第1回:はじめてのコマンドライン環境とファイル操作
ようこそ! この連載は、bashスクリプトや脳画像解析にまったく触れたことがない初心者の方向けに、最終的に「脳画像解析後の結果表示を自動で行うbashスクリプト」を作るまでの道のりを段階的に学んでいくチュートリアルです。
今回の第1回では、コマンドライン環境の基本とファイル操作について学びます。これらは後にbashスクリプトを作成する際の土台となる知識です。難しいことは抜きにして、まずはターミナルという環境に慣れ、基本的なコマンドを少しずつ試してみましょう。
なぜコマンドラインが必要なのか?
私たちが普段使っているパソコンでは、マウスやキーボード、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)を通じて操作を行います。一方、コマンドライン環境とは、文字ベースでコンピュータに指示を出す方法です。
コマンドラインを使うと、以下のようなメリットがあります。
自動化しやすい(スクリプトで繰り返し処理が簡単)
リモートサーバー上での作業が容易(遠隔のコンピュータを操作できる)
脳画像解析ツール(FSLなど)はコマンドラインで使う場面が多い
最初は少しとっつきにくいかもしれませんが、慣れれば素早くタスクをこなしたり、複雑な処理を自動化したりできるようになります。
コマンドライン環境への入り方
ここではLinuxやmacOSで標準的なターミナルを用いることを想定します。
macOSの場合:「Launchpad」→「その他」→「ターミナル」
Linuxの場合:メニューから「ターミナル」を起動するか、Ctrl + Alt + Tなどで呼び出します。
ターミナルを開くと、カーソルが点滅している黒い画面が出てくるはずです。ここでコマンドを入力し、Enterキーを押すことでコンピュータに指示を出します。
基本コマンドを覚えよう
カレントディレクトリの確認:pwd
pwdコマンドは「Print Working Directory」の略で、現在作業しているディレクトリ(フォルダ)の場所を表示します。
pwd
このコマンドを実行すると、あなたが今いるディレクトリのパス(例えば /home/username など)が表示されます。
ディレクトリ中のファイル一覧表示:ls
lsは「LiSt」の略で、現在のディレクトリ内にあるファイルやディレクトリを一覧表示します。
ls
何もファイルを作っていない場合は何も表示されないか、最低限のファイルが表示されることがあります。
ディレクトリの移動:cd
cdは「Change Directory」の略で、別のディレクトリに移動するコマンドです。
例えば、自分のホームディレクトリ(/home/usernameなど)に「work」という名前のディレクトリがある場合、以下のように移動します。
cd work
cd ..とすると一つ上の階層へ戻ることができます。
ディレクトリの作成:mkdir
mkdirは「MaKe DIRectory」の略で、新しいディレクトリを作成します。たとえば、「analysis」というディレクトリを作るには以下のようにします。
mkdir analysis
lsを再び実行すると、analysisディレクトリができているのがわかります。
ファイルの削除・ディレクトリの削除:rm/rmdir
rmコマンドは「ReMove」の略で、ファイルやディレクトリを削除します。
注意:rmコマンドは削除したファイルを元に戻すことはできません。慎重に使いましょう。
ファイルを削除する場合:
rm sample.txt
空のディレクトリを削除する場合:
rmdir analysis
ディレクトリが空でない場合はrm -rを使います。
ファイル・ディレクトリ構造の基本概念
LinuxやmacOSは階層構造のファイルシステムを持っています。
一番上が「ルートディレクトリ /」
その下にhome、usr、binなどのディレクトリがあり
さらにその下にユーザーディレクトリやファイルが存在する
cdコマンドで移動する時には、絶対パスと相対パスという2つの指定方法があります。
絶対パス:ルート(/)から始まる完全な住所のようなもの(例:/home/username/work)
相対パス:現在位置を起点とした相対的な指定方法(例:cd work は今いるディレクトリの下にworkがある場合に移動)
最初のうちは、pwdやlsを頻繁に使って「自分がどこにいるか」「そこに何があるか」を確認すると、迷子になりにくくなります。
簡単なコマンド実行練習
以下の手順を試してみて下さい。
ホームディレクトリへ移動
cd ~
~はホームディレクトリを表すショートカットです。
練習用ディレクトリの作成
mkdir neuro_script_tutorial
作成後、lsで確認してみましょう。
ディレクトリへ移動
cd neuro_script_tutorial
テキストファイルを作ってみる最も簡単な方法はechoコマンドとリダイレクトを使うことです。
echo "Hello neuro world!" > message.txt
> は標準出力をmessage.txtというファイルに書き込むリダイレクトです。
lsで確認すると、message.txtができています。
内容を確認するにはcatコマンドを使います:
cat message.txt
画面に"Hello neuro world!"が表示されれば成功です。
今回の成果物
コマンドライン操作に慣れ、基本的なコマンドを使えるようになった
mkdirで操作用ディレクトリ(neuro_script_tutorial)を作成
echoとリダイレクト(>)を使ってテキストファイルを作成
catでファイルの中身を確認
学んだコマンドまとめ
`pwd`:現在のディレクトリを確認する
`ls`:ファイルやディレクトリの一覧表示
`cd`:ディレクトリを移動する
`mkdir`:新しいディレクトリを作成
`rm`:ファイルを削除する
`rmdir`:空のディレクトリを削除
`echo` + `>`:テキストをファイルに書き込む
`cat`:ファイルの内容を表示する
これで、ターミナルでファイルやディレクトリを扱う基本がわかりました。
次回は、この基礎をもとに「bashスクリプト」の初歩に進み、自動化や条件分岐などもう少しプログラム的なことに踏み込んでいきます。
次回予告:
第2回では、bashスクリプト入門として、#!/bin/bash から始まるスクリプトファイルの書き方や、if文やforループを使って簡単な自動処理を行う方法を解説します。お楽しみに!