下鴨ロンドに吹く風は
written by Hiroshi Kawajiri(下鴨ロンド・シェアメイト)
普段名古屋に住む私は、イベントが無い時でも週末に下鴨ロンドの活動拠点である石割邸に滞在することがある。特に何かをするわけでもない。近所を散歩したり、ブログ書いたり、本を読んだり。
そんな石割邸で最も好きな場所は2階の旧子供部屋なのだが、
実際には多くの時間をこの居間で過ごしている。
理由はいくつかある。
一つは、この家が1932年に出来た当時からある本棚に本が並んでいることだ。
「本棚に本を置くのは当たり前じゃん」と思うかもしれないが、以前は雑貨や生活用品が置かれていた。それが本が置かれることによって家が息を吹き返したように感じて、居心地が格段に良くなった。
やはり"あるべきものはあるべき場所に"ということだろう。
また珈琲飲みながら、窓ガラス越しに外を眺めることも好きだ。
近所の人の靴音や話し声、子供たちが遊ぶ声、車の音、不思議そうにこの家を覗き込む人...。そう、家の中に居ても町の気配を感じることが出来る。
最近は塀やカーテン、あるいは防音性が優れた壁によって、家の内部と外部が遮断された住宅も多い。それは悪いことではないし、私もそんな家に住んでいるが、外の気配をラジオのように聞きながら過ごすと、何となく落ち着くのである。
そしてもう一つ。
この居間に居ると、他のシェアメイトが顔を出すことがある。彼らとは挨拶と短い会話を交わす。それだけのこともあるが、そのまま話し込むこともある。あるいは夜だったら宅飲みしながら深夜までということも。
時には共通の趣味の話が盛り上がって、イベント企画が立ち上がったりもする。
ほとんどのシェアメイトとは下鴨ロンドで会うまでは見ず知らずだったし、顔見知りとなった今でも(用件が無ければ)日常的に連絡を取り合うことはない。付かず離れず、過剰に干渉することもない。かといって無関心というわけでもない。
この居間はそんな人たちを結び付け、ユルい関係をつくる場にもなっている。
ただし問題もある。
何しろ築92年(2024年現在)の古民家だ。断熱性など無いに等しい。
つまり夏は暑く、冬は寒い。
エアコンがあるので夏は幾分かマシだが、隙間風が吹く冬は特に寒い。エアコンの設定を最高温度&最大風量にしても、足元周りはガチ寒い。
そんな風が吹く場所でも、私は寒さに耐えながら"人の気配"を求めて、夜が更けるまでこの居間で過ごしているのである。
⚫︎ 人の気配を感じる集合住宅