免許合宿22日目「待ってろよ」
免許合宿22日目
日記作成者 下島
半谷との関係 何も
帰りたい度 10000000
朝食 無し
昼食 親子丼 味噌汁
夕食 白身魚のフライ 手羽元のさっぱり煮 春雨サラダ 味噌汁
今日の一限はボケ大魔神教官。車に乗り込むまでに5回くらいいじられ今日も全開だなと思いながらも車に乗り込むと、先に出発した車を見て慌てて車を降り、その車を追いかけて呼び止めていた。どうやらその車の【仮免許練習中】の札が裏返しになっていたようで、そのまま走ってしまうと交通違反になってしまうとのこと。ボケ大魔神は「適当な仕事しやがって」と言いながら帰ってきて、少しお怒りだった。よく見るとその車に乗っていた教官はいっこく堂だった。あいつほんと仕事適当なんだよな。関係ない話ばっかで運転も全く教えてくれないし。その点ボケ大魔神はボケ数こそ多いけど運転は丁寧に教えてくれるし仕事は一生懸命なんだよなあ、と考えながら助手席に目をやると、ボケ大魔神は全然スマホを弄っていた。仕事中なのに。
今日は2時間やって、3時間目は見極めである。この2時間の間に僕は気の抜けた運転を繰り返し、結構教官に絞られた。まずい、このままじゃ見極めで不合格をくらってしまう。せめて卒検を受けさせて欲しい。しかしここにきて僕の疲労はピークに達していた。免許合宿に来てからずっとうっすら体調が悪いのだが、それに加えて昨日の夜に肩の凝りを自覚してしまい、そこからというものの体の節々が痛い。まじでこの布団硬すぎんだって。硬いってか薄い。勘弁してくれ。
そして不安を残したまま3時間目の見極めの時間に。教官はいっこく堂であった。僕は戸惑った。これが吉と出るか凶と出るか…。
答えは吉であった。こいつ、まじで適当な仕事しかしない。見極めの時間もずっと「ピンセントコンセントに改名しろ」という話か、ちょっとタメになる下ネタ雑学の話しかされず、合格とも不合格とも言われずにそのまま終了した。そのまま受付で明日の卒検の話をされたので合格のようだった。まじで明日の卒検もいっこく堂であってくれ。
教育機関というものは大体そんなもんだとは思うが、この自動車学校においても例外ではないことがある。それは、教官によって言ってることが全然違うということである。さっきの教官は車間距離もっと詰めろって言ってたからその通りにしたら次の教官はもっと空けろって言った、なんてことはいくらでもある。それを全部の教官分覚えるのは些か大変だ。しかしこのいっこく堂においてはわかりやすい。無駄なことを全部省けばいいのである。運転のことについてはまじで「よしいっちゃえ」しか言わない。これでやかましくなければ卒検においては最高なんだけどな。
半谷にこの話をしたら、実はあいつの卒検の教官はいっこく堂だったらしい。これを聞いて僕は、半谷の運転に少し不安を覚えた。
夜、残っている卵を消費するため冷蔵庫から卵を取り出そうとしたら、グシャッと言う音と共に高い卵がひとつ無駄になった。びっくりした。僕は卵の握り方すらわからなくなったのか?人間と仲良くしたいのに触れるもの皆傷つけてしまう優しい怪物のような気持ちになった。
あと1日。今日が終われば、あとは試験だけ。これに合格すれば釈放である。不自由な生活も、硬くて薄い布団も、たまに大ハズレがある食事も、いちいち僕の帽子を注意してくる教官も、明日でおさらばである。やっとだ。あまりに長く、つらい合宿だった。やはり僕の居場所はここではない。僕はこんな学校に収まるような器ではない。でっかい街が僕を待っている。今帰るぜ、でっかい資格持って。