オンラインで知ったベトナム人の友人について
「今、ベトナムのマーケティング調査をしてるんだよね。ベトナム人の行動を調べてる。」
大盛りのうどんをすすり、げっぷをしながら友人は言った。
私の答えはこうだ。
「それならちょうど、ベトナム人の友達が1人いるよ。」
私と1人のベトナム人との出会いは、ささやかな繋がりから始まった。
2018年9月、私は浪人時代の友人と5人でマレーシアへ行った。
旅の目的は観光だ。
友人のうち1人が、購入してからまだ3ヶ月しか経ってないiPhoneを、タクシーの席の間に挟み込んだまま下車するという神業を披露したが、(そのiPhoneは返って来なかった)その旅行は楽しいものだった。記念撮影のときの彼は渾身の笑顔だった。
そんな彼は私たちの中では英語が話せる方だった。
彼と2人でクアラルンプールのタクシーに乗った時は、彼は見事に運転手に目的地を伝えた。運転手との会話も頑張ってくれた。おかげで観光地のツインタワーに行くことができた。ほかの3人はホテルで寝ていた。
この一連の流れで私が話せた英語は、いかがわしいお店の誘いにノーと言うくらい。
このままではまずい。
どうやったら英語を話せるようになるのか。
iPhoneを紛失したばかりの彼に聞いてみた。
どうやったら英語ができるようになる?
彼の答えはシンプルだった。
「外国人の友達を作ればいいよ。」
ついでに彼が語学学習用のアプリを数種類教えてくれた。tinderなどの出会い系アプリもその中にあったが(彼はマレーシアでもマッチングしていた)、私はその中でLangmateというアプリを始めることにした。
Langmateは簡潔にいうと、言語学習用のマッチングアプリだ。
ただ、tinderみたいに実際に出会うことはまずない。
なぜかというと、ユーザーが日本に住んでいるとき、マッチングする相手は他国にいるか、国内にいてもとても遠いところにいるからだ。もちろん、相手との距離が把握できることもない。
Langmateは外国人とチャットをするためだけのアプリなのだ。
さっそく私はLangmate をスマホにダウンロードして開いた。
アカウントを作り、プロフィールを書く。
言語学習のためだと割り切って、無差別にハートを送る。
ベトナム人の女の子とマッチングした。
それからベトナム人とのチャットが始まった。
ベトナム人の名前はポンちゃんという。始めの頃のポンちゃんとのやり取りは、Helloを送り合ってからお互いのことを訪ねるだけ。
それから次第にチャットはエスカレートしていく。
ポンちゃんは日本が好き。
ポンちゃんはtwiceが好き。
親日でさらにtwiceが好きだなんて。
私もtwiceが好きなのでさらにチャットは盛り上がった。
「ラインかツイッターでやり取りしませんか?」
ポンちゃんが聞いてきた。これはもうラインで繋がるしかない。ラインならもっと気軽にメッセージが送れるし、電話だってできるかもしれない。
スピーキングの練習がしたい私はラインのIDを快く教えた。
それからラインでメッセージを送り合う日々が始まった。
ラインは写真を送れるのでトークの幅が広がる。
でも私は電話がしたい。
英語が話せるようになりたいのだ。
「電話しませんか?」
なんと、また彼女が誘ってくれたではないか。
全て彼女から誘ってくれている。
男としてこれは恥ずべきことだが仕方ない。
私はこのチャンスに乗った。
ミッションは夜11時、ベトナムは夜の9時である。
私は10分前からスマートフォンに張り付いた。
11時になった。
電話をかける。
コール音がなる。
今から時差を超えた会話が始まろうとしている。
コール音が数回流れたあとに彼女がでた。
ポンちゃんだ。
まずは挨拶。
... 。
返事はない。
あれ。今度は自己紹介をしてみる。
... 。
おかしいな。what’s up?
...アイムシャーイ。
ん?ハーイ。
...アイムシャーイ。
まずいことになった。彼女はかなりのシャイガールだったのだ。私が話したことに全てアイムシャーイと返してくる。これでは英語の会話ができない。
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。電話まで全て彼女が誘ってくれたのだから、ここで私がリードするときが来たようだ。
懸命にベトナムについて質問した。天気や治安、交通状態など、できる限りのことはした。
しかし、返事は全てアイムシャーイ。
いったいどうしたらいいんだ。
もはやアイムシャーイだけで会話をしようかと思ったその時、ある音楽が電話越しに流れ始めた。
♪〜♫
これはもしかして...
そう、twiceだ。
私はこのtwiceの曲に合わせて歌った。下手でもいいからひたすら歌った。これはなかなかカオスな状況だ。しかし、気がつくとアイムシャーイだったポンちゃんが笑っている。私の歌に笑ってくれている。
嬉しかった。それからtwiceの曲のおかげで我々はtwiceについて語り合い、ポンちゃんがモモ推しだということも知ることができた。
それから半年以上、メッセージのやり取りが続いている。
彼女の日本語はメキメキ上達し、今では日本語の文章しか送って来ない。私の語学学習にはならないが、もはやそれでも良くなった。彼女との交流が楽しいから。
本当にtwiceには感謝しています。
参考と画像
App名: 親日外国人とチャットで英語学習-Langmate