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論文紹介 part11 :"The Ultimate Guide to Fine-Tuning LLMs from Basics to Breakthroughs: An Exhaustive Review of Technologies, Research, Best Practices, Applied Research Challenges and Opportunities"を読む
はじめに
今回も同様に以下の論文を読んでいきます。
論文名:The Ultimate Guide to Fine-Tuning LLMs from Basics to Breakthroughs: An Exhaustive Review of Technologies, Research, Best Practices, Applied Research Challenges and Opportunities
著者:Venkatesh Balavadhani Parthasarathy, Ahtsham Zafar, Aafaq Khan, and Arsalan Shahid
今回は10章のIndustrial Fine-Tuning Platforms and Frameworks for LLMsをみていきます。
各社ファインチューニングの敷居を下げるために、さまざまな施策をしています。本章は少々長いので、まずはHuggingFaceの取り組みを前半として、残りを後半としたいと思います。
ファインチューニング技術の進化は、革新的なフレームワークやサービスを提供する主要なテック企業およびプラットフォームによって牽引されてきた
HuggingFace、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、OpenAIといった企業は、ファインチューニングプロセスを簡素化し、より多くの人々が利用できるようにするツールやプラットフォームを開発している
これらの進歩により、最先端のAIモデルを活用する際の参入障壁が下がっただけでなく、ヘルスケアや金融、カスタマーサービス、コンテンツ作成など、さまざまな業界における幅広い応用が可能になった
それぞれのプラットフォームは、自動化された微調整ワークフロー、スケーラブルなクラウドベースのトレーニング環境、あるいはカスタムモデルをデプロイするための利用しやすいAPIインターフェースなど、異なるニーズに対応するユニークな機能を提供している
たとえば、HuggingFaceはTransformersライブラリ¹やAutotrain²、SetFitなどのツールを通じて、最小限のコードとデータでモデルを微調整できるようにし、大きな進歩を遂げている
同社のプラットフォームは研究コミュニティから産業界の実務者まで幅広くサポートする堅牢なインフラを提供し、カスタムAIソリューションの迅速な開発と展開を容易にしている
これと同様に、AWSのSageMaker³やSetFit⁴も、データ準備やトレーニングからモデルのデプロイや最適化に至るまで、機械学習ライフサイクル全体をカバーする幅広いサービスを備えており、エンタープライズ規模のアプリケーションにとって包括的なソリューションとなっている
一方、Microsoft Azureはエンタープライズ向けツールやサービスとファインチューニング機能を統合しており、Azure Machine LearningやAzure OpenAI Serviceといったソリューションを提供している
これは高度なAIを自社の業務に取り入れたい大規模組織のニーズに応えるもの
AzureではMLOpsに重点を置き、他のAzureサービスともシームレスに統合することで、微調整したモデルを効率的に本番環境へデプロイし、維持管理できるようになっている
一方、OpenAIは「ファインチューニング・アズ・ア・サービス(Fine-tuning as a Service)」というコンセプトを切り開いており、企業はGPT-4などの強力なモデルをユーザーフレンドリーなAPI⁵を通じて利用することが可能
これにより、自社内にAIの専門知識やインフラがなくても、カスタムモデルの適応を行うことができる
これらテック企業の取り組みは、微調整の効率性とスケーラビリティを向上させただけでなく、高度なAIツールへのアクセスを民主化することにもつながっている
技術的ハードルを下げ、包括的で使いやすいプラットフォームを提供することで、多くの業界が自社のニーズに合わせた高度なAIモデルを導入できるようになった
表10.1と10.2には、各プロバイダーが提供するLLMファインチューニングツールとフレームワークの比較がまとめられている
1: https://huggingface.co/docs/transformers/en/index/
2: https://huggingface.co/autotrain
