魔王転生 気づいたら魔王になってて、しかもレベル1ってどういうこと?? vol4 (完)

素のステータスの上昇はもとより、魔力創生のレベルが上がったからなのか「こういうのがほしい」と頭に浮かべるだけで魔法として行使できそうだな。
とはいえ浮かんだすべてが行使できるわけじゃなさそうだけど…
"この魔法を行使するにはレベルが足りません"って表示されてるし。


諸々の確認をする魔王


さてはて
いろいろあったけど、これでひと段落かな?
って、そういえば勇者が強襲するかもしれないんだったっけ?
何か良さげな魔法は……
あっ!こんなん良いんでない??
早速使ってみるとしよう!


『広範囲探知索敵魔法+物理魔法結界』


魔王を中心とした円形の結界が拡がる。


※有効範囲半径100メートル
※魔力の大小問わずすべての生き物を対象に場所を特定できる
※中心から離れれば離れるほど正確性は低下する
※魔力を有しない生物への探知索敵は不可
(これらはスキルレベルが上がることによって精度が変わる)


まぁこんなとこか…
って、ん?なんか妙な動きの…あぁなるほど、なるほどねー。まぁ今は良いか!
さてはて


「ヒューイよ」

「はっ!」

「以前勇者共は理由なく襲撃してきたと言ったな?」

「左様でございます」

「では今後どのタイミングでまた襲われるかわからん。なので今のうちに戦力を整えようと思う。依代になりそうなモノを見繕ってくれぬか?」

「はっ、お安い御用で!」


ーーーーーーーーーーーー


〜数分後〜


魔王の前に大量の通貨や魔具が山積みになっていた。
では早速………


〜30分後〜


ふぅー。
基礎ステータスが上昇したおかげでまだまだ余力はありつつも、さすがにこの数は少し疲れた!


ヒューイの用意した水を口にする
氷魔法で冷やされた水は疲れた身体に沁み渡る


うめぇーー!
良い仕事した後の一杯は格別だねぇ、水だけど


「お口に合いましたでしょうか?」

「うむ。美味である」

「良かったであります!」


ヒューイは頬を少し赤らめながら嬉しそうにしている
うん、カワイイ。


「ところで魔王様」

「む?どうした?」

「今回の召喚は小型の魔物が多く見受けられますが、何か意図がありますでしょうか?」

「ふむ。それはおいおいわかるであろう」


そう。
シロツメのようなカワイイ小動物型を中心に小型の魔物を召喚しまくった。
大まかにイメージしたらそれに近しい形の魔物が精神世界からやってきてくれるからとても助かった。
事細かにイメージしないと召喚できなかったら1体も召喚できてないよ、コレ。
おかげで一気に100体近くの魔物を召喚できた。1体1体に名付けするのはちょっと手間暇かかるから、それはまた別のタイミングでやろうと思う。
さてはて


「そう機を伺うでない!堂々と入って参れ!」


少し強めに声を張ったら城が少し震えたよ。
あぁー、ヒューイもシロツメたちも驚いちゃってるよ…まったく


「ま、ま、魔王様…それはどういう……」


バタンッ!!


ヒューイが言い切る前に正面扉が勢いよく開いた
城に入ってくる光が逆光になっているので見分けにくいが、そこには帯剣した人物が1人立っていた。
ヒューイは即座に臨戦態勢を取る
シロツメたちも警戒する


「皆のモノ、良い、下がっておれ」

「しかし…」

「我の言うことが聞けぬと?」

「いえ!そんなことは!」


そう言うとヒューイは臨戦態勢を保ったまま魔王の横に立ち構えている
"これが妥協点かな"
魔王はそう呟き終わると入り口を背にした人物に問いかける


「貴様は何ヤツか?」


まぁだいたい察しはついているけどね


「俺は勇者だ!」


おぉー、随分潔いな!てっきり何か誤魔化すかと思った!


