ぼくのオタク遍歴① 初恋
はじめに
みなさんは二次元の女の子に恋をしたことはありますか? 昨今の軟弱なオタクは主にVtuberを対象に『ガチ恋』などと称して本物の愛を謳っているようですが、僕はそういった言葉の持つ強さに胡坐を掻いて『ガチ恋』を唱えるだけで満足した気になり、自らの感情に誠実に向き合うことを忘れてしまった不逞な輩がたいへん嫌いです。
そんなことはどうでもよくて、僕は二次元の女の子に恋をしたことがある。思えば人生でたった一度きりのそれが、僕のオタクとしてのスタート地点だったような気もする。
というわけで、このnoteでは何回かに分けてぼくのオタク遍歴を備忘録代わりにつらつら書いていけたらと思います。第一回は、ぼくが初めて二次元の女の子に恋をした話から。きっとそこがすべてのはじまりだから。
初恋
それは幼稚園児だった頃まで遡る。
当時からドラえもんやクレヨンしんちゃんやコナンなど、国民的なお茶の間アニメは普通に見ていた一般的な幼稚園児だった僕は、それと全く同じノリで見ていたとあるアニメのキャラを好きになってしまった。
それがこちら。
この美少女は誰もが一度は見たことがある国民的アニメ『たまごっち!』に登場するキャラクターの一人で、名前をラブリっちといいます。
彼女は学生でありながら「たまごっち星(地球から銀河5個分離れた場所にあり、知的生命体たまごっちが暮らす惑星)一の人気アイドル」として活躍する美少女です。前向きで明るく、頑張り屋で、責任感が強い、とても良い子です。
そんな彼女を僕が好きになったのは、これはもうはっきりと覚えているけれど『たまごっち! ~ラブリーたまとも編~ 第48回 第96話「きせき!エブリーラブリー♪バイオリン」』の回でした。
この回は、その前話にて初登場したメロディっちの活躍回とも言えます。メロディっちは若くしてクラシック界で天才バイオリニストとして活躍する少女で、クラシック界のアイドルと称えられるほど。
そんな少女を迎えて始まる、ラブリン(ラブリっちの芸名)のコンサート。一曲目『ミラクル・キッチン!』は問題なく歌い終え、ライブ会場は歓声に沸いていました。
しかし、そこでトラブルが発生します。二曲目のスタートと同時、たまごっちタウンに大規模停電が起こったのです! 曲の進行が止まり、三日月を分厚い雲に隠された舞台は暗闇に包まれ、果てしない不安感が会場とおまけに画面の向こうの僕にまで伝播しました。
「みんな、落ち着いて」と会場のファンに向けて懸命に叫ぶラブリン。しかし無情にも彼女の声は届かず、混乱の波は広がり続けます。
もはやこれまでかと思われた、その時でした。
会場に、一条の音色が奔ります。
停電トラブルにより混乱していた気持ちを吹き飛ばされ、不思議に思った観客達は音のする方へと顔を向けました。
雲の切れ間から差し込む月明りに照らされるのは、バイオリンを響かせるメロディっちの姿。
彼女はその音色によって、安心と勇気を皆に齎したのです。
「ありがとう、メロディっち」と心の中で呟き、再びマイクを握るラブリン。
メロディっちの奏でる旋律にラブリンの美しい歌声が重なり、そのコンサートは結果的にこれ以上ないほどの大成功を収めました。
――そして画面の向こう側の僕が恋に落ちたのも、この時でした。
これまでアイドルとして常にその歌声とパフォーマンスで周囲のたまごっち達を元気づけ、「支える側」としての役割を全うしていたラブリン。そんな彼女が、メロディっちが奏でるバイオリンの音色によって窮地を救われ、「支えられる側」の存在となった。
つまりはメロディっちとの出会いによって「守られる性」としての「女」に目覚めたラブリンの姿が、男と女の最もプリミティブな在り方を素直に信仰していた当時の僕にとってはなにより魅力的に映ったのです。
その日の夜、恋の衝撃と興奮のあまりなかなか寝つけなかった僕は、隣で母と弟が眠る寝室にて一言、「大好きだよ、ラブリン」とうっかり漏らしてしまいました。僕の半生においてその時だけが真実でした。
またその年のクラスマスプレゼントには、恥を忍んで(この年頃の男にとって、女の趣味に傾倒することは死も同然だった)メロディっちのバイオリンを頼みました。
僕はさっそくアニメで見たように、その演奏によって「守る性」である「男」の僕がラブリンを支えようとバイオリンを構えたのですが、よく考えれば僕が現実の存在であるのに対し、ラブリンは現実には存在しない女だったのでこれは叶いません。いざ手に取ってみるとなんだか小さくて頼りないその玩具にはすぐに飽きて、新品同様状態でゴミに出されました。
その時に一緒にゴミ出ししてもらえたらよかったのですが、誠に残念ながらそうはならず、ただ一人残された僕はラブリンに「女」を感じたあの日の記憶を抱いて今日まで生き延びてしまいました。
なにはともあれその体験が、僕に「二次元の存在」を記号的なキャラクターとしてではなく、「一人の生きた人間」として見ることを教えてくれたのです。
それ以前で言うと、広義の意味においては2.5次元とも言える特撮シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』の花織ことは(彼女はメンバー最年少で、最も頼りなかった)がなんとなく好きだったくらいで、二次元の女の子を人間として見る眼差しは持たなかった。
今では彼女を演じた森田涼花のグラビア写真でオナニーを敢行、その直後にアニメの女の子で萌える程度には二/三次元の人間に分別がなく、穢れてしまった僕だけれど、先ほどこのnoteを書くために『たまごっち!』の該当話を視聴したらラブリンがメスの顔を晒していて興奮したので、大丈夫だった。初心を忘れてはいない。
一件落着
というわけで、僕のオタク遍歴その1でした。ここから『たまごっち』の直後に放送していた『アイカツ!』を視聴する中で霧矢あおいと出会ったりするんですが、それはまた次のnoteでお話できたらと思います。
それでは。