り、朝食を取らしていただきたいと思います」という言葉を聞くことになるであろう。

技能の試験が始まり、まず僕は半谷の運転する車の後部座席に座った。ここで半谷はまず、丁寧に手順を確認するもシートベルトを閉めずに発進してしまうという大ミスを犯した。こいつ、学科の前に技能で落ちるんじゃないか?その後も半谷は小さいミスを重ねるも、なんとかギリギリで技能は合格したよう。続いて僕、これは特に大きなミスもなく、難なく合格。寝不足を差し引いても余裕すぎる。あとは学科に合格すれば僕の勝利である。待ち時間、隣にいた女子の日焼け止めが暴発し、僕の顔にぶっかかったりもしたが僕は至って余裕。「そろそろ僕のイメージカラーを白にしようと思ってたんですよ」とかなんとかジョークを言いつつ、笑顔で対応した。試験がはじまると、驚くほど全てがわかった。数問解くと僕はゾーン状態に入り、全ての問題が引っ掛け問題に見えてきた。しかし僕はあえて解くスピードを緩め、慎重に逆張りを繰り返した。おそらく小太りはこのような引っ掛けに引っかかるのであろう。僕の前に座っていた半谷はわかりやすく頭を抱え、ここで僕は勝利を確認した。

試験が終わり半谷と振り返りなんかもしてみた。するといくつか違う回答に丸をつけていることが判明。ふふふ、半谷くん。そこは引っ掛けなのだよ。君は勉強を怠ったからわからないだろうがね。

半谷の受験番号は5、僕は6。受験人数は7人。ついに発表の時が来た。受付のおばちゃんが合格者のみ発表していく。「1,2,3,4…5,7。以上です。」は?
5,7?え?6,7じゃなくて?え?どういう意味?周りの視線が痛い。僕は心の曇りを悟られまいとするばかりに、変な声を出してしまった。
一応半谷と点数を聞きに行った。すると半谷は満点、僕は86点のあと2問で合格であった。は?半谷が満点?引っ掛けは?ん?
ぐるぐるぐるぐる
目が回る。ほんとにグルグルした。漫画みたいに目がクルクルしてくれればみんなは笑ってくれたのだろうか。あと2問で合格ってちょっといちばんダサいかもしれない。僕の不合格は勉強しすぎて逆にの不合格じゃない?なんか全部ひっかけに見えたりしたし。仮免てほんとに落ちんの?落ちないって聞いてたんだけどな。もっかい聞いたら実は合格してたりしないかな?ほんとに不合格ならもう帰らしてほしい。仮免落ちた人としてあと10日もここで生活したくない。延泊とか嫌だし。早く帰りたい。色んな思いが駆け巡る。
しかし僕はひょうきん者、笑顔で余裕の表情をしなきゃ。すると合格者は別室に案内され、僕の手の届かないところに消えていく。笑って送り出そう。半谷、僕もすぐ追いつくから。1人で先に行っててくれ。
「イカナイデ」
絞り出したようなこの声は、僕の口から出た言葉なのだろうか。



もう帰らせてくれ。こんなド田舎に来て友達もできず、なんの楽しみもない中で試験に落ち、こんなことなら長尺ネタライブや後輩のネタ見せを見に行きたかった。受かった小太りは午後から第二段階の授業があり、部屋を出る際「ばいばい」と僕に告げた。こいつ本免落ちろよ。今度は僕が「ばいばい」してやる。今日は勉強し直し、明日リベンジだ。ばいばい、今日までの僕。

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