「ここにわざわざ来たということは、我に用があるのか?」

「そうだ!魔王め!」


いやぁ、随分好戦的だな
こういうのは大概面倒臭いパターンなんだよなぁ


「その魔王である我に何の用があるというのだ?我にはそなたに用はないぞ」

「悪者を成敗しに来た、それだけだ!」

「悪者?それは我のことを言っておるのか?」

「そうだ!」

「なぜ悪者と決めつける?」

「魔王は悪。それはヒト族の共通する認識だ!」

「ふむ。しかし我はつい先刻復活したばかりでまだ悪いことは何一つしとらんぞ?」

「これからするに決まってるだろ!すでにこれだけ多くの魔物を引き連れてるんだからな!」

「なるほど…それは一理あるかもしれぬ。しかしな勇者よ、此奴らを従えただけでお主らにちょっかいを出すとはさすがに早計であろう」

「なんだと??」

「よく見てみろ。此奴らにヒト族を襲うだけの能力があると思うか?」


辺りを見回す勇者


「・・・くっ、確かに。だがそれはフェイクの可能性がある!そもそも長きに渡り魔族とヒト族は戦争してきたんだ!領地拡大と名打ってな!」

「我にその意志がないと言っても…」

「信用できるわけないだろっ!」


まぁ随分と強い口調で返してくるなぁ勇者(コイツ)
あとどう考えても洗脳教育だよなぁコレ
でも思ったより会話ができるタイプのようだからこのまま続けてみるか
"ヒューイさんヒューイさん、その殺気、今はしまっておこうか?"


「お主がどう思おうと勝手だか、我は領地拡大など興味がない。ましてや戦争など無益なモノをしかけるなどもってのほかだ。」

「戦争が無益…?お前、それは本気で言ってるのか?」

「当然であろう。これだけ愛らしい者たちに血を流させるなど、誰が望むものかっ!」

「うっ…」

「そもそも我に領地拡大の意思やそういった記憶がまったくない。ヒューイよ、以前の我にそのような意思はあったか?」

「いえ、全く御座いませんでした」

「ふむ、となるとだ。"そちら側からこっちに仕掛けてきたのを迎え撃った"という見立てが正しいのであろう」

「そんなわけ…」

「そんなわけがないと、どうして言い切れる?先程も言ったが我はこの愛らしい者たちを争わせることなどせん。契約しても良いぞ?」

「なっ…」

「そもそも我は空も海のような自然も、種族関係なくこの世界に生息する生き物などすべてが愛おしい。それなのにわざわざ傷つけるような真似をして何になる?」


以前の魔王の記憶が鮮明に頭に映し出される
映し出されたそのすべては素晴らしいモノであった
魔王の記憶のせい、というわけではない
そんなこと関係なく本当に素晴らしいと感じ取ったからこその俺の嘘偽りのない本心を口にしている
その想いのこもった言葉だからであろう、勇者も段々と受け入れはじめているようだ


「お、俺は一体…」


勇者は全身の力が抜けるように項垂れた


「なぁ、勇者よ。共にこの世界を守っていかぬか?」


魔王のまさかの発言に言葉を失う勇者


「悪い話ではなかろう?我は攻められぬ限りこちらからヒト族にちょっかいを出すことはせぬ。この世界を守るために戦うことはあったとしても、だ。お主はそれを我のすぐ側で見ておれば良い。そしてもし我がこれまでお主に口にしたことに反したなら、お主はヒト族を従え我を討伐すれば良い。この提案に合意した際にはお主を来賓として最上級のもてなしをしようぞ」


開いた口が塞がらない勇者


「しかしそれには条件がある。それは・・・」

ーーーーーーーーーーーー


勇者が魔王ギガアリアと対峙してから1ヶ月後


世界は平和を迎えている
1ヶ月前魔王は勇者に条件を出した
それは魔族側の間者になれ、というものだった
これまで常識とされてきたことが覆されたあの日、勇者の頭の中は混乱していた
そこで魔王はヒト族側の同行を探るように提案したのだ
勇者は魔王を討伐したと虚偽の報告を祖国の王に伝えた
それに気を良くした王はこれまでの戦争は実はヒト族から仕掛けたモノだと口を滑らしたのだ
そう、これまで『魔族は悪』と聞かされ行われてきたことはすべてヒト族の情報操作によりすり替えられていたのだ。


勇者はそれをすぐ様魔王に報告
当初はヒューイに王の暗殺を命じようとしたが「これはヒト族の問題。俺がやる」と勇者自ら王とその側近たちをその日のうちに暗殺した…

「ヒューイよ」

「はっ!」

「平和は良いな」

「はい!」

「しかしいつまでこの平和が続くかはわからん。なぁヒューイよ、その命ある限り我の志す平和のために尽力してくれぬか?」

「はっ、仰せのままに」

「我儘を聞いてくれてありがとうな!これからもよろしく頼むよ!」


このヒューイの唖然した顔は一生忘れられないだろうな。

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