30MMオリジナルストーリー予告編1
かつて、地球軌道上に突如として出現した空間転移門(ゲート)。
あらゆる物理法則を凌駕し銀河のとある場所へと瞬時に移動できるそれは、人類の科学技術、特に旧来からの悲願であった宇宙開発の分野をかつてないレベルで飛躍させた。
スカイフォール。
文字通り、宇宙が我々の側に降りてきたとも思えるほどに地球と宇宙との距離が、物理的にも心理的にも近付いたこの事件を以て、人類の歴史はゲート出現以前・以後とで隔てて語られるようになった。
スカイフォールは天からの福音だと言う者、いやパンドラの箱が開いたのだと言う者様々であったが、実際にこれは地球全土を巻き込む、新たな争いの火種ももたらした。
ゲートの転移先にあったのは、太陽系の中でも最も地球に似た環境を持ち、かねてより人類の新天地として期待されていた星、火星。
驚くべきことに、かの星の大気成分は地球のそれと殆ど差がないほどに変質していた。上空は宇宙線から生命を守るための厚いオゾン層に覆われ、地表の大気圧は理想とされていた1バールに迫り、低い場所では-100℃以下に至っていた気温も、昼夜の寒暖差含め地球における砂漠地帯と同程度にまで変動したのだ。
更には地下深くへ埋蔵されていた大量の氷塊がいつの間にか消失し、それと入れ替わるように各所に湖と呼べる規模の水源地が出現した事も確認された。
何故こんな変化が起きたのか。
それは知る由もないが、ゲートの出現と無関係ではあるまい。
かの門は火星の地表に通じており、ゲートから常に放出されている謎のエネルギーを、地球より強く受け続けているのだ。
つもる疑問はさておき、これで火星という巨大な惑星まるまる一つを、地球の植民地とする条件が整った。いや、整ってしまった。
当然、地球の列強国はこぞって我先にとテラフォーミング化政策に乗り出す。
しかしそうなれば、同時に利権争いも生まれる。
火星という未開の惑星において、どの国も自国が開拓に貢献した分だけの見返りを主張した。
もはや人類の業ともいうべき習性だが、それぞれの主張は平行線を辿り、ついには地球全土に紛争が巻き起こった。
新天地を手に入れる為に、足元の大地を戦火に染める。なんとも本末転倒な話であるが、恐るべきことにこの紛争は数十年の後まで続いた。
戦局を泥沼化させたのは、これも皮肉なことにゲートのもたらしたテクノロジーであった。
拡張型武装及びモジュール組立結合システム、通称エグザマクス(EXAMACS)。
全高およそ16メートル、人体に酷似した四肢を備えた二足歩行の巨人は、ゲートのエネルギー組成を模倣した高エネルギーを効率的に運用し、その規格外の出力と戦場を選ばぬ無限の拡張性で、瞬く間に旧来の兵器を蹂躙していった。
最初にエグザマクスを保有した某大国は長きに渡り優性を誇ったが、ひとたび設計が流出してしまうと今度は優れた生産性が災いし、各国ともにエグザマクスを多数保有。
戦力の拮抗を生み出した。
いつしかエグザマクスは第3世代であるアルトへと進化し、人はそもそもの争いの発端すらも忘れ、日々戦いに明け暮れていた。
果たしてゲートは、神からのギフトであったのか。
いや、あるいは我々人類は、試されていたのではないか。
大いなる力を授かった時に、人はその恩寵をどう使うのか。互いに手を取り収穫を喜び分かち合うのか、それとも我先にと奪い合うのか。
結果は後者である。
その結果に、おそらく神は失望したのだろう。
2XXX年末、審判は下された──