3: https://huggingface.co/autotrain
4: https://aws.amazon.com/sagemaker/
5: https://platform.openai.com/docs/guides/fine-tuning/fine-tuning-integrations
The Ultimate Guide to Fine-Tuning LLMs from Basics to Breakthroughs: An Exhaustive Review of Technologies, Research, Best Practices, Applied Research Challenges and Opportunitiesより引用
10.1 Autotrain
Autotrainは、HuggingFaceが提供する画期的なプラットフォームであり、大規模言語モデル(LLM)のファインチューニングを自動化することで、機械学習の専門知識が限られている人でも活用できるようにしている
LLMのファインチューニングは複雑かつリソースを大量に必要とするため、多くの人にとって敷居が高い作業
しかし、Autotrainを使えば、データの準備やモデルの設定、ハイパーパラメータの最適化といった、微調整において最も難易度の高い作業を自動化できる
この仕組みは、少人数チームや個人開発者が、カスタムLLMを迅速かつ効率的にデプロイする必要がある場合にとりわけ有用
10.1.1 Autotrainを用いた微調整のステップ
以下に、Autotrainを用いてLLMを微調整する際のステップを示す。図10.1はそのビジュアルワークフローを表している
データセットのアップロードとモデル選択
ユーザーは最初に、自分のデータセットをAutotrainプラットフォームにアップロード
その後、HuggingFace Model Hubにある多数の事前学習モデルの中から、利用したいモデルを選択
データ準備
Autotrainがアップロードされたデータを自動的に処理
具体的には、LLMが理解できる形式にテキストを変換するためのトークナイゼーションなどが含まれる
モデル設定
プラットフォーム側でファインチューニングに必要なトレーニング環境やパラメータを設定し、モデルの準備を行う
ハイパーパラメータの自動最適化
Autotrainは、学習率やバッチサイズ、シーケンス長といったさまざまなハイパーパラメータの組み合わせを検証し、最適な構成を自動的に選択
ファインチューニング
準備されたデータと最適化されたハイパーパラメータを用いてモデルがファインチューニングされる
デプロイ
ファインチューニングが完了すると、テキスト生成や補完、機械翻訳などの様々なNLPアプリケーションでモデルを使えるようになる
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10.1.2 Autotrainを活用する際のベストプラクティス
データ品質: モデルの性能を向上させるために、高品質で適切にラベル付けされたデータを用意
モデル選択: 特定のタスクに適した事前学習モデルを選ぶことで、ファインチューニングにかかる手間を最小限に抑えられる
ハイパーパラメータ最適化: Autotrainの自動ハイパーパラメータ最適化を活用すれば、手動による調整を行わなくても最適な性能を得やすくなる
10.1.3 Autotrainを利用する上での課題
データプライバシー: 微調整のプロセスにおいて、機密データのプライバシーやセキュリティを確保する必要がある
リソース制約: 特に高性能なハードウェアが限られた環境では、計算資源の管理が課題
モデルの過学習: 多様で代表性のあるトレーニングデータを用意し、正則化手法を適切に適用することで、過学習を防ぐ必要がある
10.1.4 Autotrainを使うべきシチュエーション
高度な技術的専門知識が不足している場合
機械学習やLLMに関する知識が豊富でなくとも、短期間かつ効果的にモデルを微調整する必要がある個人や少人数チームに最適
プロトタイプの迅速な開発やデプロイが必要な場合
PoC(概念実証)やMVP(実用最小限の製品)など、開発スピードが求められるプロジェクトに適している
リソースが限られた環境
高性能な計算リソースが限られる場合や、素早い結果が必要な場合に有用
10.1.5 Tutorials
1. How To Create HuggingFace Custom AI Models Using AutoTrain
2. Finetune models with HuggingFace AutoTrain
10.2 TransformersライブラリとTrainer API
HuggingFaceが提供するTransformersライブラリは、BERTやGPT-3、GPT-4などの大規模言語モデル(LLM)の微調整において、重要な役割を果たすツールである
