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「起きた時の感覚で、遅刻と気づいた話」〜日記小説5〜

睡眠の満足感で、遅刻だと気づいた。

満足感がありすぎた。怖くて時計が見れない。

そろそろとスマホに手を伸ばし、電源をつける。

頼む頼む頼む頼む。


「08時02分」と表示された。

残酷にも。

私が今、どのくらい遅刻をしているのか。

7時半には家を出なければならなかったと言えば、伝わるだろうか。

つまり、とても、えげつなくまずい。


やばいのに、やばすぎて、速く身体が動かない。

のっそりと立ち上がり、のそのそと洗面所に歩き、のっそのっそと顔を洗った。顔を上げると、鏡にはムンクの叫びの従兄弟らしい顔が映っていた。


懲りずにのんそりと着替え、のそりんのそりんと家を出た。

のっそりとした私を何と例えよう。

わからないが、馬鹿の所業であることは確実であった。


玄関を出ると、頬を刺すような凍った風が吹いた。マフラーを持ってこようかと思った。ただ、今は遅刻中。急がなければ。しかし、もう少しばかり遅刻しても、間に合わないことは分かりきっているのだから、良いんじゃないかと悪魔が囁く。

駄目よ、形だけでも急がないとと天使が囁く。


どうしようかと玄関前に立ち尽くしていた自分に気づき、何やってんだ走れと叫ぶ。


走る走る。遅刻が許されるくらいの速さで走っている。そのつもりなのに、自転車に乗った小学生に追い越された。

今の私に勝つなんて。彼の将来は競輪選手だろう。


息を切らしながら、駅に着いた。よし、乗り込もう。

ポケットに手をやる。

あれ。

あ。

定期がない。

財布もない。

スマホもない。

馬鹿の所業であることは確実であった。

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