【エスパルス】2019年J1第19節 vsG大阪(A)【Review】

初めてレビューを書いてみました。個人的に気になった点だけ、ピンポイントに振り返ってみます。

1.遠藤が入ったあと、なぜG大阪に決定機を量産されたのか

56分、遠藤の交代加入とほぼ同時に、それまでG大阪の攻撃の基点だった(清水から見て)右サイドのケアに走り回っていた河井を下げて、金子を投入(57分)。
それを合図に、ここ最近の定番となりつつある4-1-4-1へのシステム変更を実施。金子・竹内がインサイドハーフに入り、北川を右サイドに置く形です。
ここからG大阪にボールを握られ、決定機を量産されることになるのですが…具体的にどこが噛み合わなかったのか検証していきます。

上記の交代直後、早速G大阪に決定機が訪れます。

G大阪のビルドアップ。右CBの高尾が持ち上がり、右WBの福田にパス。同時に矢島がフォローのためハーフスペースに流れます(竹内がついていく)。倉田が中央まで絞ってきているのもポイント。

竹内のポジションが下がり遠藤が空いたため、ボールはダイレクトで遠藤へ。パスを出した福田は、松原の背後を狙う。
この場面で、金子は中央に絞る倉田のパスコースを塞ぐか、遠藤にプレスをかけるか、2択を迫られます。

金子が迷ったことで時間を得た遠藤は、そのままフリーで持ち上がります。結局、金子の方針が定まらずステイしたため、遠藤にプレッシャーをかけるべく竹内がマークに向かいますが、ボールはこの間に高いポジションを取った右CBの高尾へ。
この間、ハーフスペースの矢島がフリーになったので、高尾はシンプルにボールを預けます。次の狙いは、SB-CB間を狙ったスルーパス。

狙い通りのスルーパスが通りますが、松原も必死についていく。
エスパルスのCBは、ウィジョが狙っているGKーCB間のスペースを埋めるために下がらざるを得ませんが、これによりバイタルエリアが綺麗に空き、マイナスのクロスがドフリーの食野にわたりました。
(食野がトラップにもたつき、最終的には戻ってきたヘナトがクリア)

上記の形はシステムの噛み合わせのズレをついたもので、アンカー(遠藤)を自由にする場面は何度も再現されました(下図)。

G大阪の右CBからビルドアップが始まる場合を例にみると、パスの選択肢は実質3つ。エスパルスが最も嫌なのはMFのラインを突破されることなので、竹内は下りてきた矢島へのパスコースを切りながらプレッシャーにいきます。(※篠田体制下の4-1-4-1の守り方を数試合見る限り、背後を消しながら相手のディフェンスラインにプレスに行くのはインサイドハーフで、これは恐らく決まりごとになっている)
西澤は、松原のケアが間に合わない右WBへのパスコースを遮断しますが、これによりアンカー(遠藤)がフリーに。ところが、金子は背後の倉田が気になり前に出られません。この時点でエスパルスの中盤は数的不利に陥っています。
仮に倉田をヘナトに任せた場合、バイタルエリアの食野へのパスコースが生まれます。DFラインが前に出て食野に対応すると、背後を狙うウィジョに通されて万事休す。

これが4-2-3-1であれば、少し状況が変わってきます。

先ほどとの違いは、トップ下の北川がアンカーへのパスコースを遮断している点。これで右CBのパスの選択肢は実質2つになりますが、下りてくるインサイドハーフにヘナトが対応できるため(竹内がスライドして空いたスペースを埋められる)西澤が右WBを切りながらプレッシャーに行くことができるようになります。

もちろんG大阪のビルドアップがすべて右CBから始まるわけではありませんし、エスパルスもセットした守備では4-4の2ラインを形成します。
しかし、基本的に前から積極的にプレスをかけたいときに有効な4-1-4-1に変更しておきながら、アンカー(遠藤)にスペースを自由に使われて決定機を量産される展開になってしまったのは、中盤で数的不利を招いたシステムの構造的なズレが原因です。

竹内も試合後コメントでその点に言及しています。

(4-1-4-1に変えて相手にスペースを使われてきたので)自分が前に行かないようにして4-2-3-1のようにするのかというのは、自分が判断をしなければいけないところだった。そこは迷ったが、自分の責任だと思う。

ただ、確かにピッチ内でシステムの問題点を認識しながら修正できなかった選手にも一定の責任があるのかもしれませんが、客観的にゲームを見ながら防戦一方の展開に手を施せなかったベンチの責任は、それ以上に大きいと思います。
失点シーンはヘナトのミスかもしれませんが、ボールの取りどころが定まれずに押し込まれる時間が長く続けば、選手は疲弊するし事故も起こります。
また、ここ2~3年、3バックの相手を苦手にしているのはシステムの構造を考えると必然です。そのためにヨンソン前監督が今季取り組んだのが、開幕戦で見せた3バックでしたが…(以下省略)

2.少なすぎる攻撃のバリエーション

ここまで散々守備に文句をつけておきながら、個人的に守備より懸念しているのがボール保持時(相手に引かれた場合)の攻撃のバリエーションの乏しさです。
ここ数試合のエスパルスの得点シーン(起点)を振り返ると
①ドウグラス(北川)がスペースを突いて単騎突破
②エウシーニョのカットインから相手の陣形をずらしてスルーパス
③ロングスロー
だいたい上記3つに集約されます(異論は認めます)。

ボール保持をある程度捨てて、いい守備からショートカウンターで点を取る。これはこれで立派な戦術ですし、エスパルスの強みを活かせる形だと思います。
ただ、これだけでは、ボールを握って攻めてくる(上位の)チームには勝てても、引いて守るチームは崩せない。
今節のG大阪は、ボール保持の技術に加えファン・ウィジョという個の力も持っているため、守備時は闇雲に前からプレッシャーをかけず、人数をかけて守る形(5-3-2)を取ってきました。

カットインするエウシーニョの裏を突けるよう、ファン・ウィジョは右サイド裏に残る形。食野は中央でCBを引きつけます。

エスパルスの攻撃パターンは概ね2つ。まず、エウシーニョがなんとか狭い網目をこじ開けようと試みますが、相手もそう簡単に真ん中を開けてはくれません。パスが通ったとしても、さすがにFW2人の関係性だけで崩せるほど甘くはない。
中央が締められているので、次の手は左サイドへの展開ぐらいですが、松原が2人を相手に仕掛けてこじ開けられれば…という神頼みにも近い状況。
右サイドで幅を取って仕掛けられる選手がいれば、少し攻めに工夫ができる余地ができそうですが、そのあたりは夏の補強に期待しましょう。

3.次節に向けて

次の相手は、首位のFC東京。長谷川監督のチームらしく、堅い守備から手数をかけずに攻めてくる、まさに今のエスパルスが苦手とするタイプの相手です。
それでも、最近のホームゲームの観客席にはポジティブな雰囲気が感じられます(とくに鹿児島デー以降)。ユニフォームも変わりますし、G大阪ほどシステムが噛み合わないこともないはずなので、しっかり対策してアグレッシブに戦ってほしいと思います。

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