この包括的なライブラリは、さまざまなLLMタスク向けに最適化された多数の事前学習モデルを用意しており、ユーザが最小限の労力で特定のニーズに合わせてモデルを適応させることを容易にしている
たとえば、感情分析やテキスト分類、顧客サポート対応の生成といったタスクにファインチューニングを行う場合、HuggingFace Model Hubからモデルをシームレスに選択できる点、および高水準のAPIを通じた直感的なカスタマイズが可能な点が、大きな特徴となっている
Transformersライブラリのファインチューニングプロセスの中心にあるのが、Trainer APIである
Trainerクラスを含むこのAPIは、LLMの微調整に伴う複雑な処理を自動化・管理する
データの前処理が完了した後は、Trainerクラスがモデル学習に必要なセットアップ(データハンドリング、最適化、評価など)を一括で処理し、ユーザは学習率やバッチサイズなど最小限のパラメータを設定するだけで済む
しかしながら、Trainer.train()の実行はCPU上ではリソースの消費が大きく、処理速度も遅くなりがちであるため、効率的なトレーニングを行うにはGPUまたはTPUの利用が推奨される
Google Colabのようなプラットフォームでは、これらのリソースを無料で利用できるため、高価なハードウェアを用意できないユーザでも効果的にモデルを微調整できる点が利点である
Trainer APIは、分散学習やMixed Precisionのような高度な機能もサポートしている
分散学習を活用すれば、微調整のプロセスを複数のGPUやノードに分散して実行できるため、学習時間を大幅に短縮できる
一方、Mixed Precision学習は、精度を大幅に低下させることなく、より低精度の演算を用いることでメモリ使用量と計算速度を最適化する手法である
HuggingFaceは充実したドキュメントとコミュニティサポートを提供しており、あらゆるレベルのユーザがLLMを微調整できるよう配慮されている
このような先進的なNLP技術の民主化によって、開発者や研究者は高度に洗練された微調整モデルを多様な用途(高度な言語理解や大規模データ処理など)に活用できるようになっている
10.2.1 TransformersライブラリとTrainer APIの制約
高度なカスタマイズが必要な場合の制限: Trainer APIは多くの学習プロセスを簡素化している一方で、新規性の高いアプローチや高度に専門化されたアプリケーションを求める研究者や上級ユーザにとっては、細部のカスタマイズが不十分である可能性がある
学習コスト: APIは簡素化されているものの、TransformersライブラリとTrainer APIの仕組みを理解し効果的に活用するための学習コストは依然として存在する
特にNLPやLLMに不慣れなユーザにとっては、一定の学習曲線が生じる
統合の制限: 利用の容易さやシームレスな連携はHuggingFaceのエコシステムと深く結びついており、その範囲外のプラットフォームやワークフローでは互換性が十分でない場合がある
まとめると、TransformersライブラリとTrainer APIは、多様な応用範囲においてLLMを微調整するうえで有用な、堅牢かつスケーラブルなソリューションを提供している
一方で、リソース要件やカスタマイズ可能性の制限、さらには複雑さの管理といった点に留意する必要がある
10.3 Optimum: LLMのデプロイ効率を高める技術
OptimumはHuggingFaceが開発したツールであり、さまざまなハードウェアプラットフォームにおける大規模言語モデル(LLM)の効率的なデプロイを実現するものである
LLMが大規模化し複雑さを増すにつれ、コスト効率と性能を両立したデプロイは一段と困難になりつつある
Optimumはこれらの課題に対応するため、量子化(Quantisation)やプルーニング(Pruning)、モデル蒸留(Distillation)などのハードウェア特有の最適化手法を適用し、モデルのサイズ削減と推論速度の向上を図りながら、精度を大きく損なわないよう配慮している
量子化 (Quantisation)
Optimumがサポートする代表的な手法の一つが量子化である
これは、モデルの重みを高精度の浮動小数点数(float32など)から、より低精度の数値形式(int8やfloat16など)に変換することである
精度を下げることでモデルのメモリ消費量と計算負荷を軽減できるため、推論を高速化し、省電力化にも寄与する
特にエッジデバイスやモバイル環境で効果が高い
Optimumはこの量子化プロセスを自動化しているため、低レベルのハードウェア最適化に精通していないユーザであっても活用が可能である
プルーニング (Pruning)
プルーニングは、Optimumが提供するもう一つの重要な最適化手法である
モデルの重みのうち、寄与度が低いものを特定して除去することにより、全体のサイズと複雑さを削減する
これにより、推論時間の短縮とストレージ要件の低減が期待できる
特に計算資源が限られた環境でモデルをデプロイする際に有効である
Optimumのプルーニングアルゴリズムは、不要な重みを的確に排除しつつも、モデル性能を維持するよう設計されている
モデル蒸留 (Model Distillation)
Optimumは量子化やプルーニングに加えて、モデル蒸留(Distillation)にも対応している
これは、より小規模で効率的なモデルに、大規模かつ複雑なモデルの振る舞いを模倣させる手法である
蒸留によって得られたモデルは、元のモデルが持つ知識や機能の多くを維持しながら、サイズと推論速度の両面で大幅に向上している
Optimumは蒸留プロセスを支援するツールを提供しており、ユーザはリアルタイムアプリケーションに適したコンパクトなLLMを容易に作成できる。こうした包括的な最適化ツール群により、HuggingFaceのLLMは強力なクラウドサーバからリソースが限られたエッジデバイスまで、多様な環境で効果的に展開できるようになっている
10.3.1 Optimum利用時のベストプラクティス
ハードウェア要件の把握: エッジデバイスかクラウドサーバかといった目標デプロイ環境を理解し、それに合わせてモデルを最適化する
反復的な最適化: 量子化の精度やプルーニング率など、異なる最適化手法を試行しながら、モデルサイズ、速度、精度のバランスを見極める
検証とテスト: 最適化後のモデルが、想定されるユースケース全般において性能・精度要件を満たしていることを十分に検証する
ドキュメントとサポートの活用: Optimumのツールを効果的に活用するため、HuggingFaceが提供するリソースを参照し、コミュニティサポートを活用する
継続的なモニタリング: 本番環境へ最適化後のモデルを配置した後は、性能低下が生じていないかを監視し、必要に応じて最適化手法を修正する
以上より、OptimumはLLMのデプロイにおける効率性向上を大きく後押しするツールである
量子化やプルーニング、モデル蒸留といった多彩な手法を包括的にサポートし、さまざまなハードウェア環境で高い性能を発揮できる点は、大規模言語モデルの普及と高度化にとって重要な意味を持つといえる
10.3.2 Tutorials
1. An Introduction to Using Transformers and Hugging Face
HuggingFaceの「Autotrain」「TransformersライブラリとTrainer API」「Optimum」の3つは、それぞれ異なる視点から大規模言語モデル(LLM)の活用を支援するツールであるといえます。
まず、Autotrainは機械学習に精通していない方でも簡単にLLMをファインチューニングできる点が特徴的です。データセットのアップロードからモデル選択、ハイパーパラメータの最適化など、従来は負担の大きかった工程を自動化してくれるため、少人数チームやリソースが限られた現場においても素早く結果を得られる利点があります。ただし、高度なカスタマイズが必要な特殊なユースケースでは、機能が限定される可能性がある点には留意が必要です。
一方、TransformersライブラリとTrainer APIは、多種多様なLLM(BERTやGPT-3、GPT-4など)を扱いやすくする包括的なフレームワークとなっています。Trainer APIを使えば、学習率やバッチサイズなど基本的なパラメータの設定だけで、複雑な微調整を実行できる便利さがあります。そのうえ、分散学習やMixed Precision学習といった高度な機能も充実しているため、大規模なプロジェクトにも対応しやすいと思います。ただし、トレーニングにはGPUやTPUなどの強力なハードウェアが推奨されるため、CPUのみの環境では実行に時間を要する点が実務上の制約になるかもしれません。
さらに、OptimumはLLMのデプロイに特化した最適化手法を提供しています。量子化やプルーニング、モデル蒸留といった多彩なテクニックを用いることで、モデルのサイズや推論速度を改善しつつ、精度の低下を最小限に抑えることができる点が魅力的です。特にエッジデバイスやリソースが限られたインフラへの展開を考えている場合には、こうした最適化の恩恵は大きいでしょう。
総じて、HuggingFaceが提供する一連のツール群は、LLMのファインチューニングから実運用における最適化までを包括的にサポートし、専門知識や計算リソースの乏しいユーザにも手が届きやすい環境を整えています。一方で、高度な研究や特殊なユースケースでは、個々の自動化機能が十分に対応できない可能性も否定できません。とはいえ、このように幅広いユーザ層がLLMを活用できる土台が整備されていること自体が、NLPの民主化をさらに後押ししていると思います。
今後は、より洗練された最適化手法や多様なモデルのサポートが進むことで、エッジデバイスから大規模クラウドまで、さまざまな場面でLLMが活躍する可能性が高まるのではないでしょうか。